【完結】婚約破棄する?しない?~我は弟の婚約者がお気に入り

みなわなみ

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リーリエが教えてくれた

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 クラウディア嬢はロランダに付きまとい、真似をしてはうまくいかないらしい。ロランダが時に厳しく教えているらしいな。
 ロランダもチャンスはうまく使っているようだ。

 婚約破棄がなるまで、我の思いはエド以外に悟られないようにせねばならぬ。
 なにやら応援団も着いているようだし……。

 近頃は、エドガーが簡単な案件をクプスの元へ振ってくれている。無論、あとで我がチェックするが……。

 クプスは自由時間が減って辟易しているようだが、そのぶん、自由な時間はクラウディア嬢と長くいる時間が増えたようだ。
 夜会でも、二人きりにはならぬが、それとなく近くにおるしな。

 我は、夜会の時にロランダに合うのも楽しみになった。
 この間は、モーヴ色のドレスが、チョコレート色の髪にとても似合っていた。
 が、踊ったときになにか一瞬違和感があった。

 なんだろう……。


 プライベートサロンで一息ついていると、リーリエがソロソロと歩いて来て、我を見ると罰が悪そうな顔をした。

「誰もいないと思ったのに」

「どうした? どこか悪いのか?」

 リーリエはドレス姿でも時々走り回るほどお転婆だ。

「お母様がハイヒールを作ってくださったの。そろそろ高いのにも慣れなさいって」

「ふ~ん」

 嬉しげなリーリエに、我はそっけない返事をする。

「お兄様、ちょうどいいわ。ダンスの練習をしたいの。お相手してくださいませ」

 開き直りが早い上に、有無を言わせぬ。なんとも力強い妹だ。

「はいはい」

 我は立ち上がって礼をし、リーリエの手をとってホールドする。

 へぇ、いつもチビッ子とからかっているが、ハイヒールひとつでグッと視線の位置が変わるな。

淑女レディに見えるぞ」

「レディですっ!! 皇女ですっ!!」

 頬を膨らませたリーリエが少し上を向いて我を睨む。
 いつもは真上を見るように我を見ているのに。

 ……あれ……、なんだ……?

 え?……

 ロランダと踊ったときは、いつもと同じ背の高さではなかったか?
 
「……リーリエ」

「なぁに?」

「ロランダはパーティーの時にハイヒールを履いているか?」

「履いてないわ。そもそもロランダは持ってないもの」

「持ってない?」

「クプス兄様とロランダはほぼ同じ身長でしょう?」

「クプスに釣り合うようにするためか」

「そうよ」

「クプスが許さないのかい?」

「ロランダが察したのよ。子どもの頃から。できた婚約者ですもの。
からかわないでくださいね、お兄様。ロランダは気にしているのですから」

「気にしている?」

「背が高いのをよ」

「ロランダは背が高いか?」

「のっぽすぎるお兄様から見れば、誰でも背が低く見えるでしょうけど、ロランダは気にしているの!」

 興奮したリーリエがステップを間違えて我の足を踏む。
 わざとか?

「あ、ごめんなさい、お兄様。
この高さでもなんとか踊れそう。お付き合いありがとうございます」

「どういたしまして」

 カーテシーをするリーリエに我も礼をする。

「……ロランダはお兄様の婚約者なら良かったのに……」

 リーリエがポツリと呟く。

「お兄様、カンネへは私が嫁ぎますよ?」

 幼いながらもキリッとした皇女の顔で我を見据えたあと、リーリエは去っていった。
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