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ちょっと妬ける
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リーリエの顔は覚悟を決めた顔であった。皇女としての。
我の婚約者が決まらぬうちは、リーリエの婚約者も決まらぬ。
しかし、やはりリーリエにも心を合わせられる人のもとへ嫁いでほしい。
ただ、我の思いを知らずに言ったのだろうが、我には嬉しい言葉だ。
そして、ロランダが背の高さを気にしていたなど、少しも気づかなかった。
そう言えば、「欲しいもの」と言ったときに、ロランダは足元を見たな。
我は馬車と勘違いしたが、ロランダが欲しいものは……。
◆◇◆◇
「久しいではないか、ロランダ」
母上からの社交界情報を持って、ロランダが執務室にやって来た。
すかさず、座るように勧める。
「最終学期でいろいろと忙しいのでしょう?」
エドがフォローしながらも、既にお茶の準備を始めていた。
「ありがとうございます。その通りですわ。エドガー様」
「どこぞの方が賭けなど持ちかけましたしね」
「エド!」
「御自覚はあるようです」
我とエドのやり取りに、ロランダがクスクスと笑う。
「で、ロランダの首尾はどうだ?」
「勝負は常に半々ですわ」
バラのジャムを紅茶に入れ、ロランダはゆっくりと混ぜている。
99%勝てる状況でも、勝負は終わってみなければ判らぬ。
逆に言えば、99%勝てない状況でも1%の勝機はあるのだ。
勝機がある間は、勝つか負けるかどちらとも言えぬのは確かだ。
騎士でさえなかなか理解しているのが少ないのに、ロランダは当たり前のように言う。
「勝てば成功…か」
「ええ」
ロランダがカップを手に、にっこりと微笑む。
敵に情報を渡すつもりはないらしい。
「我は勝算があるぞ。クプスが婚約破棄を言うことはない」
「勝負は最後まで判りませんわ」
ロランダがここまで言いきるなら勝算があるようだな。
「この間、ヤアでいろいろと見せてもらった。素晴らしかった。レオが治めても、あの技術を残せるように我は応援するぞ」
「ただ残せるだけでは駄目ですわ。それで稼げなければ。でないといつか廃れます」
「ハハッ、あくまで自分がヤアを治めるつもりか。ロランダ」
「もちろんですわ」
ロランダが自信に満ちた顔で微笑む。
祖母殿によく似ているな。
我を畏れず、まっすぐに見つめる目。
臆することなく我に物を言うロランダが、我は好きなのだ。
そう、たぶん小さな頃から。
◇◆◇◆
次はいつの夜会で逢えるか、それとなく探りを入れたが、ロランダもう卒業パーティーまで夜会に出ないつもりだと言っていた。
クプスの機嫌が少し悪いから…というのがロランダの答えだったが、それは表向きだろう。
確かに、エドが振っている仕事もあって、クプスの溜め息が増えている。
ロランダは自分が傍にいると、ついネジを巻いてしまうから、クラウディア嬢に慰めさせるのを選んだろう。
結果的に二人の仲が近づけば、婚約破棄にも繋がるだろうし。
ロランダはクプスのことをよく理解している。婚約者として、幼い頃からロランダの瞳はクプスを追い続けてきたのだろう。
ちょっと…妬けるぞ……。
我の婚約者が決まらぬうちは、リーリエの婚約者も決まらぬ。
しかし、やはりリーリエにも心を合わせられる人のもとへ嫁いでほしい。
ただ、我の思いを知らずに言ったのだろうが、我には嬉しい言葉だ。
そして、ロランダが背の高さを気にしていたなど、少しも気づかなかった。
そう言えば、「欲しいもの」と言ったときに、ロランダは足元を見たな。
我は馬車と勘違いしたが、ロランダが欲しいものは……。
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「久しいではないか、ロランダ」
母上からの社交界情報を持って、ロランダが執務室にやって来た。
すかさず、座るように勧める。
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「ありがとうございます。その通りですわ。エドガー様」
「どこぞの方が賭けなど持ちかけましたしね」
「エド!」
「御自覚はあるようです」
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「で、ロランダの首尾はどうだ?」
「勝負は常に半々ですわ」
バラのジャムを紅茶に入れ、ロランダはゆっくりと混ぜている。
99%勝てる状況でも、勝負は終わってみなければ判らぬ。
逆に言えば、99%勝てない状況でも1%の勝機はあるのだ。
勝機がある間は、勝つか負けるかどちらとも言えぬのは確かだ。
騎士でさえなかなか理解しているのが少ないのに、ロランダは当たり前のように言う。
「勝てば成功…か」
「ええ」
ロランダがカップを手に、にっこりと微笑む。
敵に情報を渡すつもりはないらしい。
「我は勝算があるぞ。クプスが婚約破棄を言うことはない」
「勝負は最後まで判りませんわ」
ロランダがここまで言いきるなら勝算があるようだな。
「この間、ヤアでいろいろと見せてもらった。素晴らしかった。レオが治めても、あの技術を残せるように我は応援するぞ」
「ただ残せるだけでは駄目ですわ。それで稼げなければ。でないといつか廃れます」
「ハハッ、あくまで自分がヤアを治めるつもりか。ロランダ」
「もちろんですわ」
ロランダが自信に満ちた顔で微笑む。
祖母殿によく似ているな。
我を畏れず、まっすぐに見つめる目。
臆することなく我に物を言うロランダが、我は好きなのだ。
そう、たぶん小さな頃から。
◇◆◇◆
次はいつの夜会で逢えるか、それとなく探りを入れたが、ロランダもう卒業パーティーまで夜会に出ないつもりだと言っていた。
クプスの機嫌が少し悪いから…というのがロランダの答えだったが、それは表向きだろう。
確かに、エドが振っている仕事もあって、クプスの溜め息が増えている。
ロランダは自分が傍にいると、ついネジを巻いてしまうから、クラウディア嬢に慰めさせるのを選んだろう。
結果的に二人の仲が近づけば、婚約破棄にも繋がるだろうし。
ロランダはクプスのことをよく理解している。婚約者として、幼い頃からロランダの瞳はクプスを追い続けてきたのだろう。
ちょっと…妬けるぞ……。
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