【完結】婚約破棄する?しない?~我は弟の婚約者がお気に入り

みなわなみ

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だからロランダを乞う

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 その後、クプスは素直にロランダとオフィキス公爵に謝った。
 まだまだ、見所はある。

 クラウディア嬢がロランダに妃教育をねだったのには驚いた。
 嬢にしてみれば、クプス付きの侍女とかに成れればよいと思っていたのではなかろうか。

 ロランダの眉がピクリと一瞬動いたが、誰も気づかなかっただろう。微笑みを浮かべて、ロランダは、クラウディア嬢を説得にかかった。

 クラウディア嬢の教育は、婚約破棄が正式に成立するまでという約束だったから、我も少しからかってみる。
 「もう少し面倒を見てやってくれぬか、まだ正式な婚約破棄には至っておらぬ」と。

 ロランダが上目遣いに我をチラリと見つめ、背筋を伸ばした。
 諦めぬか。夢がかかっているからな。

 ロランダはクラウディア嬢に自分と同じでなくてよいと再び告げ、彼女の長所を上げた。
 孤児院や町で誰とでもすぐ話せる。それは自分にはない才能だと。

 そして、

「外交など難しいことは、いずれ皇太子殿下と縁を結ばれる方にお任せなさいませ」

 と、勝手に決めつけた。

 おいおい……と思いながら、内心でニヤリとする。

「ロランダ、勝手に決めるな」

 少し苦々しい声を出すと、ロランダが我を見て微笑む。

「恐れながら皇太子殿下。殿下の婚約者がまだお決まりでないのは、周りの国情を睨んでいらっしゃるからでございましょう?
 皇太子殿下のご結婚そのものが外交なのですから、皇太子妃となる方は外交に長けた方にというのは、皇帝陛下のみならず臣下一同の願いでは?」

「まぁ、そうだが」

「ならば、外交は皇太子妃にお任せし、クラウディア様は才能をいかして慈善事業の先頭に立っていただければよいではありませんか。慈善事業も皇家の大切な仕事」

「解っている」

 そうだ。だからロランダ、我はそなたを離さぬ。
 皇太子としても、男としても。
 我は顔がニヤつきそうなのを堪えるため、大きな溜め息をついた。
 ロランダがしまったと思ったのか、目を伏せたな。

「ロランダ」

「はい」

「そなたのその才がわれは惜しい」

 皆の前で宣言をしておく。
 これは、我の嘘偽りない思いだ。

「もったいないお言葉でございます」

「そなたが男であれば、一も二もなく我の側近にするのだがな」

 ロランダは、ただ頭を下げた。

「えぇい、我の敗けだ! そなたの希望通り、ヤアの地の経営に精を出せ。良い品ができれば、約束だ。買い取ってやる」

「ありがたきお言葉。ロランダ=オフィキス、全身全霊を持ってヤアの地を豊かにし、国のお役に立てるようにいたします」

「頼んだぞ」

「はい」

 ロランダが心からの笑顔で返事をする。
 そうだ。その笑顔を我は見ていたいのだ。
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