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わたくしの秘密をご存知でしたか。
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「なぁ、スピース王家に連なる姫」
優雅にステップを踏み、私をリードするオトフリート殿下がこんな黒い声を出していると誰が想像するでしょう。
まぁ、オトフリート殿下のこと。クプスリスト殿下と違い、私のことも調べあげているのでしょう。
実は私が望んだヤアは、元々おばあさまのもの。
今もそこで前公爵のおじいさまと仲良く暮らしておられるおばあさまは、先々代スピース王家の長子で、王位継承権第一位の王女でした。
前のスピース国王の姉になります。
それが、留学生のおじいさまと恋に落ち、全てを捨てておじいさまのところへお嫁にきたのです。
小さい頃からおばあさまが大好きだった私は、スピース語を知らずと聞き覚えたのですわ。
なにせ、おばあさまと訪れるヤアは、スピース国の中に離れ小島のように浮かんでいます。
ハーヴィ国公爵家領地となっても、スピース語が日常的に使われているのですわ。
元々、おばあさまのおばあさま、元王妃様の御料地だったとか。
建前としては、スピース国の食料増産研究を成功させた、おじいさまへの勲功褒賞になっていますが、実際はおばあさまの里帰り場所を与えたかったようです。
ヤアは意外とややこしい土地ですの。
おまけに王位継承権を捨てたのはおばあさまだけだからと、お父様にも、その子どもの私たちにも末席のスピース国王位継承権がありますの。まぁ、ないにも等しいのと、面倒を避けるために秘しておりますが。
気にかけてくださるスピース国のためにも、私はヤアを富ませたいのですわ。
「この賭け、我は勝っても負けても良いと言うたであろう?」
オトフリート殿下が、またニヤリと笑います。
遠くから見ると微笑んでいるように見えるでしょうね。
でも、私は黒さが分かるので警戒します。
「そうですね。殿下が私の一番欲しいものを下されたら考えますわ」
「それは無理だな」
即答される殿下に、ほんの少し首をかしげました。
「そなたが望むのは『自由』であろう?」
バレていましたか。ヤアを富ませ、そこでのんびりと生きるのが私の夢ですわ。
忙しい皇太子妃などくそくらえです。あら、ワタクシとしたことが。
「そこまでお解りなら、私の思うとおりにさせてくださいませ」
「ふむ。そうだな。そなたが思い描くヤアは面白い。我も見てみたいのであったぞ」
あら、すんなりと引かれますのね。なぜかしら、ちょっと残念な気も……。
そう思っているうちに、曲が終わりましたわ。
殿下に軽くカーテシーをしたら、グイと抱き寄せられて頬にキスをされました。
優雅にステップを踏み、私をリードするオトフリート殿下がこんな黒い声を出していると誰が想像するでしょう。
まぁ、オトフリート殿下のこと。クプスリスト殿下と違い、私のことも調べあげているのでしょう。
実は私が望んだヤアは、元々おばあさまのもの。
今もそこで前公爵のおじいさまと仲良く暮らしておられるおばあさまは、先々代スピース王家の長子で、王位継承権第一位の王女でした。
前のスピース国王の姉になります。
それが、留学生のおじいさまと恋に落ち、全てを捨てておじいさまのところへお嫁にきたのです。
小さい頃からおばあさまが大好きだった私は、スピース語を知らずと聞き覚えたのですわ。
なにせ、おばあさまと訪れるヤアは、スピース国の中に離れ小島のように浮かんでいます。
ハーヴィ国公爵家領地となっても、スピース語が日常的に使われているのですわ。
元々、おばあさまのおばあさま、元王妃様の御料地だったとか。
建前としては、スピース国の食料増産研究を成功させた、おじいさまへの勲功褒賞になっていますが、実際はおばあさまの里帰り場所を与えたかったようです。
ヤアは意外とややこしい土地ですの。
おまけに王位継承権を捨てたのはおばあさまだけだからと、お父様にも、その子どもの私たちにも末席のスピース国王位継承権がありますの。まぁ、ないにも等しいのと、面倒を避けるために秘しておりますが。
気にかけてくださるスピース国のためにも、私はヤアを富ませたいのですわ。
「この賭け、我は勝っても負けても良いと言うたであろう?」
オトフリート殿下が、またニヤリと笑います。
遠くから見ると微笑んでいるように見えるでしょうね。
でも、私は黒さが分かるので警戒します。
「そうですね。殿下が私の一番欲しいものを下されたら考えますわ」
「それは無理だな」
即答される殿下に、ほんの少し首をかしげました。
「そなたが望むのは『自由』であろう?」
バレていましたか。ヤアを富ませ、そこでのんびりと生きるのが私の夢ですわ。
忙しい皇太子妃などくそくらえです。あら、ワタクシとしたことが。
「そこまでお解りなら、私の思うとおりにさせてくださいませ」
「ふむ。そうだな。そなたが思い描くヤアは面白い。我も見てみたいのであったぞ」
あら、すんなりと引かれますのね。なぜかしら、ちょっと残念な気も……。
そう思っているうちに、曲が終わりましたわ。
殿下に軽くカーテシーをしたら、グイと抱き寄せられて頬にキスをされました。
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