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事故死(笑)
しおりを挟む事故死(笑)
カメラ大好き、光一は、買って来たばかりの顕微鏡を机に取り出し、開封。
レンズを取り付け、卓上ライトをセットして、近所の池の水を一滴たらして見る。
今日は顕微鏡写真を撮ろうと準備中。
「とりあえず見える事は確認できた。撮影用のアダプター・・・は上の棚か」
本棚の上にある、(フィルター&アダプター他)と書かれた箱を背伸びしながら取ろうとしたとき、
(旧機材多数)と書かれたアルミバッグを引っ掛けて落ちそうになる。
「おっと、まずい」
アルミバッグを反射的に押さえたら(フィルター&アダプター他)の方が落下し足に当たる。
「痛ってて」
小指に激痛が走り、蹲って足を手で押さえたがバランスを崩した体は、本棚に肩が当たり少し揺れたせいで
安定しないアルミバッグを落下させ、後頭部を直撃、そして意識を失う。
********************************************************
直立のまま、ぼーっとしていると、何やら目の前に人影が見える。
周りはなんだか霧の中みたいで遠景が確認できない白い空間。
「夢の中?」
ため息交じりに口に出る。
目の前にいるCGみたく浮かんでいるような透けて見える様な、光ってる様な女性が話す。
『夢ではありません、貴方は自宅で後頭部を打撲して亡くなりました』
状況説明しているらしいが、何だこいつは怪しすぎるぞ!ん、こいつの言う事が本当なら、後頭部を銀箱の落下で打撲して死んだのかよ!
まあ、とりあえず話しかけてみる。
「ええと・・・死亡したと伺いましたので、これから地獄送りということですか?閻魔様が女性らしく見えるのは予想外です。ごつい鬼の顔をした巨大なおっさんだと思い込んでました」
『私は閻魔様ではなく女神キラミスと申します、地獄送りがご希望ですか?』
顔の前で手を振りながら、
「いやいや、さすがに地獄送りより天国行きがよさそうな気がしますが・・・コレはもしや異世界に転生して勇者になり俺TUEEEで魔王を倒して英雄になり、美人の王女と結婚してさらにハーレムを作ってウハウハに暮らすのか?」
『ご希望でしたら、それなりの祝福を与えてご希望に近い事が成せるよう取り計らいましょう』
光一は呆れ顔で両手の手のひらを上に向け
「それなり、ですかケチ臭いですね、ここはドーンと山盛りください」
『それは欲張り過ぎかと判断します。そもそもこちらに送り込まれた理由は、
あなたの過ごした世界の輪廻から魂が外れましたので、ここに落ちて来たのです』
女神は上を指差しながら
『おそらく元の世界で貴方は不要と判断されたのでしょう』
光一は自分の顔に人差し指を向け
「自分はゴミ扱いですか?ひどいなあ・・・でもそれだとあなたはゴミ捨て場の管理を行う女神様ですか、職業や仕事に貴賎は無いと思いたいのですが、ゴミ女神とは・・・」
『勝手に略さないでください、ゴミ女神って何ですか!私は彷徨える魂に祝福を与え、望まれる希望に近い世界に送る使命を与えられた尊い女神です』
「自分から尊いだなんて言うとは、さすが勘違いゴミ女神だけの事はある」
女神はボソッと
『何でゴミにゴミ扱いされないといけないのよ』
「えっ、やっぱり自分はゴミなんですか?」
『誰もそんな事は言ってま・・』
途中で黙らせる様に答える
「言いましたけど!」
しばし沈黙し、
『話が進みませんので、冗談はこれ位にしてこれからの事を説明しましょう』
「今までのくだりは無かったことにしたいの?はいはい、勝手にしてください。ゴミの立場で冗談を聞いて差し上げますよ」
「ゴ・・貴方はこれから異世界へと転生します』
「今、ゴミって言おうとしなかったか?」
女神は首を振りながら
『単なる聞き間違いですよ。その世界はあなたが過ごした地球の小説や漫画やゲームの様な、剣と魔法が存在する
夢と冒険を繰り広げる素晴らしいファンタジーな世界です』
「何て事だ、殺伐とした命の軽い差別と偏見のはびこる悲惨で異常な地獄に突き落とされるのか」
『何故その解釈になるのかわかりませんが、異世界行きは決定事項です』
「異議あり!誰がそんな事を本人の承諾も得ずに決めた?詐欺だろ、クーリングオフよろしく!」
『お断りします。この件は偉大なる主様が定めた宿命です』
「じゃあ、その主様とやらがバカなんですね。不完全なシステムを運用しているから
こんなフォローが必要になるでしょう、だからゴミ女神なんか雇わなきゃならないんじゃないか」
『女神キラミスです、創造主様を馬鹿にするのやめてもらえませんか?不完全にも意味があり、不備がある様に判断するのは貴方の妄想ですよね?そもそも私は雇われてません、大いなる使命を遂行しているに過ぎません』
「ゴミ女神鼻水さん、ブラックな職場でさらに上司がアホだと苦労するのは分かりましたし、同情もします、でもお仕事しないと、上司に叱られませんか?」
『キ・ラ・ミ・スです。異世界に行くからと言って不慮の死や苦労させないよう、優遇措置として
特殊能力や必要な道具や物資を加護として与え、幸せに過ごさせるよう働きかけています」
「極悪で破滅的な修羅の世界に放り込む為、ちょいと甘い餌をちらつかせて罠にはめる・・・詐欺師の常套句ですね」
女神は呆れたように首を左右に振り
『混乱し妄執に囚われている様なので、異世界に行かれた方々の幸ある例を話しましょう』
『パイロットになるのを夢見ていたが、病死して魂がこちらに来たのでフェニックスに転生させて大空を自由に飛び回る夢をかなえたり、貧しい荒野で生まれ餓死した魂を大商人の息子に転生させて一生優雅に暮らさせた、政治家になる夢をこちらの世界の宰相の養子にして辣腕を振るい国を盛り立てた、英雄願望を持つ魂に魔法と聖剣を与え世界中の多数の人を救った者になったり、他には悪役令嬢に転生してヒロインを蹴落として勝ち組になった、もありましたね』
「やれやれ、酷い依怙贔屓ばかりじゃないですか、余計な事をしたせいで悲惨な目にあった人は放置ですか?恨む連中がどれだけいるのかと。全員が幸福な世界じゃないなら、一人の幸福は多数の不幸の上にあるのでは?さらに他の都合の悪い例は隠蔽ですか?一方的な情報は恣意的な意図があると判断します」
『女神に出会う幸運が発生したのですから望みが叶うのは当然の事、その他の方は運が無かったという事です』
「自分の正義を盲信して権力や暴力を振りかざし、周囲を不幸にするタイプの基地じゃねーのかコイツは」
『どうも、話の趣旨が受け手の解釈によって齟齬が生じてますね』
「御託を一方的にして、相手の話を封殺するとは何という傲慢」
『少々話が逸れましたが、望みを聞かせてもらいましょう。冒険がしたいなら、戦士とか魔法使いとか、或いは大商人とか、そちらの世界にいない架空の生物や、或いは魔王というのはいかがでしょう?』
「少々どころか全面的に平行線ですが、そんなマニュアル通りしかできないなら仕方ないか・・・では諦めてさっきまで撮影しようとしてた、プランクトンでお願いします」
『ぷ、プランクトン?それって水の中にいる小さい植物とか虫の類でしょうか?』
「そうですね、顕微鏡使わないと人の肉眼で見えない奴だけど」
『な、何でそんな物に』
「当然です、安全な日本育ちの自分。その世界っておそらくは文明も中世並みで道を歩けば、やれ盗賊とかが、森に入れば魔物が、町や村では貴族とかの階級差別、奴隷制度やら死刑やリンチもありそうだし、そんな恐ろしいところで人型の生物は碌な事にならない!ポンコツの創造神の世界とやらが真面なはずも無いだろう。
他の生物になっても殺伐とした生存競争だろうし、意識や自我や知識はいらないでしょう。そもそも自立行動すること自体が罪深いのだから、平穏に過ごすには植物でもいいと思いますが」
『・・・困るんですが』
「人類に近い生物や幻獣種とかじゃないといけない決まり事でもあるんですか、それとも自分がルールとでも言い張るのかな?」
『希望に沿うようにとは思いますが、プランクトンの様な生物は問題なんですよ』
「何が問題なのか理解しかねるが、それは其方の都合でしょ?とりあえず仕事だか使命だかをしないでサボると上司に怒られるんじゃないかな?」
女神は両手を光一に向けて
『ああもう、ミカヅキモになって異世界の池にでも行ってしまえ!』
虹色の光に包まれて、徐々に光一の意識が無くなっていく。
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