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清いだけでは務まらぬ
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最近、小国ながら軍事力が急激に上がっている南のカンネ王国とは、一番手を結びたい。が、かの国は王子が続き、末の王女はまだ生まれたばかり。
我と釣り合う年齢の姫がいる西のペローナ国は母上の里であるし、東のリョウダン国は大叔母上が嫁いでいて、友好関係を保っている。
北のスピース国は、男女を問わず王位継承権があるから、スピース国内での選定が難航しているらしい。
他は小国だが、カンネ王国のように急激に伸びる国もあるからなぁ……。
カンネ王国の貴族令嬢を国王の養女にして我と婚姻させるのが一番よいのかもしれぬが……。
むろん、反対する貴族も多い。
外交婚姻のために国の貴族の和を乱すのは本末転倒だ。父上の頭が痛いのもそこだろう。
そうだ。我は我が国に利のある姫と婚姻する。
そのためにもロランダが必要なのだ。クプスの妃として。
クラウディア嬢が代わりにはなれぬだろうからな……。
エドの報告によれば、クラウディア嬢は、入学と同時にクプスのいた馬術部に入部。
馬に乗るより、世話をするのが好きで、周りの一部生徒に蔑まれたのか。
それでクプスも一緒に世話をするようになったと。
ふむ。人間としては素晴らしいがな、皇族としては、そこに馬を世話する人を入れて、仕事を与え暮らせるようにする。ということも考えねばならぬのだがな。
ロランダがそれとなく忠告したようだが、それは無視されたか。
クプスがクラウディア嬢とよくいるのは、馬術部、孤児院。近頃は、夜会にも出ているのか。
ロランダをエスコートしない日は、クプスが一人で行って、クラウディア嬢をはじめとする令嬢方をエスコート。
まぁ、これもクラウディア嬢だけに目を向けない作戦であろうが。
謗られない程度に頑張っておるな。婚約破棄など言い出すまい。
◇◆◇
ロランダはヤアから戻ったあと、クプスの行く孤児院にも夜会にも行くようになったらしい。
婚約者であるのを顕示しているのだろう。
ロランダがいるとクプスも一人でクラウディア嬢には、なかなか近づけまい。
障害が多いほど気持ちは盛り上がるというからな。
ロランダが何をしなくても、クプスの気持ちがクラウディア嬢へ向く。
クプスと共にクラウディア嬢に近づき、さりげなく作法を教えるのも成功しているらしい。
さすがロランダと言うべきか……。
さて、そろそろ我も動くか。
「エド、しばらくあちらこちらの夜会へ出るぞ。ロランダが巧く立ち回っているようだからな」
「クラウディア嬢を誘うのですか?」
「そうだ」
「オットー……」
「分かっている。クラウディア嬢には申し訳ないがな。だが、清いだけでは皇族は務まらぬ」
「…ロランダを諦めるのか?」
エドがタメ口で強い目線を向ける。
「諦めるもなにも、ロランダはクプスの婚約者だ」
力強く答えると、エドが大きく息を吐いた。
「…夜会の選別とお供はお任せくださいませ」
「頼んだぞ」
我と釣り合う年齢の姫がいる西のペローナ国は母上の里であるし、東のリョウダン国は大叔母上が嫁いでいて、友好関係を保っている。
北のスピース国は、男女を問わず王位継承権があるから、スピース国内での選定が難航しているらしい。
他は小国だが、カンネ王国のように急激に伸びる国もあるからなぁ……。
カンネ王国の貴族令嬢を国王の養女にして我と婚姻させるのが一番よいのかもしれぬが……。
むろん、反対する貴族も多い。
外交婚姻のために国の貴族の和を乱すのは本末転倒だ。父上の頭が痛いのもそこだろう。
そうだ。我は我が国に利のある姫と婚姻する。
そのためにもロランダが必要なのだ。クプスの妃として。
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エドの報告によれば、クラウディア嬢は、入学と同時にクプスのいた馬術部に入部。
馬に乗るより、世話をするのが好きで、周りの一部生徒に蔑まれたのか。
それでクプスも一緒に世話をするようになったと。
ふむ。人間としては素晴らしいがな、皇族としては、そこに馬を世話する人を入れて、仕事を与え暮らせるようにする。ということも考えねばならぬのだがな。
ロランダがそれとなく忠告したようだが、それは無視されたか。
クプスがクラウディア嬢とよくいるのは、馬術部、孤児院。近頃は、夜会にも出ているのか。
ロランダをエスコートしない日は、クプスが一人で行って、クラウディア嬢をはじめとする令嬢方をエスコート。
まぁ、これもクラウディア嬢だけに目を向けない作戦であろうが。
謗られない程度に頑張っておるな。婚約破棄など言い出すまい。
◇◆◇
ロランダはヤアから戻ったあと、クプスの行く孤児院にも夜会にも行くようになったらしい。
婚約者であるのを顕示しているのだろう。
ロランダがいるとクプスも一人でクラウディア嬢には、なかなか近づけまい。
障害が多いほど気持ちは盛り上がるというからな。
ロランダが何をしなくても、クプスの気持ちがクラウディア嬢へ向く。
クプスと共にクラウディア嬢に近づき、さりげなく作法を教えるのも成功しているらしい。
さすがロランダと言うべきか……。
さて、そろそろ我も動くか。
「エド、しばらくあちらこちらの夜会へ出るぞ。ロランダが巧く立ち回っているようだからな」
「クラウディア嬢を誘うのですか?」
「そうだ」
「オットー……」
「分かっている。クラウディア嬢には申し訳ないがな。だが、清いだけでは皇族は務まらぬ」
「…ロランダを諦めるのか?」
エドがタメ口で強い目線を向ける。
「諦めるもなにも、ロランダはクプスの婚約者だ」
力強く答えると、エドが大きく息を吐いた。
「…夜会の選別とお供はお任せくださいませ」
「頼んだぞ」
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