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第一部
10.ヴォルフガング家と精霊
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ミリアさんが昼食の準備ができたと呼びに来てくれたので、移動したらヨハンさんも今日はお店を閉店にして、二階に上がって来てました。
「コンラート様、奥様よりお見合い写真を預かっております」
「ヨハン、何も今渡さなくても…」
テーブルの上に置かれた束は、20cmくらいありました。流石、公爵家のお坊ちゃま。
「奥様?」
「はい。コンラート坊ちゃまの母君です」
「ヨハン、坊ちゃまはよせ」
「コンラート坊ちゃまも、ユリウス坊ちゃまも大きくなられましたが、若奥様をお迎えになるまでは坊ちゃまです」
笑顔で言い切るヨハンさんは、二人のお坊ちゃまを黙らせると給仕についた。
「ヨハンは公爵家の執事の息子なんですよ。コンラートの父が嫡男で次期公爵。うちの父は次男で、ヨハンは分家の我が家に仕えています」
「じゃあ、銀の月は?」
「ユーリ様のお仕事のお手伝いをするために、店長として名を置いておりますが、オーナーはユリウス坊ちゃまご自身で経営されております」
「あれ? じゃあ、ミリアさんも?」
「ミリアリアはヨハンの娘で、ユーリの乳母兄妹なんだ。ユリウスの侍女でもある」
「ミリアリアさん」
「ミリアのままで結構ですよ。ハルカお嬢様」
なるほど。
メイドさんの服が似合っていたのはそれでか。
実際には侍女さんだったけど(メイドと侍女は役割が違います)
「ミリアリアは、おばあ様のお気に入りでね」
「お坊ちゃま方のおばあ様は、大奥様とお呼びしています。そうそう、大奥様からもこちらをお預かり致しました」
ドン、と置かれたのは何処から出したのか… 同じ量のお見合い写真の束でした。
コンラート様(二十三歳)は撃沈していました。お年頃だもんね!
豪華なランチコースを食べてから、私の今後についてのお話し合いに。
先程判明した私の『種族属性について』が一番の問題だそうです。
精霊とか言われても自覚ないし。
「普通にご飯食べていましたけど、精霊って人間と変わらないんですね?」
「そこなんだよね~」
「え?」
「精霊は普段は人に接触しないんだ。自然豊かな森とかに行くと下級精霊は光って見える事はあるが、中級精霊は警戒心も強いし、魔導騎士や魔導師で実力のある者なら姿が視える事もある。だが、一般的に何を魔力の源にしているか判明してないし、上級精霊に至っては殆ど情報が無いに等しい。ハルカの種族属性が精霊だと私は見ることができたから、中級以上の精霊ではあると思う。ヨハンやミリア、洋服店の双子にも姿がハッキリ視えているし、上級精霊なのではないかと私は思っている」
ユーリさんの考察に、へぇ~っと聞き入っていたけど、最後のところで思考が止まる。
「私が上級精霊?」
「あちらの世界の記憶が途切れていて、こちらの世界の情報が全く無い状態を考えると、こちらに召喚された可能性もある」
「召喚…」
「上級精霊よりさらに高位の聖霊が存在すると、帝国の国教会の聖典には記されている。聖霊の導きか、国教会が何かしたのかは分からないが、可能性は高いと推測している」
「…何だか、とんでもなく大きな問題に巻き込まれてます??」
眉間に皺を寄せ、首を傾げると、ユーリさんに笑顔で頭を撫でられる。
「まぁ、心配せずともコンラートに任せておけば問題無い」
「俺っ!?」
「何の為の権力だよ。公爵家嫡男であり、帝国魔導騎士団の副隊長の地位を存分に発揮してくれ」
「お前も似たようなもんだろ!?」
「私は家を出ているし、魔導師とは言っても、半分以上隠遁生活しているようなものだし、情報も副隊長の方が集めやすいだろ?」
隠遁生活…そう言えばユーリさんは何で、市井で生活しているのだろう?
分家とは言え公爵家の人だし、最年少で魔導師になった天才なんだよね?
「国教会なんて面倒くさい相手に、副隊長ごときが探れる訳ないだろ!?」
「腐った教皇どもを処分する良い機会じゃないか」
焦って逃れようとするコンラート様に、ユーリさんが平然と切り返す。
え? 教皇様たち? 何ですか? 腐っているんですか? 陰謀説ですか?
何だか、大事になりそうです。
「コンラート様、奥様よりお見合い写真を預かっております」
「ヨハン、何も今渡さなくても…」
テーブルの上に置かれた束は、20cmくらいありました。流石、公爵家のお坊ちゃま。
「奥様?」
「はい。コンラート坊ちゃまの母君です」
「ヨハン、坊ちゃまはよせ」
「コンラート坊ちゃまも、ユリウス坊ちゃまも大きくなられましたが、若奥様をお迎えになるまでは坊ちゃまです」
笑顔で言い切るヨハンさんは、二人のお坊ちゃまを黙らせると給仕についた。
「ヨハンは公爵家の執事の息子なんですよ。コンラートの父が嫡男で次期公爵。うちの父は次男で、ヨハンは分家の我が家に仕えています」
「じゃあ、銀の月は?」
「ユーリ様のお仕事のお手伝いをするために、店長として名を置いておりますが、オーナーはユリウス坊ちゃまご自身で経営されております」
「あれ? じゃあ、ミリアさんも?」
「ミリアリアはヨハンの娘で、ユーリの乳母兄妹なんだ。ユリウスの侍女でもある」
「ミリアリアさん」
「ミリアのままで結構ですよ。ハルカお嬢様」
なるほど。
メイドさんの服が似合っていたのはそれでか。
実際には侍女さんだったけど(メイドと侍女は役割が違います)
「ミリアリアは、おばあ様のお気に入りでね」
「お坊ちゃま方のおばあ様は、大奥様とお呼びしています。そうそう、大奥様からもこちらをお預かり致しました」
ドン、と置かれたのは何処から出したのか… 同じ量のお見合い写真の束でした。
コンラート様(二十三歳)は撃沈していました。お年頃だもんね!
豪華なランチコースを食べてから、私の今後についてのお話し合いに。
先程判明した私の『種族属性について』が一番の問題だそうです。
精霊とか言われても自覚ないし。
「普通にご飯食べていましたけど、精霊って人間と変わらないんですね?」
「そこなんだよね~」
「え?」
「精霊は普段は人に接触しないんだ。自然豊かな森とかに行くと下級精霊は光って見える事はあるが、中級精霊は警戒心も強いし、魔導騎士や魔導師で実力のある者なら姿が視える事もある。だが、一般的に何を魔力の源にしているか判明してないし、上級精霊に至っては殆ど情報が無いに等しい。ハルカの種族属性が精霊だと私は見ることができたから、中級以上の精霊ではあると思う。ヨハンやミリア、洋服店の双子にも姿がハッキリ視えているし、上級精霊なのではないかと私は思っている」
ユーリさんの考察に、へぇ~っと聞き入っていたけど、最後のところで思考が止まる。
「私が上級精霊?」
「あちらの世界の記憶が途切れていて、こちらの世界の情報が全く無い状態を考えると、こちらに召喚された可能性もある」
「召喚…」
「上級精霊よりさらに高位の聖霊が存在すると、帝国の国教会の聖典には記されている。聖霊の導きか、国教会が何かしたのかは分からないが、可能性は高いと推測している」
「…何だか、とんでもなく大きな問題に巻き込まれてます??」
眉間に皺を寄せ、首を傾げると、ユーリさんに笑顔で頭を撫でられる。
「まぁ、心配せずともコンラートに任せておけば問題無い」
「俺っ!?」
「何の為の権力だよ。公爵家嫡男であり、帝国魔導騎士団の副隊長の地位を存分に発揮してくれ」
「お前も似たようなもんだろ!?」
「私は家を出ているし、魔導師とは言っても、半分以上隠遁生活しているようなものだし、情報も副隊長の方が集めやすいだろ?」
隠遁生活…そう言えばユーリさんは何で、市井で生活しているのだろう?
分家とは言え公爵家の人だし、最年少で魔導師になった天才なんだよね?
「国教会なんて面倒くさい相手に、副隊長ごときが探れる訳ないだろ!?」
「腐った教皇どもを処分する良い機会じゃないか」
焦って逃れようとするコンラート様に、ユーリさんが平然と切り返す。
え? 教皇様たち? 何ですか? 腐っているんですか? 陰謀説ですか?
何だか、大事になりそうです。
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