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第3章 転生者/邂逅
第128話
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「お前らそういう関係だったけ? そうだな……なんかわからんがムカつくからカイの頭をかち割るだろうな」
「なんでだよ!」
「まぁまぁ、雑談の続きは捜査が終わった後でだ。ひとまず行くぞ。ミリウスに怒られる」
手招きするギノの後ろにカイは白雪を伴って付いていく。門扉の方へ向かう道を歩きながら、カイは改めて外壁を越えて見える屋敷を視界に入れた。屋敷は侯爵が余生を過ごすためだけに建てたばかりということもあり、掃除の行き届いた白い外観は完成時と変わらない純白を保っており、乗せられた青い屋根は空に溶け込むかのよう。
豪華な造りながら、典雅さを醸し出すことも忘れないこの屋敷の姿からはここで多くの者が惨殺されたなど、事前に知らされていなければ信じることは難しかっただろう。
「相変わらず、これまでの霧による事件と一緒に見えるけどね、俺には。庭に敷かれた芝生も青くて綺麗なまんまだ。あの上で昼寝をしたら、さぞ気持ちいだろうなー」
標的を抹殺する以外、痕跡をほとんど残さないこの手口。報告書にはこれまでの事件との違いが記されていたらしいが、緊急会議をサボったカイはその詳細を知らない。能天気な彼を咎めることをしない代わりに、前を歩くギノは壁の一部を指差した。
「確かに霧につながる証拠は見つかっていないが、これを見たら軽口を叩く気力が削がれるぞ」
そう言ってギノが指差したのは死者の残滓だった。まるで影が壁に写し取られたかのように。助けを求めるように腕を天へと伸ばした人の形をした煤。哀れな最期となった者の姿はカイの口から軽口を奪い去った。
「霧のメンバー全員か、それとも一部のものだけなのか。どちらかは分からないけど、人間を煤にする魔術か霊子兵装を持っているやつがいるみたいだね。戦いになったら面倒だ」
面倒だと言いながらもカイの口調は淡々として変わらず。焦る様子もない。ただ死者の無念を晴らすための手がかりがないか観察しようとする彼の肩をギノが叩く。
「ようやく頭が回り始めたみたいだな」
「人の死に人一倍敏感なだけだよ。なにせ自分が一回経験してるし、元々生と死の狭間で戦っていたからね」
「そうだったな。ひとまず一つ一つ検証するのは後にしよう。現場全体を見ないと概要を把握できないからな。木を見て森を見ずじゃ話にならんだろ。その辺を含めて案内してもらうために彼女を呼んだのだし」
「彼女?」
「ああ。俺たちは事件の大まかな内容は聞いているが、現場を見た生の声には耳を傾けるべきだと思ってな。さっき声をかけておいた」
「なんでだよ!」
「まぁまぁ、雑談の続きは捜査が終わった後でだ。ひとまず行くぞ。ミリウスに怒られる」
手招きするギノの後ろにカイは白雪を伴って付いていく。門扉の方へ向かう道を歩きながら、カイは改めて外壁を越えて見える屋敷を視界に入れた。屋敷は侯爵が余生を過ごすためだけに建てたばかりということもあり、掃除の行き届いた白い外観は完成時と変わらない純白を保っており、乗せられた青い屋根は空に溶け込むかのよう。
豪華な造りながら、典雅さを醸し出すことも忘れないこの屋敷の姿からはここで多くの者が惨殺されたなど、事前に知らされていなければ信じることは難しかっただろう。
「相変わらず、これまでの霧による事件と一緒に見えるけどね、俺には。庭に敷かれた芝生も青くて綺麗なまんまだ。あの上で昼寝をしたら、さぞ気持ちいだろうなー」
標的を抹殺する以外、痕跡をほとんど残さないこの手口。報告書にはこれまでの事件との違いが記されていたらしいが、緊急会議をサボったカイはその詳細を知らない。能天気な彼を咎めることをしない代わりに、前を歩くギノは壁の一部を指差した。
「確かに霧につながる証拠は見つかっていないが、これを見たら軽口を叩く気力が削がれるぞ」
そう言ってギノが指差したのは死者の残滓だった。まるで影が壁に写し取られたかのように。助けを求めるように腕を天へと伸ばした人の形をした煤。哀れな最期となった者の姿はカイの口から軽口を奪い去った。
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面倒だと言いながらもカイの口調は淡々として変わらず。焦る様子もない。ただ死者の無念を晴らすための手がかりがないか観察しようとする彼の肩をギノが叩く。
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「そうだったな。ひとまず一つ一つ検証するのは後にしよう。現場全体を見ないと概要を把握できないからな。木を見て森を見ずじゃ話にならんだろ。その辺を含めて案内してもらうために彼女を呼んだのだし」
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