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第一部
2.目覚めてびっくり!?
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ホワイトアウトした視界が徐々におさまり目を開けると、見覚えのない天井が目に入る。
(ここ、どこ?)
窓から差し込む光が眩しく、手を翳す。
「え?」
目の視界に入った手は小さい。
両手を伸ばして顔を触ると、もちもちした弾力のある幼子のようだ。
徹夜明けのアラサーの肌とは全く別物であるし、髪を触ると柔らかく明るいローズブラウンの長い髪が手からこぼれ落ちていく。
三十歳を過ぎてストレスのせいで睡眠障害を抱えた私の肌はカサカサだし、黒髪を自宅で染めても脱色をせずに染めるからダークブラウンにしかならないのに。
(あれ? 私、何してたんだっけ?)
月城 陽華。三十四歳。
専門学校を卒業してから正社員にはなれず、バイトやパートでかつかつの生活を送り、やっとやりたい事が見つかって数年前からコツコツとスキルアップをはかっていた… 筈なんだけど?
とりあえず現状把握するために、部屋の中に視線を巡らし、半身を起こす。
八畳ぐらいの大きな部屋に大きな机と壁一面の本棚、何が入っているのか分からないガラス棚、アンティーク調の家具でまとめられた洋館のようだ。
私が寝転んでいたベッドは天蓋カーテンつきである。何処のお姫様ですか?
「起きたか」
ガチャと扉が開くと、長い黒髪に蒼い眼、某怪盗がつけているような片眼鏡をつけ、白衣を着た背の高い男性が入って来た。
「怪我は無いようだが、何処か痛いところは無いか?」
ベッドに近付いて来ると、私の額に手をあててくる。
目を瞬かせ、その触れた温かい手に鼓動が早くなる。
「喋れないのか?」
無表情だった顔の眉間に皺を寄せ、顔を近付けようとするので、慌てて首を振り答える。
「い、いえ! 喋れますけど、あの…」
「私はユーリ。君は森で倒れていて、衰弱していたので連れて来た」
両手で布団を引き寄せ口元まで隠し怯えていると思ったのか、自分の名を名乗り、どうして私がここに居るのか説明してくれた。
布団を持っていた両手を降し、助けてくれたユーリさんに名乗る。
「陽華です。助けてくださり、ありがとうございます!」
「ハルカ… この辺りではあまり聞かない名だな。親はどうした? 逸れたのか?」
「…気付いたら、ここにいたので分かりません」
話す言葉は通じているけれど、日本人ならよくある名前だし、森に行った覚えも無いので、眉を下げて答えると、ユーリさんは顎に手をあて何か考えている。
「とりあえず、しばらくはここに居なさい。ちょうど昼だ。何か食べれそうか?」
「ありがとうございます。ユーリさんにお任せしてもいいですか?」
キョトンとした瞳で固まるユーリさんに首を傾げる。
「ユーリさん?」
「…いや、何でもない。分かった、買ってきた果実とスープとパンぐらいしかないが、大丈夫か?」
「はい! いただきます!」
元気よく返事をして、ベッドから降りようとしてハッとする。
「どうした?」
「あの…靴は…」
ユーリさんが履いているのは中履きやスリッパではなく、明らかに革靴でピカピカと光っているが使い込まれた上質な高級靴だとわかる。
裸足で降りて良いものか考えあぐねていると、ユーリさんに抱き上げられ片腕に乗せられた。
「ユーリさん!?」
「靴も服も後で買いに行くから、とりあえずこれで我慢してくれ」
「何から何まですみません… 重くないですか?」
「ゴブリンより軽いから心配するな」
「ゴブリン!?」
どうやら、ここはRPGとかファンタジーの世界であるらしい。
(ここ、どこ?)
窓から差し込む光が眩しく、手を翳す。
「え?」
目の視界に入った手は小さい。
両手を伸ばして顔を触ると、もちもちした弾力のある幼子のようだ。
徹夜明けのアラサーの肌とは全く別物であるし、髪を触ると柔らかく明るいローズブラウンの長い髪が手からこぼれ落ちていく。
三十歳を過ぎてストレスのせいで睡眠障害を抱えた私の肌はカサカサだし、黒髪を自宅で染めても脱色をせずに染めるからダークブラウンにしかならないのに。
(あれ? 私、何してたんだっけ?)
月城 陽華。三十四歳。
専門学校を卒業してから正社員にはなれず、バイトやパートでかつかつの生活を送り、やっとやりたい事が見つかって数年前からコツコツとスキルアップをはかっていた… 筈なんだけど?
とりあえず現状把握するために、部屋の中に視線を巡らし、半身を起こす。
八畳ぐらいの大きな部屋に大きな机と壁一面の本棚、何が入っているのか分からないガラス棚、アンティーク調の家具でまとめられた洋館のようだ。
私が寝転んでいたベッドは天蓋カーテンつきである。何処のお姫様ですか?
「起きたか」
ガチャと扉が開くと、長い黒髪に蒼い眼、某怪盗がつけているような片眼鏡をつけ、白衣を着た背の高い男性が入って来た。
「怪我は無いようだが、何処か痛いところは無いか?」
ベッドに近付いて来ると、私の額に手をあててくる。
目を瞬かせ、その触れた温かい手に鼓動が早くなる。
「喋れないのか?」
無表情だった顔の眉間に皺を寄せ、顔を近付けようとするので、慌てて首を振り答える。
「い、いえ! 喋れますけど、あの…」
「私はユーリ。君は森で倒れていて、衰弱していたので連れて来た」
両手で布団を引き寄せ口元まで隠し怯えていると思ったのか、自分の名を名乗り、どうして私がここに居るのか説明してくれた。
布団を持っていた両手を降し、助けてくれたユーリさんに名乗る。
「陽華です。助けてくださり、ありがとうございます!」
「ハルカ… この辺りではあまり聞かない名だな。親はどうした? 逸れたのか?」
「…気付いたら、ここにいたので分かりません」
話す言葉は通じているけれど、日本人ならよくある名前だし、森に行った覚えも無いので、眉を下げて答えると、ユーリさんは顎に手をあて何か考えている。
「とりあえず、しばらくはここに居なさい。ちょうど昼だ。何か食べれそうか?」
「ありがとうございます。ユーリさんにお任せしてもいいですか?」
キョトンとした瞳で固まるユーリさんに首を傾げる。
「ユーリさん?」
「…いや、何でもない。分かった、買ってきた果実とスープとパンぐらいしかないが、大丈夫か?」
「はい! いただきます!」
元気よく返事をして、ベッドから降りようとしてハッとする。
「どうした?」
「あの…靴は…」
ユーリさんが履いているのは中履きやスリッパではなく、明らかに革靴でピカピカと光っているが使い込まれた上質な高級靴だとわかる。
裸足で降りて良いものか考えあぐねていると、ユーリさんに抱き上げられ片腕に乗せられた。
「ユーリさん!?」
「靴も服も後で買いに行くから、とりあえずこれで我慢してくれ」
「何から何まですみません… 重くないですか?」
「ゴブリンより軽いから心配するな」
「ゴブリン!?」
どうやら、ここはRPGとかファンタジーの世界であるらしい。
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