5 / 14
わたくしのざまぁは何処へ?
しおりを挟む
そう。実はこの賭けはオトフリート皇太子殿下と私の2人で始めたのです。いつの間にか、それぞれに応援団が着いて大事になりましたけれど。
「ただ、なんと言うかクラウディア嬢は純粋でな。毎回ダンスを踊っただけだ」
オトフリート殿下が苦笑しています。
実はダンスをしながら甘い言葉を囁いたらしいのですが、その度に肩透かしを喰らったとか。
『可愛らしい唇だ。食べてしまいたい』と言えば、『大変! お腹が空いていらっしゃるのですね?』と料理コーナーに引きずられていったりとか……。
まぁ、根は悪い人ではないんでしょう。クラウディア様も。
「兄上?」
「なんだ?」
「兄上は、クラウディアに妃としての教育を願いながら、私から引き離そうとしたのですか? それは矛盾していませんか?」
あら、よく気づいたわね。
そうなのよね。バカじゃないのよ。クプスリスト殿下も。
落ち着いて考えられれば。
ただ、すぐに忘れるのとすぐに考えるのを止めるのよね。
お陰でこちらは助かったけど。
「クプスリスト、正直に言おう。我の希望はそなたとロランダが婚姻し、皇帝陛下や我を支えてくれることだ。政を安定させるためにも。ロランダはそのための教育、いや、訓練を行ってきたからな」
「……」
「皇太子としての希望はそうだが、兄としての希望はそなたが思う人と結ばれることだ。だからロランダに頼んだのだよ。
まぁ、第一希望が危ういときは、第二希望をより良い状態に持っていくのは、戦略の基本だ。覚えておけ」
「第二希望を受け入れてくださると」
「おいおい、私は皇太子だ。そなたたちの婚姻にはなんの力も持たぬ。
クラウディア嬢と婚姻したいのなら、まず、ロランダとオフィキス公爵に詫び、そのあと父上と母上に許しを乞うことだな。
まぁ、そのときに口添えぐらいはしてやる」
相変わらずのツンデレでいらっしゃいます。クプスリスト殿下が兄殿下を慕うのも、いざというときは味方になってくれるからでしょう。
あら、クプスリスト様が私の方を向きましたわ。
え、ちょ、ちょっと…
「ロランダ、すまない」
ピタリと礼儀正しい礼をなさいましたわ。クラウディア様も後ろで頭を下げていらっしゃいます。
あれ? なんかおかしいですわ?
私、クプスリスト殿下の泣き顔を見られるはずではなかったかしら?
頭を上げたクプスリスト殿下は、お父様に近づいて行きます。
「オフィキス公爵、申し訳ないが、ロランダ嬢と私との婚約を白紙にしていただけないだろうか」
クプスリスト殿下は、ここでもピシリと頭を下げます。
さすが皇族ですわ。頭を下げる形も綺麗です。
「解りました。ただし、殿下のためではありません。ロランダのためです」
クプスリスト殿下が、もう一段頭を下げましたわ。
意外と常識は身に付けているようで、ちょっと安心します。
「頭をおあげください、殿下。実は私も賭けに噛まされておりましてな。ロランダには婚約破棄されたら領地を分けると約束したのです。私も大損です」
「すまない」
「けれども領地経営がロランダの望みなのでしょう。娘が幸せならば良いのです」
お父様、ありがとうございます。私、ヤアの土地をずっと豊かにしてみてますわ。
「ただ、なんと言うかクラウディア嬢は純粋でな。毎回ダンスを踊っただけだ」
オトフリート殿下が苦笑しています。
実はダンスをしながら甘い言葉を囁いたらしいのですが、その度に肩透かしを喰らったとか。
『可愛らしい唇だ。食べてしまいたい』と言えば、『大変! お腹が空いていらっしゃるのですね?』と料理コーナーに引きずられていったりとか……。
まぁ、根は悪い人ではないんでしょう。クラウディア様も。
「兄上?」
「なんだ?」
「兄上は、クラウディアに妃としての教育を願いながら、私から引き離そうとしたのですか? それは矛盾していませんか?」
あら、よく気づいたわね。
そうなのよね。バカじゃないのよ。クプスリスト殿下も。
落ち着いて考えられれば。
ただ、すぐに忘れるのとすぐに考えるのを止めるのよね。
お陰でこちらは助かったけど。
「クプスリスト、正直に言おう。我の希望はそなたとロランダが婚姻し、皇帝陛下や我を支えてくれることだ。政を安定させるためにも。ロランダはそのための教育、いや、訓練を行ってきたからな」
「……」
「皇太子としての希望はそうだが、兄としての希望はそなたが思う人と結ばれることだ。だからロランダに頼んだのだよ。
まぁ、第一希望が危ういときは、第二希望をより良い状態に持っていくのは、戦略の基本だ。覚えておけ」
「第二希望を受け入れてくださると」
「おいおい、私は皇太子だ。そなたたちの婚姻にはなんの力も持たぬ。
クラウディア嬢と婚姻したいのなら、まず、ロランダとオフィキス公爵に詫び、そのあと父上と母上に許しを乞うことだな。
まぁ、そのときに口添えぐらいはしてやる」
相変わらずのツンデレでいらっしゃいます。クプスリスト殿下が兄殿下を慕うのも、いざというときは味方になってくれるからでしょう。
あら、クプスリスト様が私の方を向きましたわ。
え、ちょ、ちょっと…
「ロランダ、すまない」
ピタリと礼儀正しい礼をなさいましたわ。クラウディア様も後ろで頭を下げていらっしゃいます。
あれ? なんかおかしいですわ?
私、クプスリスト殿下の泣き顔を見られるはずではなかったかしら?
頭を上げたクプスリスト殿下は、お父様に近づいて行きます。
「オフィキス公爵、申し訳ないが、ロランダ嬢と私との婚約を白紙にしていただけないだろうか」
クプスリスト殿下は、ここでもピシリと頭を下げます。
さすが皇族ですわ。頭を下げる形も綺麗です。
「解りました。ただし、殿下のためではありません。ロランダのためです」
クプスリスト殿下が、もう一段頭を下げましたわ。
意外と常識は身に付けているようで、ちょっと安心します。
「頭をおあげください、殿下。実は私も賭けに噛まされておりましてな。ロランダには婚約破棄されたら領地を分けると約束したのです。私も大損です」
「すまない」
「けれども領地経営がロランダの望みなのでしょう。娘が幸せならば良いのです」
お父様、ありがとうございます。私、ヤアの土地をずっと豊かにしてみてますわ。
0
お気に入りに追加
495
あなたにおすすめの小説
守護神の加護がもらえなかったので追放されたけど、実は寵愛持ちでした。神様が付いて来たけど、私にはどうにも出来ません。どうか皆様お幸せに!
蒼衣翼
恋愛
千璃(センリ)は、古い巫女の家系の娘で、国の守護神と共に生きる運命を言い聞かされて育った。
しかし、本来なら加護を授かるはずの十四の誕生日に、千璃には加護の兆候が現れず、一族から追放されてしまう。
だがそれは、千璃が幼い頃、そうとは知らぬまま、神の寵愛を約束されていたからだった。
国から追放された千璃に、守護神フォスフォラスは求愛し、へスペラスと改名した後に、人化して共に旅立つことに。
一方、守護神の消えた故国は、全ての加護を失い。衰退の一途を辿ることになるのだった。
※カクヨムさまにも投稿しています
シナリオではヒロインと第一王子が引っ付くことになっているので、脇役の私はーー。
ちょこ
恋愛
婚約者はヒロインさんであるアリスを溺愛しているようです。
そもそもなぜゲームの悪役令嬢である私を婚約破棄したかというと、その原因はヒロインさんにあるようです。
詳しくは知りませんが、殿下たちの会話を盗み聞きした結果、そのように解釈できました。
では私がヒロインさんへ嫌がらせをしなければいいのではないでしょうか? ですが、彼女は事あるごとに私に噛みついてきています。
出会いがしらに「ちょっと顔がいいからって調子に乗るな」と怒鳴ったり、私への悪口を書いた紙をばら撒いていたりします。
当然ながらすべて回収、処分しております。
しかも彼女は自分が嫌がらせを受けていると吹聴して回っているようで、私への悪評はとどまるところを知りません。
まったく……困ったものですわ。
「アリス様っ」
私が登校していると、ヒロインさんが駆け寄ってきます。
「おはようございます」と私は挨拶をしましたが、彼女は私に恨みがましい視線を向けます。
「何の用ですか?」
「あんたって本当に性格悪いのね」
「意味が分かりませんわ」
何を根拠に私が性格が悪いと言っているのでしょうか。
「あんた、殿下たちに色目を使っているって本当なの?」
「色目も何も、私は王太子妃を目指しています。王太子殿下と親しくなるのは当然のことですわ」
「そんなものは愛じゃないわ! 男の愛っていうのはね、もっと情熱的なものなのよ!」
彼女の言葉に対して私は心の底から思います。
……何を言っているのでしょう?
「それはあなたの妄想でしょう?」
「違うわ! 本当はあんただって分かっているんでしょ!? 好きな人に振り向いて欲しくて意地悪をする。それが女の子なの! それを愛っていうのよ!」
「違いますわ」
「っ……!」
私は彼女を見つめます。
「あなたは人を愛するという言葉の意味をはき違えていますわ」
「……違うもん……あたしは間違ってないもん……」
ヒロインさんは涙を流し、走り去っていきました。
まったく……面倒な人だこと。
そんな面倒な人とは反対に、もう一人の攻略対象であるフレッド殿下は私にとても優しくしてくれます。
今日も学園への通学路を歩いていると、フレッド殿下が私を見つけて駆け寄ってきます。
「おはようアリス」
「おはようございます殿下」
フレッド殿下は私に手を伸ばします。
「学園までエスコートするよ」
「ありがとうございますわ」
私は彼の手を取り歩き出します。
こんな普通の女の子の日常を疑似体験できるなんて夢にも思いませんでしたわ。
このままずっと続けばいいのですが……どうやらそうはいかないみたいですわ。
私はある女子生徒を見ました。
彼女は私と目が合うと、逃げるように走り去ってしまいました。
婚約破棄させようと王子の婚約者を罠に嵌めるのに失敗した男爵令嬢のその後
春野こもも
恋愛
王子に婚約破棄をしてもらおうと、婚約者の侯爵令嬢を罠に嵌めようとして失敗し、実家から勘当されたうえに追放された、とある男爵令嬢のその後のお話です。
『婚約破棄でみんな幸せ!~嫌われ令嬢の円満婚約解消術~』(全2話)の男爵令嬢のその後のお話……かもしれません。ですがこの短編のみでお読みいただいてもまったく問題ありません。
コメディ色が強いので、上記短編の世界観を壊したくない方はご覧にならないほうが賢明です(>_<)
なろうラジオ大賞用に1000文字以内のルールで執筆したものです。
ふわりとお読みください。
宮廷外交官の天才令嬢、王子に愛想をつかれて婚約破棄されたあげく、実家まで追放されてケダモノ男爵に読み書きを教えることになりました
悠木真帆
恋愛
子爵令嬢のシャルティナ・ルーリックは宮廷外交官として日々忙しくはたらく毎日。
クールな見た目と頭の回転の速さからついたあだ名は氷の令嬢。
婚約者である王子カイル・ドルトラードを長らくほったらかしてしまうほど仕事に没頭していた。
そんなある日の夜会でシャルティナは王子から婚約破棄を宣言されてしまう。
そしてそのとなりには見知らぬ令嬢が⋯⋯
王子の婚約者ではなくなった途端、シャルティナは宮廷外交官の立場まで失い、見かねた父の強引な勧めで冒険者あがりの男爵のところへ行くことになる。
シャルティナは宮廷外交官の実績を活かして辣腕を振るおうと張り切るが、男爵から命じられた任務は男爵に文字の読み書きを教えることだった⋯⋯
モブ転生とはこんなもの
詩森さよ(さよ吉)
恋愛
あたしはナナ。貧乏伯爵令嬢で転生者です。
乙女ゲームのプロローグで死んじゃうモブに転生したけど、奇跡的に助かったおかげで現在元気で幸せです。
今ゲームのラスト近くの婚約破棄の現場にいるんだけど、なんだか様子がおかしいの。
いったいどうしたらいいのかしら……。
現在筆者の時間的かつ体力的に感想などを受け付けない設定にしております。
どうぞよろしくお願いいたします。
他サイトでも公開しています。
手のひら返しが凄すぎて引くんですけど
マルローネ
恋愛
男爵令嬢のエリナは侯爵令息のクラウドに婚約破棄をされてしまった。
地位が低すぎるというのがその理由だったのだ。
悲しみに暮れたエリナは新しい恋に生きることを誓った。
新しい相手も見つかった時、侯爵令息のクラウドが急に手のひらを返し始める。
その理由はエリナの父親の地位が急に上がったのが原因だったのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる