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Ⅴ.背徳の墓標
還れる場所
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それだけを言うのがやっとなセレンは、そんな自らの感情を振り切るようにして扉の中へと姿を消した。
そして、レアンもそれに続く。
…しばらくの沈黙の後。
ついに、たまりかねたようにヴァルスが叫んだ。
「なあ、ユイ! お前はそれで…
これでいいと、本当に思ってるのかよ!?」
「……」
ユイの持つ特有の、冷厳な空気がその場を支配する。
…すると、その時。
『!…あ、あ…
ああ… あ、あぁあぁああ──…!!』
セレンの悲痛な慟哭が、その場の雰囲気を一変させた。
「セレン!」
たまらずにヴァルスは、目の前の扉を勢い良く開いた。
…その目に映るのは、
地下に設えられた墓石を、壊れそうな程に強く抱きしめ、大粒の涙を流すセレン。
「!…」
半ば予測していたこととはいえ、人目すら気にせず泣きじゃくるセレンに、ヴァルスの表情は凍りついた。
…ユイが、殊更静かに呟く。
「…、やはり家族の墓…か」
「…ユイ…」
普段とは大違いの、セレンの弱さを目の当たりにしながら、思わずヴァルスの口から声が洩れる。
「…ユイ、セレンに付いていてやらなくていいのか?
あんなに…あんなに泣いているのに…!」
「…俺が付いている必要はない」
一聴すれば素っ気ないとも取れる返事に、自然、ヴァルスの声は荒くなる。
「ユイっ! 何でそんな…!」
「あいつは、縋りたければ自分から来る」
「…え?」
ヴァルスは長めの瞬きをした。
「なん…?」
「セレンの悲しみの深さは、見れば解る。
だが、今までのあいつの言動からも分かるだろう?
あいつは… セレンは、俺の庇護下に在ることなど望まない。
ましてや我が儘にも近い甘えなど…もはや見せるはずもない」
「! あ…」
失言だったかと、ヴァルスが思わず、その手で大きく口を覆う。
そのヴァルスの手を、ユイはゆっくりと下ろした。
「俺は、自ら付いて行くと決めたセレンを甘やかす気はない。
だが、せめてその悲しみが薄れるまでは…
時がある程度の傷を癒すまでは、泣く場所くらいは用意しておくつもりだ」
「…、分かったよ、ユイ…
俺のさっきの不躾な発言は撤回する」
何となく、ユイが組織を抜けた理の片鱗が見えた気がして、その結果が、ヴァルスに素直に詫びを入れさせた。
そして、その一方で…こうも考えさせる。
(あの冷酷非情なユイが…まさかここまで変わるとはね…)
…と。
※以下は、かつて自サイトに載せた時に書いた、後書きになります。
それゆえ文体ならぬ口調が完全に砕けておりますので、小説のみに興味がある方は、閲覧はここまででお願いします。
逆に、小説に対するちょっとした裏話・設定等に興味のある方は、“苦情その他を抜きを前提”に、先をご覧頂ければと思います。
†あとがき†
Break Gunsには、あとがきなんて入れてたんですね…
その事実に今更ながらびっくりしてます。
…忘れてたのか管理人、というツッコミはご勘弁下さい(笑)
というか、この、Break Gunsって…
何だか他の小説の、どれにも増して、章ごとのページ数にバラつきがありますね。
実は今章も、本当はラストが若干、違ってたんですけどね…
今回の更新にあたって、何だかどうもこう…ページ数を稼ぐに従って、他の章とのページバランスが気になりまして。
本当は…というか、私の脳内にあった予定としてはですね、今回の章の最後のシーンでは、ユイとヴァルスも、本来なら室内に入ってたんです… が。
ただでさえページ数がおかしいのに、これを書いたらまた長くなると思って、その部分は急遽、変更と相成りました。
他にも、この章の中でユイに言わせたい台詞もあったんですけどね。
まあ…上記の事情なんで、これは次章辺りに回そうと思います。
…そして例によって、ラストは想定出来てますが、その間が思いつかないという体たらくです。
でも今回の出だし… 飲み比べは書いていて面白かったので、そんなノリでまたやりたいと思ってます。
ちなみにこの、Break Gunsは多分…
まだ続くと思います。きっちり長くなると断言出来ないのが痛いですが、気長に読んで下さっている方のためにも、更新は続けたいと思っています。
では。
2010/12/08 如月統哉
そして、レアンもそれに続く。
…しばらくの沈黙の後。
ついに、たまりかねたようにヴァルスが叫んだ。
「なあ、ユイ! お前はそれで…
これでいいと、本当に思ってるのかよ!?」
「……」
ユイの持つ特有の、冷厳な空気がその場を支配する。
…すると、その時。
『!…あ、あ…
ああ… あ、あぁあぁああ──…!!』
セレンの悲痛な慟哭が、その場の雰囲気を一変させた。
「セレン!」
たまらずにヴァルスは、目の前の扉を勢い良く開いた。
…その目に映るのは、
地下に設えられた墓石を、壊れそうな程に強く抱きしめ、大粒の涙を流すセレン。
「!…」
半ば予測していたこととはいえ、人目すら気にせず泣きじゃくるセレンに、ヴァルスの表情は凍りついた。
…ユイが、殊更静かに呟く。
「…、やはり家族の墓…か」
「…ユイ…」
普段とは大違いの、セレンの弱さを目の当たりにしながら、思わずヴァルスの口から声が洩れる。
「…ユイ、セレンに付いていてやらなくていいのか?
あんなに…あんなに泣いているのに…!」
「…俺が付いている必要はない」
一聴すれば素っ気ないとも取れる返事に、自然、ヴァルスの声は荒くなる。
「ユイっ! 何でそんな…!」
「あいつは、縋りたければ自分から来る」
「…え?」
ヴァルスは長めの瞬きをした。
「なん…?」
「セレンの悲しみの深さは、見れば解る。
だが、今までのあいつの言動からも分かるだろう?
あいつは… セレンは、俺の庇護下に在ることなど望まない。
ましてや我が儘にも近い甘えなど…もはや見せるはずもない」
「! あ…」
失言だったかと、ヴァルスが思わず、その手で大きく口を覆う。
そのヴァルスの手を、ユイはゆっくりと下ろした。
「俺は、自ら付いて行くと決めたセレンを甘やかす気はない。
だが、せめてその悲しみが薄れるまでは…
時がある程度の傷を癒すまでは、泣く場所くらいは用意しておくつもりだ」
「…、分かったよ、ユイ…
俺のさっきの不躾な発言は撤回する」
何となく、ユイが組織を抜けた理の片鱗が見えた気がして、その結果が、ヴァルスに素直に詫びを入れさせた。
そして、その一方で…こうも考えさせる。
(あの冷酷非情なユイが…まさかここまで変わるとはね…)
…と。
※以下は、かつて自サイトに載せた時に書いた、後書きになります。
それゆえ文体ならぬ口調が完全に砕けておりますので、小説のみに興味がある方は、閲覧はここまででお願いします。
逆に、小説に対するちょっとした裏話・設定等に興味のある方は、“苦情その他を抜きを前提”に、先をご覧頂ければと思います。
†あとがき†
Break Gunsには、あとがきなんて入れてたんですね…
その事実に今更ながらびっくりしてます。
…忘れてたのか管理人、というツッコミはご勘弁下さい(笑)
というか、この、Break Gunsって…
何だか他の小説の、どれにも増して、章ごとのページ数にバラつきがありますね。
実は今章も、本当はラストが若干、違ってたんですけどね…
今回の更新にあたって、何だかどうもこう…ページ数を稼ぐに従って、他の章とのページバランスが気になりまして。
本当は…というか、私の脳内にあった予定としてはですね、今回の章の最後のシーンでは、ユイとヴァルスも、本来なら室内に入ってたんです… が。
ただでさえページ数がおかしいのに、これを書いたらまた長くなると思って、その部分は急遽、変更と相成りました。
他にも、この章の中でユイに言わせたい台詞もあったんですけどね。
まあ…上記の事情なんで、これは次章辺りに回そうと思います。
…そして例によって、ラストは想定出来てますが、その間が思いつかないという体たらくです。
でも今回の出だし… 飲み比べは書いていて面白かったので、そんなノリでまたやりたいと思ってます。
ちなみにこの、Break Gunsは多分…
まだ続くと思います。きっちり長くなると断言出来ないのが痛いですが、気長に読んで下さっている方のためにも、更新は続けたいと思っています。
では。
2010/12/08 如月統哉
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