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6話

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 「梓も懲りないよな、ホント」

 話しかけると、梓はこちらをジトーっと睨んできた。すでに教室で被害者不在の状態で裁判は俺の中で自己完結している。有罪は梓の方だ。

 「あと少し、あと十秒あったら校門をくぐれたのに……」

 「どこがあと少しだ。全然間に合ってないじゃないか!」

 やっぱり俺は悪くなかった!
 
 「龍には目の前で校門を閉められた私の気持ちが分かる? まるでずっと楽しみにしていたゲームの発売日に朝早く起きて並んだのに、目の前で売り切れた時のような。ポッカリと胸に穴が空いたような気持ちが押し寄せてくるんだよ!」

 「遅刻ってそんな重いものだっけ!?」
 
 両手を握りしめて懸命に主張してくる梓に俺は曖昧な返事を返しながら思い直す。そもそも梓が欲しいもののために早起きしたことなんてないし。なんなら発売日前日に急に駄々こねられて、お金渡されて買いに行かされるの俺だし。一個も事実と合ってない。こいつの頭の中どうなってんだ? ……ああ、そうかバカだった。

 「まったく、あの窓さえ開いてたらな」

 「あの窓は年がら年中冬眠してるんじゃないかって噂されてる梓を起こすための窓であって、学校への入り口じゃないんだよ」

 「そうやってまた正論ばっかり……ん? 私そんな噂がたってるの? 失礼な」

 どの口が言ってんだ。

 「聞いたことなかったのか? あんまりにも冬眠期間が長いから、もうすぐ永眠だってもっぱらの噂だよ」

 「冬眠したまま目覚めないってこと? 勘弁してよ。私まだやりたいこといっぱいあるんだから」

 そう言うと、夏に溶けたアイスのようにベターっと机に顔を埋める。だがすぐに起き上がると、再び記入を始めた。一心不乱に書き続けること三分。

 「終わった、終~わった、終わったー!」
 
 書き終えた梓は机から立ち上がると、オリジナルの遅刻届記入終了の舞を踊っている。

 一応確認しておくか。

 俺は窓の外から遅刻届へと視線を滑らせる。へぇ、遅刻届ってこんなこと書くのかと経験したことのない内容に一人心の中で感心の声をあげていた俺の視線が一点で止まる。

 遅刻理由『龍が部屋に忍び込んだ後、私に悪戯をしたからです』

 「言い方あぁぁぁぁ! 俺は変態か! これを先生に出されたら俺の頭がおかしいと思われるわ」
おそらく梓は自分を起こした俺が窓の鍵を閉める悪戯をしたと書きたいのだろうがこれじゃ誤解が生じる。すぐさま踊る梓の服の袖を引っ張って席に着かせると訂正を命じる。

 「じゃあ、なんて書けばいいの?」
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