赤い夕日と君の笑顔

双華 シンジ

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赤い夕日と君の笑顔

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石を蹴った、僕の爪先ぐらいの大きさの石だ。帰り道、夕日に照される街。高校生になってひさしぶりにこういう帰り方をした。なかなか良いものだ、その夕日に物理的な暖かさはないが、心は暖かくなっていった。はあ、こんなに良い景色を見ているのに僕の心は夕日から受け取った熱を吐き出し、冷め始めている。何時から僕はこんなに冷たい人間になったのだろう。
 「ねえ。」
そう呼び掛けられた気がして、僕は振り返る。声の主はクラスメートの白坂さんだった。
「白坂さん、僕に何の用ですか。」
「一緒に帰りたくって。」
「僕と、ですか?」
「そう、君と。」
「分かりました、僕で良ければ一緒にどうぞ。」
白坂さんの不思議な申し出に僕は首をかしげたが、断る理由もないので了承した。
「こんな風に誰かと一緒に帰るのなんて久し振り。」
白坂さんが落ち着いた声でそう言った。彼女の声は綺麗だ、まるであの夕日みたいに暖かい。その声を聞いた僕は頭が働かなくなり、
そうなんですねとぎこちなく返事をした。
 平静を装っているが、僕は白坂さんが好きだ。綺麗で暖かい声、綺麗で眩しい顔。それを含め全てが好きだった。小さな頃に観たあの夕日みたいだったから。でも、僕には彼女に告白する自信も資格もなかった。だからこそ彼女が何故僕に声を掛けたのかということがが不思議でならなかった。そこで僕は今までつぐんでいた口を開き、白坂さんに問いかけた。
「なんで僕と一緒に帰りたかったんですか?」
「君が好きだから、それとこの前のお礼。」
「え?」
「え、ってこの前不良から助けてくれたでしょ?」
「いや、そっちじゃなくて、白坂さん僕の事好きなんですか?」
「うん、そうだよずっと前から。」
彼女は少しも恥ずかしがる事なく、笑顔でそう言った。正直、驚いた。まさか白坂さんが僕の事を好きでいてくれていたなんて。
「驚きました、でも何故ですか?」
「君が青空みたいだったから、かな。」
「青空ですか?」
「そう、君の声も微笑んだ顔も青空みたいだった。私ね、子供の頃見た青空がずっと忘れられなかったの。それがもう見られないと思うと、切なくて元気になれなかった。でも、クラス替えをしたあの日、窓際で肘をついて外の景色を眺める君を見て思ったの。やっと会えたって。これが理由、どう?気持ち悪いと思ったでしょ?」
白坂さんは微笑みながらそれでも何処か切なそうに僕を見つめていた。
「いえ、嬉しいです。僕もずっと前から好きだったので。僕も小さい頃に見た夕日を白坂さんに重ねていました。」
「すごい偶然、ねえ私たち付き合わない?両思いなんでしょ?」
「ええ、喜んで。」
頬を赤らめて笑う白坂さんの笑顔が夕日に照されて輝いていた。
















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