4 / 16
4話
しおりを挟む
よって、
「せいやっ!」
「キャァ!」
布団を一気に剥ぎ取ってやろうとする。が、くるまっていた布団を取られた梓は上体を起こすと、無意識のうちに追いかけ抱きつく。そこで、ようやく俺と目が合った。その薄いブルーの瞳は映っている景色がまだ夢の続きを見ているかのようにぼんやりとしていた。
「龍? なんで私の部屋に……。もしかして夜這い?」
「あぁ、まだ寝ぼけてるみたいだな。とっと顔を洗ってこい。ついでに言うと、もう朝だ」
「アサ……あさ……朝ぁ!?」
「なんだ、俺が外国語でも喋ってると思ったのか? ずっと日本語だぞ」
腕を組む俺の前をはじき出されたパチンコ玉よろしく、ベッドから飛び出した小さな体が駆けていく。銀髪のショートにブルーの瞳。日本人離れしたその美貌は幼馴染というひいき目を差し引いても美少女だと認めざるをえない。
さすがクォーターといったところか。
梓の目がちゃんと覚めたのを確認した俺は伸びをすると、こちらに来るために通ってきた窓の方へ戻り始める。この関係はあとどれくらい続くのだろう。
人とヴァンパイア。その両方の血を受け継いだ彼女との関係は。そんなことを考えながら梓の家の窓から身をおどらせ学校の廊下に着くと、窓の鍵を閉めたのだった。
「はいはい、席に着きたまえ。今日から一年間、二年生になった君たちの担任を務める白百合沙希だ。よろしく頼む。私の自己紹介は……去年も一緒だった奴が多いし省略でいいだろ。何より面倒くさい」
いや、最後の一言は心の中にとどめとけよ。相変わらず自分を飾ることをしない先生の姿に苦笑しながら俺は視線を窓の外に滑らす。去年と変わらない、桜の花びらによってピンク色に染められたグラウンド。きっと今年も淡々と毎日を過ごして、気付けばあっという間に一年が終わるのだろう。そんなことを考えながらぼーっと話を聞いていると、不意に先生の話が止まり、廊下へその姿が消える。
何してるんだ?
同じことを思った者は多いらしく、廊下側に座っているクラスメイトは首だけ出して廊下側を覗き込んでいる。やがて戻って来た先生は教壇の上から何かを探すようにクラスを見回し始めた。その目が俺とピタリと合う。
「小島、今から生徒指導室に行ってくれ」
「え? 俺何かしましたっけ?」
「やらかしたのは君じゃない。隣だ」
今まで窓の外ばかり見ていたせいで気付かなかったが隣の席が空いている。
一体誰のだ?
「あのー、まだ二年生になったばかりで、この席に誰が座っているとか知らないんですけど」
「何を言っているんだ。そこは熊谷の席だよ。起こしてこなかったのか?」
「梓だって!? いや、俺ちゃんと起こしてきましたよ」
「せいやっ!」
「キャァ!」
布団を一気に剥ぎ取ってやろうとする。が、くるまっていた布団を取られた梓は上体を起こすと、無意識のうちに追いかけ抱きつく。そこで、ようやく俺と目が合った。その薄いブルーの瞳は映っている景色がまだ夢の続きを見ているかのようにぼんやりとしていた。
「龍? なんで私の部屋に……。もしかして夜這い?」
「あぁ、まだ寝ぼけてるみたいだな。とっと顔を洗ってこい。ついでに言うと、もう朝だ」
「アサ……あさ……朝ぁ!?」
「なんだ、俺が外国語でも喋ってると思ったのか? ずっと日本語だぞ」
腕を組む俺の前をはじき出されたパチンコ玉よろしく、ベッドから飛び出した小さな体が駆けていく。銀髪のショートにブルーの瞳。日本人離れしたその美貌は幼馴染というひいき目を差し引いても美少女だと認めざるをえない。
さすがクォーターといったところか。
梓の目がちゃんと覚めたのを確認した俺は伸びをすると、こちらに来るために通ってきた窓の方へ戻り始める。この関係はあとどれくらい続くのだろう。
人とヴァンパイア。その両方の血を受け継いだ彼女との関係は。そんなことを考えながら梓の家の窓から身をおどらせ学校の廊下に着くと、窓の鍵を閉めたのだった。
「はいはい、席に着きたまえ。今日から一年間、二年生になった君たちの担任を務める白百合沙希だ。よろしく頼む。私の自己紹介は……去年も一緒だった奴が多いし省略でいいだろ。何より面倒くさい」
いや、最後の一言は心の中にとどめとけよ。相変わらず自分を飾ることをしない先生の姿に苦笑しながら俺は視線を窓の外に滑らす。去年と変わらない、桜の花びらによってピンク色に染められたグラウンド。きっと今年も淡々と毎日を過ごして、気付けばあっという間に一年が終わるのだろう。そんなことを考えながらぼーっと話を聞いていると、不意に先生の話が止まり、廊下へその姿が消える。
何してるんだ?
同じことを思った者は多いらしく、廊下側に座っているクラスメイトは首だけ出して廊下側を覗き込んでいる。やがて戻って来た先生は教壇の上から何かを探すようにクラスを見回し始めた。その目が俺とピタリと合う。
「小島、今から生徒指導室に行ってくれ」
「え? 俺何かしましたっけ?」
「やらかしたのは君じゃない。隣だ」
今まで窓の外ばかり見ていたせいで気付かなかったが隣の席が空いている。
一体誰のだ?
「あのー、まだ二年生になったばかりで、この席に誰が座っているとか知らないんですけど」
「何を言っているんだ。そこは熊谷の席だよ。起こしてこなかったのか?」
「梓だって!? いや、俺ちゃんと起こしてきましたよ」
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
【Vtuberさん向け】1人用フリー台本置き場《ネタ系/5分以内》
小熊井つん
大衆娯楽
Vtuberさん向けフリー台本置き場です
◆使用報告等不要ですのでどなたでもご自由にどうぞ
◆コメントで利用報告していただけた場合は聞きに行きます!
◆クレジット表記は任意です
※クレジット表記しない場合はフリー台本であることを明記してください
【ご利用にあたっての注意事項】
⭕️OK
・収益化済みのチャンネルまたは配信での使用
※ファンボックスや有料会員限定配信等『金銭の支払いをしないと視聴できないコンテンツ』での使用は不可
✖️禁止事項
・二次配布
・自作発言
・大幅なセリフ改変
・こちらの台本を使用したボイスデータの販売
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/chara_novel.png?id=8b2153dfd89d29eccb9a)
ガダンの寛ぎお食事処
蒼緋 玲
キャラ文芸
**********************************************
とある屋敷の料理人ガダンは、
元魔術師団の魔術師で現在は
使用人として働いている。
日々の生活の中で欠かせない
三大欲求の一つ『食欲』
時には住人の心に寄り添った食事
時には酒と共に彩りある肴を提供
時には美味しさを求めて自ら買い付けへ
時には住人同士のメニュー論争まで
国有数の料理人として名を馳せても過言では
ないくらい(住人談)、元魔術師の料理人が
織り成す美味なる心の籠もったお届けもの。
その先にある安らぎと癒しのひとときを
ご提供致します。
今日も今日とて
食堂と厨房の間にあるカウンターで
肘をつき住人の食事風景を楽しみながら眺める
ガダンとその住人のちょっとした日常のお話。
**********************************************
【一日5秒を私にください】
からの、ガダンのご飯物語です。
単独で読めますが原作を読んでいただけると、
登場キャラの人となりもわかって
味に深みが出るかもしれません(宣伝)
外部サイトにも投稿しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/youth.png?id=ad9871afe441980cc37c)
ポムポムスライム☆キュルキュルハートピースは転生しないよ♡
あたみん
キャラ文芸
自分でも良くわかんないけど、私には周りのものすべてにハート型のスライムが引っ付いてんのが見えんの。ドンキのグミみたいなものかな。まあ、迷惑な話ではあるんだけど物心ついてからだから慣れていることではある。そのスライムはモノの本質を表すらしくて、見たくないものまで見せられちゃうから人間関係不信街道まっしぐらでクラスでも浮きまくりの陰キャ認定されてんの。そんなだから俗に言うめんどいイジメも受けてんだけどそれすらもあんま心は動かされない現実にタメ息しか出ない。そんな私でも迫りくる出来事に変な能力を駆使して対峙するようになるわけで、ここに闇落ちしないで戦うことを誓いま~す♡
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる