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あなたに懐かれるとは…

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「ダメですっ!!」

 えっ? 誰? 
 今いい感じでまとまりかけてたのにダメって……
 クラウディア様?

「お姉さまが皇都を離れるなど!」

 お姉さま? 誰のこと?

「お姉さまっ、クラウディアが浅はかでしたっ!」

 クラウディア様が、私にすがるように足許にひざまづきます。

 ちょっと待って~、ちょっと待って~

 変な音楽が頭のなかで流れますわ。

「お姉さまのお心も知らず、辛いからと逃げてはクプス様に、つい愚痴を言ってしまいました」

 うん、そこは「クプスリスト殿下」で、最後は「申し上げました」よ?
 まだ言葉遣いは危ないわね。

「私、クプス様に相応しい女性になりたいのです!」

 あら、もう悔い改めてしまったの? ちょっと面白くないわ。
 恋する乙女は一途ね。まぁ、皇家へ嫁ぐ覚悟が出来たなら、私も安心して去れるというものです。
 クラウディア様に、にっこり微笑んで頷きましたわ。応援の意味を込めて。

「だから、お姉さま、私が卒業するまで、私の側にいて私を鍛えてくださいませ」

 ふぇ?
 クラウディア様の勢い込んだ言葉に、変な声が出そうになりましたわ。もちろん、堪えましたけれど。

「クラウディア様? お志は素晴らしいと思いますわ」

 クラウディア様が顔を輝かせて私を見上げます。

「けれど、お聞きになったでしょう? 私は賭けに勝ったので領地に……」

「お姉さまはクラウディアをお見捨てになるの?」

 上目遣いに薄紫の目をウルウルさせています。
 出ました。必殺技。
 クラウディア様は、自覚してませんが。
 そう、これは彼女の素なのです。だから悪意はないのです。
 ただ、それがどういう影響があるかなどは考えない。
 子どもと同じです。溜め息が出ます。

 オトフリート皇太子殿下は、クツクツ笑いを堪えているし、クプスリスト殿下は、ポカンとクラウディア様を見つめています。

 そういうとこよ!
 何とかしてほしいのは!

 私はグッと胸を張り、背筋を伸ばしました。

「クラウディア様? 私はあなたの姉ではありませんが……」

「お姉さま!」

 聴いてる? 人の話?
 ほら、皇太子殿下が笑いを堪えきれなくなって横を向かれましたわ。

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