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うっかりとやってしまいましたわ

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「クラウディア様、先ほども申し上げましたが、私と同じになる必要はございませんわ」

 大事なことは繰り返しませんとね。そして続けます。

「先ほどクプスリスト殿下も仰られたでしょう? 『癒しだ』と。孤児院で子どもとすぐ仲良くなり、町の方々にもすぐ話しかけられる。それは私にない才能です」

「お姉…ロランダ様」

 キッとにらめば言い直しましたわ。やっぱり素直ですわ。

「外交など難しいことは、いずれ皇太子殿下と縁を結ばれる方にお任せなさいませ」

「ロランダ、勝手に決めるな」

 壇上から苦々しい声がしますわ。

「恐れながら皇太子殿下。殿下の婚約者がまだお決まりでないのは、周りの国情を睨んでいらっしゃるからでございましょう?
 皇太子殿下のご結婚そのものが外交なのですから、皇太子妃となる方は外交に長けた方にというのは、皇帝陛下のみならず臣下一同の願いでは?」

「まぁ、そうだが」

「ならば、外交は皇太子妃にお任せし、クラウディア様は才能をいかして慈善事業の先頭に立っていただければよいではありませんか。慈善事業も皇家の大切な仕事」

「解っている」

 皇太子殿下が大きな溜め息をつかれます。
 またやってしまいましたわ…。
 殿方、いえ、目上の皇太子殿下を理詰めで言い負かしてしまいました…。
 でも、オトフリート殿下も私のざまぁを横取りなさったのですもの。おあいこですわ。


「ロランダ」

「はい」

 皇太子殿下の呼び掛けに、頭を下げて返事をします。

「そなたのその才がわれは惜しい」

「もったいないお言葉でございます」

「そなたが男であれば、一も二もなく我の側近にするのだがな」

 答える代わりに、今一度頭を下げます。

「えぇい、我の敗けだ! そなたの希望通り、ヤアの地の経営に精を出せ。良い品ができれば、約束だ。買い取ってやる」

「ありがたきお言葉。ロランダ=オフィキス、全身全霊を持ってヤアの地を豊かにし、国のお役に立てるようにいたします」

「頼んだぞ」

「はい」
 心からの笑顔でオトフリート 皇太子 殿下に返事をいたしました。
 私、夢をつかみましたわ!
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