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†星の幻夢†
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「!こ、この王子様の性格っ…!」
一頻り笑った唯香は、不思議そうに自分を見上げてくるレイセに、それまでとは一転、本来の唯香らしい笑みと表情を見せていた。
それに驚いて目を丸くするレイセを、唯香は次いで、その金髪を撫ぜる形で落ち着かせる。
「この王子様…随分俺様なんだね。
女の子を拒んだり、触らせなかったり…
…ホント、物言いといい気質といい…誰かさんにそっくり」
…“精の黒瞑界にいる誰かさんに”。
もしかしたら今頃は、くしゃみのひとつもしているのだろうか?
そういうタイプではないのは明白だが、反して、そうであってくれればいいとも、強く思う。
…俺様気質のヴァンパイア・ハーフ。
主人格は我が強くて鬼畜で冷徹。でも副人格としては優しく、己の分を弁える謙虚な面もある、圧倒的な魔力とカリスマ性を併せ持つカミュ。
…この物語に出てくる“王子様”は、そんなカミュに性格が良く似ている。
「…“女の子は、王子様を捕まえると、怒った様子で言いました。
王子様でも誰でも、具合の悪い人は放っておけな…” あれ?」
ここまで来て唯香は、ようやく違和感に気付いた。
──この王子様の性格がカミュに似ているだけではない。
この様子は、まさにあの時の再現ではないか…!
「!えっ…、まさか…
ちょ、ちょっと待って、レイセ!」
レイセにストップをかけた唯香は、慌ててぺらぺらと先のページを捲った。
するとその先には、女の子が病気の王子様を介抱するために、自分の家に連れて行って休ませたり、そこで話を聞いたりと、何処かで見たような…
というより、何処かで体感したような文章が載せられていた。
「!ま、まさかこの本の作者…」
言うなり、唯香は裏表紙を開いた。
そこには、はっきりくっきりと、著者名が書かれている。
“絵:アクァエル=シレン
文:ルファイア・シレン”
「…、やっぱり…」
唯香は頭痛を覚えて頭を抱え込んだ。
ここまで来ればもはや言うまでもないが、この絵本は、確実に自分とカミュをモチーフにしたものに違いない。
…“あの時”、敵であったカミュの居所を、すぐさま突き止めたルファイア。
だが恐らくは、全てを知っていて監視していたのだろう。
全ては、精の黒瞑界の皇子であるカミュの魔力を、最大限に引き出すために。
しかし多分ながら、その事実を知るのは、当のカミュ以外には恐らく、ルファイア本人のみだろう。
だとすればこのまま読み続けることは、ある意味では自虐にも等しい。
「? …どうしたの? 母上」
レイセが、くりっとした蒼の目を向けて唯香に尋ねる。
それに唯香は、はっと我に返った。
「え!? あ、あの、ううん、何でも…」
「…本当に?」
レイセの指摘は幼いが故に容赦がない。
すると、その澱みかけた空気を遮るかのようにして、よく通る少年の声が響いた。
「そこまでにしておけよ、レイセ」
「!あ…、ルイセ兄上!」
レイセは唯香の膝からぴょんと跳ねると、声をかけた累世へと駆け寄り、その勢いのままに抱き付こうとした…
が。
「…まずは母上を留めた理由を訊こうか? レイセ」
絶対零度の笑みを浮かべてルイセの前に立ち、レイセの頭を押さえつけたのは、言わずもがなのライセだ。
途端にレイセは、ぽかぽかと軽くライセの体を叩いた。
「ライセ兄上の意地悪! 冷徹鬼畜っ!
僕は、ルイセ兄上に“はぐ”して貰いたいんだから、邪魔しないで!」
これにはさすがにライセのこめかみが引きつる。
「ほう…よくもそこまでずけずけと。
ハグなら俺がしてやろう。お前にルイセは勿体ないからな」
「…ライセ…、そういう問題か?」
一頻り笑った唯香は、不思議そうに自分を見上げてくるレイセに、それまでとは一転、本来の唯香らしい笑みと表情を見せていた。
それに驚いて目を丸くするレイセを、唯香は次いで、その金髪を撫ぜる形で落ち着かせる。
「この王子様…随分俺様なんだね。
女の子を拒んだり、触らせなかったり…
…ホント、物言いといい気質といい…誰かさんにそっくり」
…“精の黒瞑界にいる誰かさんに”。
もしかしたら今頃は、くしゃみのひとつもしているのだろうか?
そういうタイプではないのは明白だが、反して、そうであってくれればいいとも、強く思う。
…俺様気質のヴァンパイア・ハーフ。
主人格は我が強くて鬼畜で冷徹。でも副人格としては優しく、己の分を弁える謙虚な面もある、圧倒的な魔力とカリスマ性を併せ持つカミュ。
…この物語に出てくる“王子様”は、そんなカミュに性格が良く似ている。
「…“女の子は、王子様を捕まえると、怒った様子で言いました。
王子様でも誰でも、具合の悪い人は放っておけな…” あれ?」
ここまで来て唯香は、ようやく違和感に気付いた。
──この王子様の性格がカミュに似ているだけではない。
この様子は、まさにあの時の再現ではないか…!
「!えっ…、まさか…
ちょ、ちょっと待って、レイセ!」
レイセにストップをかけた唯香は、慌ててぺらぺらと先のページを捲った。
するとその先には、女の子が病気の王子様を介抱するために、自分の家に連れて行って休ませたり、そこで話を聞いたりと、何処かで見たような…
というより、何処かで体感したような文章が載せられていた。
「!ま、まさかこの本の作者…」
言うなり、唯香は裏表紙を開いた。
そこには、はっきりくっきりと、著者名が書かれている。
“絵:アクァエル=シレン
文:ルファイア・シレン”
「…、やっぱり…」
唯香は頭痛を覚えて頭を抱え込んだ。
ここまで来ればもはや言うまでもないが、この絵本は、確実に自分とカミュをモチーフにしたものに違いない。
…“あの時”、敵であったカミュの居所を、すぐさま突き止めたルファイア。
だが恐らくは、全てを知っていて監視していたのだろう。
全ては、精の黒瞑界の皇子であるカミュの魔力を、最大限に引き出すために。
しかし多分ながら、その事実を知るのは、当のカミュ以外には恐らく、ルファイア本人のみだろう。
だとすればこのまま読み続けることは、ある意味では自虐にも等しい。
「? …どうしたの? 母上」
レイセが、くりっとした蒼の目を向けて唯香に尋ねる。
それに唯香は、はっと我に返った。
「え!? あ、あの、ううん、何でも…」
「…本当に?」
レイセの指摘は幼いが故に容赦がない。
すると、その澱みかけた空気を遮るかのようにして、よく通る少年の声が響いた。
「そこまでにしておけよ、レイセ」
「!あ…、ルイセ兄上!」
レイセは唯香の膝からぴょんと跳ねると、声をかけた累世へと駆け寄り、その勢いのままに抱き付こうとした…
が。
「…まずは母上を留めた理由を訊こうか? レイセ」
絶対零度の笑みを浮かべてルイセの前に立ち、レイセの頭を押さえつけたのは、言わずもがなのライセだ。
途端にレイセは、ぽかぽかと軽くライセの体を叩いた。
「ライセ兄上の意地悪! 冷徹鬼畜っ!
僕は、ルイセ兄上に“はぐ”して貰いたいんだから、邪魔しないで!」
これにはさすがにライセのこめかみが引きつる。
「ほう…よくもそこまでずけずけと。
ハグなら俺がしてやろう。お前にルイセは勿体ないからな」
「…ライセ…、そういう問題か?」
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