【完結】婚約破棄する?しない?~我は弟の婚約者がお気に入り

みなわなみ

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賭けは成立した

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「クラウディア嬢に、上流の作法や、そなたが妃教育でやってきたことをさりげなく教えてほしいのだ。全てとは言わない。まずは基礎を」

「殿下?」

 我の奇妙な提案に、ロランダがまた首を傾げた。

「それに音を上げるようでは、皇家ではやっていけぬだろう。
そのような女性は皇家には不要だ」

 ロランダは、ずっと頑張っているのだから。

「もし…、音をあげなければ?」

「そうだな……そなたの後継ができる、かな?」

 その言葉で自分のやるべきことを理解したのだろう。クスリとロランダがおかしそうに笑った。

「ご自分が負けると思っているのですか?」

「そなたがやっていたことを普通の令嬢が出来るわけなかろう? 音をあげるに決まっている。勝つのは我だ。
だが、万一ということもあろう」

 ニンマリと笑うと、ロランダもクスクスと笑った。

 気持ちを落ち着けるように、ロランダが紅茶を一口含む。黙って我を捕える瞳に、精気が溢れてきた。
 それでこそロランダだ。

「いつまででしょうか」

 ロランダが姿勢を正して尋ねてきた。

「クラウディア嬢が音をあげるまでか、婚約破棄が整うまでだ」

「承知いたしました。私が負けたら、夢を失うのですね」

「すまぬが」

「いいえ。クプス様の妃以外の道を示してくださったこと、感謝いたします」

 ロランダは淑女らしく頭を下げた。
 クプスを嫌っているわけではない。ただ、それよりはヤアに心惹かれるのであろう。
 それがクプスの妃になるために、政を教え込まれた結果だとすると、なんというか、切ない。ロランダには、その才があるのだから。

「我は、そなたが治めるヤアを見てみたい気もするのだ。
 それゆえ、勝っても負けても、我は構わぬ。…しかし、それでは不平等だな。そなたは夢を賭けるのだ。我は何を賭けよう……」

「なにも要りませんわ。勝てば私は夢を手に出来るのですから」

 そう言ったロランダだが、一瞬足元に目を落としたのを我は見逃さなかった。
 足か!

「それでは賭けにならぬ…そうだな、馬車はどうだ。そなたがいつでも自由に使えて、ヤアとの行き来が楽になる」

「そのように高価なもの……」

「我は負けぬゆえ、平気だ」

 グッと胸を張って見せると、ロランダが口許を隠す。
 また、ドヤ顔とやらになっているらしい。

「それは楽しみですわ。負けませんわ」

 ロランダが心から微笑む。
 いつも微笑んでいるが、心からの微笑みは、人を惹き付ける。
 クプスはこの微笑みに心を動かされないのだろうか? と、憐れみと苛立ちが我の心に渦巻いた。

 
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