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エドの突っ込み
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「殿下はロランダ様がお気に入りなのですね」
ロランダが退室したあと、エドが柔らかな苦笑いを向ける。我は胸を張って「もちろんだ」と答えた。
すると、エドは不思議なことを言う。
「本当は、クプスリスト殿下との婚約破棄を望んでおられるのでしょう?」
「何を言ってる。ロランダは、クプスと結婚して皇家に入ってもらわねば」
何を言うんだ、このバカ。
なぜそんなに顔をしかめる。美男子が台無しだぞ。
「クプスリスト殿下とご結婚なさらずとも、皇家の一員になれるでしょう?」
なに言ってんだ? こいつ?
我が頭の中に「?」が増えて固まっていると、エドがお茶を片付ける手を止めた。
我に不思議そうな顔を向ける。
「……ちょっと待て、オットー」
エドが我を愛称で呼ぶ。友人忠告の合図だ。
ちなみに、我とエドとレオは幼馴染の同級生である。
「クプスリスト殿下との婚約が解消されれば、ロランダに婚約者はいなくなる」
「それはそうだ。婚約解消したのだから」
何を当たり前のことを……。
「……オットーも、婚約者がいないだろ?」
「わっ、我? 我の妃は、他国の、姫……」
畳み掛けてくるエドに、我は焦った。
「それが決定せず、もう何年だ」
「それは…そうだが……」
「ロランダが可愛いのだろう?」
真正面に立っているエドに両肩をガシッと捕まれる。
「それは、義妹になるのだし……」
「努力家だし……」
レオが手を離さないので、我は続ける。
「発想が面白いし……」
「ちょっと気が強いけど、繊細だし……」
「オットー……、クプスリスト殿下、いや、レオでさえ、ロランダをそこまで理解していないと思うぞ」
我の肩をポンポンと叩いて、エドがやっと手を離した。
「そう…なのか?」
固まったままの我をおいて、エドはさっさとお茶を片付けに戻る。
「殿下…、意外とご自身の気持ちに鈍いのですね」
我に残念な目を向けて。
我はロランダを愛しいと思っているが、それは普通ではないのか?
ロランダといると楽しいし、ずっと話していたい。
我に近づいてくる令嬢達と話していても、ロランダのような手応えがない。というか、政の話をすると
「そのような難しいこと、分かりませんわ」
とか、
「殿下のおっしゃることに賛成ですわ」
とか
「御心のままに」
と、じっと見つめられる。
自分の考えはないのか? そのようなことで、貴族としてやっていけるのか? とも思うが、女性として男に従うのが当たり前と育てられているのだろう。
ロランダを遊び相手として育った妹のリーリェは、政に興味を持っているし、ここぞと言うときには引かない。
我の婚約者になる姫も、せめてその程度の方だとよいと思ってはいた。
だが、それは……ロランダがよいと……思っていたのか?
我はロランダが……?
いや、そろそろ我の婚約者も決まるはず。
我は国を背負って生きねばならぬ。
ロランダが退室したあと、エドが柔らかな苦笑いを向ける。我は胸を張って「もちろんだ」と答えた。
すると、エドは不思議なことを言う。
「本当は、クプスリスト殿下との婚約破棄を望んでおられるのでしょう?」
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何を言うんだ、このバカ。
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「クプスリスト殿下とご結婚なさらずとも、皇家の一員になれるでしょう?」
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「それはそうだ。婚約解消したのだから」
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「……オットーも、婚約者がいないだろ?」
「わっ、我? 我の妃は、他国の、姫……」
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「それは…そうだが……」
「ロランダが可愛いのだろう?」
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「それは、義妹になるのだし……」
「努力家だし……」
レオが手を離さないので、我は続ける。
「発想が面白いし……」
「ちょっと気が強いけど、繊細だし……」
「オットー……、クプスリスト殿下、いや、レオでさえ、ロランダをそこまで理解していないと思うぞ」
我の肩をポンポンと叩いて、エドがやっと手を離した。
「そう…なのか?」
固まったままの我をおいて、エドはさっさとお茶を片付けに戻る。
「殿下…、意外とご自身の気持ちに鈍いのですね」
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我はロランダを愛しいと思っているが、それは普通ではないのか?
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とか、
「殿下のおっしゃることに賛成ですわ」
とか
「御心のままに」
と、じっと見つめられる。
自分の考えはないのか? そのようなことで、貴族としてやっていけるのか? とも思うが、女性として男に従うのが当たり前と育てられているのだろう。
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我の婚約者になる姫も、せめてその程度の方だとよいと思ってはいた。
だが、それは……ロランダがよいと……思っていたのか?
我はロランダが……?
いや、そろそろ我の婚約者も決まるはず。
我は国を背負って生きねばならぬ。
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