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わたくしのざまぁは何処へ?

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 そう。実はこの賭けはオトフリート皇太子殿下と私の2人で始めたのです。いつの間にか、それぞれに応援団が着いて大事になりましたけれど。

「ただ、なんと言うかクラウディア嬢は純粋でな。毎回ダンスを踊っただけだ」

 オトフリート殿下が苦笑しています。

 実はダンスをしながら甘い言葉を囁いたらしいのですが、その度に肩透かしを喰らったとか。
 『可愛らしい唇だ。食べてしまいたい』と言えば、『大変! お腹が空いていらっしゃるのですね?』と料理コーナーに引きずられていったりとか……。
 まぁ、根は悪い人ではないんでしょう。クラウディア様も。

「兄上?」
「なんだ?」
「兄上は、クラウディアに妃としての教育を願いながら、私から引き離そうとしたのですか? それは矛盾していませんか?」

 あら、よく気づいたわね。
 そうなのよね。バカじゃないのよ。クプスリスト殿下も。
 落ち着いて考えられれば。
 ただ、すぐに忘れるのとすぐに考えるのを止めるのよね。
 お陰でこちらは助かったけど。

「クプスリスト、正直に言おう。我の希望はそなたとロランダが婚姻し、皇帝陛下や我を支えてくれることだ。まつりごとを安定させるためにも。ロランダはそのための教育、いや、訓練を行ってきたからな」

「……」

「皇太子としての希望はそうだが、兄としての希望はそなたが思う人と結ばれることだ。だからロランダに頼んだのだよ。
 まぁ、第一希望が危ういときは、第二希望をより良い状態に持っていくのは、戦略の基本だ。覚えておけ」

「第二希望を受け入れてくださると」

「おいおい、私は皇太子だ。そなたたちの婚姻にはなんの力も持たぬ。
 クラウディア嬢と婚姻したいのなら、まず、ロランダとオフィキス公爵に詫び、そのあと父上と母上に許しを乞うことだな。
 まぁ、そのときに口添えぐらいはしてやる」

 相変わらずのツンデレでいらっしゃいます。クプスリスト殿下が兄殿下を慕うのも、いざというときは味方になってくれるからでしょう。
 
 あら、クプスリスト様が私の方を向きましたわ。
 え、ちょ、ちょっと…

「ロランダ、すまない」

 ピタリと礼儀正しい礼をなさいましたわ。クラウディア様も後ろで頭を下げていらっしゃいます。
 あれ? なんかおかしいですわ?
 私、クプスリスト殿下の泣き顔を見られるはずではなかったかしら?

 頭を上げたクプスリスト殿下は、お父様に近づいて行きます。

「オフィキス公爵、申し訳ないが、ロランダ嬢と私との婚約を白紙にしていただけないだろうか」

 クプスリスト殿下は、ここでもピシリと頭を下げます。
 さすが皇族ですわ。頭を下げる形も綺麗です。

「解りました。ただし、殿下のためではありません。ロランダのためです」

 クプスリスト殿下が、もう一段頭を下げましたわ。
 意外と常識は身に付けているようで、ちょっと安心します。

「頭をおあげください、殿下。実は私も賭けに噛まされておりましてな。ロランダには婚約破棄されたら領地を分けると約束したのです。私も大損です」

「すまない」

「けれども領地経営がロランダの望みなのでしょう。娘が幸せならば良いのです」

 お父様、ありがとうございます。私、ヤアの土地をずっと豊かにしてみてますわ。

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