24 / 63
†六星の系譜†
4
しおりを挟む
【サリア編】
…“今年もこの日がやってきた”。
それを事実として実感していたサリアは、知らずに口元を綻ばせながらも──
精の黒瞑界の城内にある自らの執務室に、大量の美花を飾っていた。
六魔将の間では、『親しき仲にも礼儀あり』を地で行くかのように、それぞれの誕生日には必ず何かを贈り合う。
それは時に、身につける物であったり、絵画であったりと、その都度違ってはいたが、それぞれ皆、その時の相手に、己が一番相応しいであろうと考えるものを贈っていた。
…そして、今回のサリアの場合は…
「…サリア、居るか?」
不意に執務室の扉の向こうから、六魔将のひとり・【時聖】レイヴァンの声が響いた。
それに気付いたサリアは、足取りも軽く扉に近づき、開く。
「…?」
レイヴァンはそんなサリアの様子に一時戸惑うも…
そこはさすがに六魔将の最高実力者、すぐに気持ちを冷静に保つと、手にしていたプレゼントを、今日の主役に手渡した。
「!あ…、有難うレイヴァン!」
サリアが満面の笑みを浮かべる。
…レイヴァンから受け取ったプレゼントは、その作りもラッピングも、小さな四角の形をしていた。
しかし小さいながらも、そのラッピングに使われている素材の高級さはただ事ではない。
サリアは思わず、レイヴァンを見上げていた。
「あ…開けてみていいかしら?」
「ああ」
レイヴァンは二つ返事で頷いた。
送り主からの了解が出たので、サリアはすぐにラッピングをほどき始める。
中から出てきたのは…
「…!? これって…まさか、ヴァンヘルのピアス!?」
…“ヴァンヘル”。
正式名をヴァンド=ヘルシングスという、精の黒瞑界でも上位一、二を争う、高貴アクセサリーを扱う超高級ブランドの略称だ。
中でもそこのピアスは、誕生日に身につけることで幸せな結婚が出来ると、若い娘の間では波紋も話題も広がり、現在、購入しようとしても、黙っていても向こう3年は待たなければならないような、極めて希少価値な代物なのだ。
そんな予想外に高価なプレゼントに、さすがのサリアの瞳も、一瞬ながら大きく見開かれた。
「!ほ…、ホントにこれ…、貰ってもいいの!?」
「…ああ。その為に買ったのだから、遠慮することはない」
レイヴァンは嬉しそうに笑った。
すると、いつの間に近付いて来ていたのか、その傍らで、ぴたりと足を止めた者が複数いた。
そこに居たのは、フェンネル、シン、ユリアスの三人だった。
皆、三者三様に、大小様々にラッピングされた贈り物を手にしている。
サリアの目が、レイヴァンの側にいる三人に向けられた。
…三人は示し合わせるふうもなく、ごく自然に頷く。
それでも代表したかのように、フェンネルが口を開いた。
「誕生日おめでとう、サリア」
「!あ、有難う…」
「おめでとう、サリア!」
三人は口々に祝いの言葉を述べながら、サリアに贈り物を手渡した。
嬉々としたサリアがプレゼントを開くと、
フェンネルからは色々な種類の香水一式、
シンからは真紅のドレス、
ユリアスからはオルゴールも兼ねた宝石箱だった。
サリアは思わず口元に手を当てた。
それらは皆、欲しかったものばかりで、そのツボを見事に突いてきた、彼らからのプレゼントが本当に嬉しかったからだ。
「うわぁ…、あ、有難う…!」
「…しかしカイネルの奴、一体どこで何してるんだ?」
シンの苦虫を噛み潰したような一言に、恍惚となりかけていたサリアは、はっと我に返った。
…そういえば、カイネルの姿が見えない。
サリアは先程までの暖かい気持ちは何処へやら、不意にむかむかと腹が立ってきた。
その理由はただひとつ。
(まさか、あの男…
あたしの誕生日、けろっと忘れてるんじゃないでしょうね?)
…本当はそれは図星だったのだが、それを今のサリアが知るよしもない。
するとそのサリアの顔色が変わったのを的確に察知したのか、レイヴァンが溜め息混じりに呟いた。
「…いつもながら、仕方のない奴だな」
しかしその呟きは火に油だったようで、サリアの表情は目に見えて引きつった。
…するとタイミングの悪いことに、その当の噂の主が、声をかけることで地雷を踏んだ。
「…何だよ、もうみんなお揃いなのか」
「!」
遅れてきてまるで悪びれないその様子に、今度はサリアを抜いた周囲の者の空気が固まる。
カイネルはそれに気付くふうもなく、皆の側まで歩を進めた。
…“今年もこの日がやってきた”。
それを事実として実感していたサリアは、知らずに口元を綻ばせながらも──
精の黒瞑界の城内にある自らの執務室に、大量の美花を飾っていた。
六魔将の間では、『親しき仲にも礼儀あり』を地で行くかのように、それぞれの誕生日には必ず何かを贈り合う。
それは時に、身につける物であったり、絵画であったりと、その都度違ってはいたが、それぞれ皆、その時の相手に、己が一番相応しいであろうと考えるものを贈っていた。
…そして、今回のサリアの場合は…
「…サリア、居るか?」
不意に執務室の扉の向こうから、六魔将のひとり・【時聖】レイヴァンの声が響いた。
それに気付いたサリアは、足取りも軽く扉に近づき、開く。
「…?」
レイヴァンはそんなサリアの様子に一時戸惑うも…
そこはさすがに六魔将の最高実力者、すぐに気持ちを冷静に保つと、手にしていたプレゼントを、今日の主役に手渡した。
「!あ…、有難うレイヴァン!」
サリアが満面の笑みを浮かべる。
…レイヴァンから受け取ったプレゼントは、その作りもラッピングも、小さな四角の形をしていた。
しかし小さいながらも、そのラッピングに使われている素材の高級さはただ事ではない。
サリアは思わず、レイヴァンを見上げていた。
「あ…開けてみていいかしら?」
「ああ」
レイヴァンは二つ返事で頷いた。
送り主からの了解が出たので、サリアはすぐにラッピングをほどき始める。
中から出てきたのは…
「…!? これって…まさか、ヴァンヘルのピアス!?」
…“ヴァンヘル”。
正式名をヴァンド=ヘルシングスという、精の黒瞑界でも上位一、二を争う、高貴アクセサリーを扱う超高級ブランドの略称だ。
中でもそこのピアスは、誕生日に身につけることで幸せな結婚が出来ると、若い娘の間では波紋も話題も広がり、現在、購入しようとしても、黙っていても向こう3年は待たなければならないような、極めて希少価値な代物なのだ。
そんな予想外に高価なプレゼントに、さすがのサリアの瞳も、一瞬ながら大きく見開かれた。
「!ほ…、ホントにこれ…、貰ってもいいの!?」
「…ああ。その為に買ったのだから、遠慮することはない」
レイヴァンは嬉しそうに笑った。
すると、いつの間に近付いて来ていたのか、その傍らで、ぴたりと足を止めた者が複数いた。
そこに居たのは、フェンネル、シン、ユリアスの三人だった。
皆、三者三様に、大小様々にラッピングされた贈り物を手にしている。
サリアの目が、レイヴァンの側にいる三人に向けられた。
…三人は示し合わせるふうもなく、ごく自然に頷く。
それでも代表したかのように、フェンネルが口を開いた。
「誕生日おめでとう、サリア」
「!あ、有難う…」
「おめでとう、サリア!」
三人は口々に祝いの言葉を述べながら、サリアに贈り物を手渡した。
嬉々としたサリアがプレゼントを開くと、
フェンネルからは色々な種類の香水一式、
シンからは真紅のドレス、
ユリアスからはオルゴールも兼ねた宝石箱だった。
サリアは思わず口元に手を当てた。
それらは皆、欲しかったものばかりで、そのツボを見事に突いてきた、彼らからのプレゼントが本当に嬉しかったからだ。
「うわぁ…、あ、有難う…!」
「…しかしカイネルの奴、一体どこで何してるんだ?」
シンの苦虫を噛み潰したような一言に、恍惚となりかけていたサリアは、はっと我に返った。
…そういえば、カイネルの姿が見えない。
サリアは先程までの暖かい気持ちは何処へやら、不意にむかむかと腹が立ってきた。
その理由はただひとつ。
(まさか、あの男…
あたしの誕生日、けろっと忘れてるんじゃないでしょうね?)
…本当はそれは図星だったのだが、それを今のサリアが知るよしもない。
するとそのサリアの顔色が変わったのを的確に察知したのか、レイヴァンが溜め息混じりに呟いた。
「…いつもながら、仕方のない奴だな」
しかしその呟きは火に油だったようで、サリアの表情は目に見えて引きつった。
…するとタイミングの悪いことに、その当の噂の主が、声をかけることで地雷を踏んだ。
「…何だよ、もうみんなお揃いなのか」
「!」
遅れてきてまるで悪びれないその様子に、今度はサリアを抜いた周囲の者の空気が固まる。
カイネルはそれに気付くふうもなく、皆の側まで歩を進めた。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
【R18】幼馴染の男3人にノリで乳首当てゲームされて思わず感じてしまい、次々と告白されて予想外の展開に…【短縮版】
うすい
恋愛
【ストーリー】
幼馴染の男3人と久しぶりに飲みに集まったななか。自分だけ異性であることを意識しないくらい仲がよく、久しぶりに4人で集まれたことを嬉しく思っていた。
そんな中、幼馴染のうちの1人が乳首当てゲームにハマっていると言い出し、ななか以外の3人が実際にゲームをして盛り上がる。
3人のやり取りを微笑ましく眺めるななかだったが、自分も参加させられ、思わず感じてしまい―――。
さらにその後、幼馴染たちから次々と衝撃の事実を伝えられ、事態は思わぬ方向に発展していく。
【登場人物】
・ななか
広告マーケターとして働く新社会人。純粋で素直だが流されやすい。大学時代に一度だけ彼氏がいたが、身体の相性が微妙で別れた。
・かつや
不動産の営業マンとして働く新社会人。社交的な性格で男女問わず友達が多い。ななかと同じ大学出身。
・よしひこ
飲食店経営者。クールで口数が少ない。頭も顔も要領もいいため学生時代はモテた。短期留学経験者。
・しんじ
工場勤務の社会人。控えめな性格だがしっかり者。みんなよりも社会人歴が長い。最近同棲中の彼女と別れた。
【注意】
※一度全作品を削除されてしまったため、本番シーンはカットしての投稿となります。
そのため読みにくい点や把握しにくい点が多いかと思いますがご了承ください。
フルバージョンはpixivやFantiaで配信させていただいております。
※男数人で女を取り合うなど、くっさい乙女ゲーム感満載です。
※フィクションとしてお楽しみいただきますようお願い申し上げます。
【R18】もう一度セックスに溺れて
ちゅー
恋愛
--------------------------------------
「んっ…くっ…♡前よりずっと…ふか、い…」
過分な潤滑液にヌラヌラと光る間口に亀頭が抵抗なく吸い込まれていく。久しぶりに男を受け入れる肉道は最初こそ僅かな狭さを示したものの、愛液にコーティングされ膨張した陰茎を容易く受け入れ、すぐに柔らかな圧力で応えた。
--------------------------------------
結婚して五年目。互いにまだ若い夫婦は、愛情も、情熱も、熱欲も多分に持ち合わせているはずだった。仕事と家事に忙殺され、いつの間にかお互いが生活要員に成り果ててしまった二人の元へ”夫婦性活を豹変させる”と銘打たれた宝石が届く。
【R18】やがて犯される病
開き茄子(あきなす)
恋愛
『凌辱モノ』をテーマにした短編連作の男性向け18禁小説です。
女の子が男にレイプされたり凌辱されたりして可哀そうな目にあいます。
女の子側に救いのない話がメインとなるので、とにかく可哀そうでエロい話が好きな人向けです。
※ノクターンノベルスとpixivにも掲載しております。
内容に違いはありませんので、お好きなサイトでご覧下さい。
また、新シリーズとしてファンタジーものの長編小説(エロ)を企画中です。
更新準備が整いましたらこちらとTwitterでご報告させていただきます。
彼女の母は蜜の味
緋山悠希
恋愛
ある日、彼女の深雪からお母さんを買い物に連れて行ってあげて欲しいと頼まれる。密かに綺麗なお母さんとの2人の時間に期待を抱きながら「別にいいよ」と優しい彼氏を演じる健二。そんな健二に待っていたのは大人の女性の洗礼だった…
連続寸止めで、イキたくて泣かされちゃう女の子のお話
まゆら
恋愛
投稿を閲覧いただき、ありがとうございます(*ˊᵕˋ*)
「一日中、イかされちゃうのと、イケないままと、どっちが良い?」
久しぶりの恋人とのお休みに、食事中も映画を見ている時も、ずっと気持ち良くされちゃう女の子のお話です。
【R-18】クリしつけ
蛙鳴蝉噪
恋愛
男尊女卑な社会で女の子がクリトリスを使って淫らに教育されていく日常の一コマ。クリ責め。クリリード。なんでもありでアブノーマルな内容なので、精神ともに18歳以上でなんでも許せる方のみどうぞ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる