現実主義な皇太子殿下の恋愛事情

アムール

文字の大きさ
上 下
11 / 11
本編

9話

しおりを挟む
メイリーンとイリンの話を聞いてしまってから
2週間。
メイリーンに対する意識を変えようと決意して2週間。
学園は夏休みに入り、メイリーンは
一旦ラディシア王国に帰っていった。
僕も皇太子としてやらなければいけないことが多く、王宮に戻りひたすら執務の日々を
過ごした。
1つ問題があったとしたら、側近たちが
集中してくれなかったり、突然何も言わず
休んだりした影響で、ほとんど自由時間が
取れなかったことだ。
去年はもう少し、余裕を持ってできたことなのに
余裕など全くなかった。
夏休みに入る前、シャロン嬢に
「夏休み、皆でどこかに遊びにいきませんか?」
と誘われていたが、とてもじゃないが
行けなかった。
まぁ、側近たちは全員行ってしまったが。
そんなこんなで夏休みが終わり、
また学校生活の新学期が始まった。

そして、新学期が始まってから1ヶ月。
少しずつ僕はメイリーンと接する機会を
増やしていくことにした。
彼女の本心を知るには、結局接する機会を
増やしてみるしかないという結論に
落ち着いたのだ。
僕の態度が少し変わったことにメイリーンは
驚いていたようだけど、特に大きなことは起こらず
基本今まで通りに時は進んでいった。
いや、変わったことといえばシャロン嬢から
話しかけられることが増えたな。
話しかけられたら断ることもできず、
というか側近たちに周りを囲まれて離れることもできず、彼女と話すことも増えた。
まぁ、彼女と話すのはやはり楽しいし嫌な気はしないのだが、どうしてもメイリーンが気にかかる。

そんなある日、シャロン嬢が大怪我をしていたとかでケインが朝からうわのそらかと思ったら、
昼休みが終わってから凄い怒りの形相をしていた。
いや、ケインだけではない。
他の側近たちもだ。
僕は昼休み校長に呼ばれていたので
食堂に行かなかったが、食堂でシャロン嬢から
一体何を聞いたのだろう。
その疑問はすぐに解消された。

放課後図書館に向かうと、 
シャロン嬢も図書館にいた。
彼女は、僕を見た瞬間こちらに向かって走ってきた。
確かに、体のあちこちに包帯を巻いていて見た目は痛々しそうだが、走れるならそこまで重症ではなさそうだけど。
僕の前まで来ると彼女は、なぜか大きな声で

「あ、殿下。来てくれたんですね!
殿下にどうしても相談したいことがあるんです。
殿下にとっても大事なことだと思うので、
聞いてもらえませんか。」

と言った。

…どうして彼女は、もともと僕とここで待ち合わせをしていたような言い方をするんだろう。
今日図書館に来たのは本当に気まぐれだから、
誰にも言ってないはずなのだけどな。
なんで、彼女は僕が今日ここに来ることを知っているのか、不思議で仕方ない。
でも、困ったぞ。
こんな周りの目があるところで相談したいことがあるなんて言われたら、皇太子としては
了承するのがいいのか。
了承しない方がいいのか。

迷った末、僕はシャロン嬢の話を聞くことにした。
なぜなら、ケイン達の様子がおかしくなった理由を知れるかもしれないと思ったからだ。

「それで、何かな?」

と聞くと彼女は

「ここでは話しにくいので、こっちに来てください。」

と僕の手を強引に引いて、
図書館から出たと思ったらいつの間にか
人気のないところまで連れてこられてしまった。

流石にまずい。
これは、変な噂がたってもおかしくない行為だ。
だが、こんな所に連れてきたってことはシャロン嬢の話というのはそれだけ重要なことなのだろう。

シャロン嬢は、こちらにまっすぐ振り向いたと思ったらなぜか目に涙をためて話し始めた。

「私のこの怪我、何でこうなったのか分かりますか?」

「ごめん、全く分からない。」

「そう…ですよね。
実はこの怪我昨日の放課後に階段から
突き落とされておった傷なんです。」

階段から突き落とされた!?
それが、事実ならほぼ殺人未遂といっても良い
行為だが、誰がそんなことを。
流石にシャロン嬢が階段から突き落とされたとなると、僕も放ってはおけないが。

「そして、その犯人が実はメイリーン様なんです。
昨日手紙で呼びだれたと思ったら、
『あなた、ディオーネ様とよく話してるからっていい気に乗らないで!ディオーネ様は、私のものよ。あなた、目障りなのよ。』って
突然階段から突き落とされて。
私本当に怖かったんです。
殿下、メイリーン様に気をつけて。
メイリーン様は殿下のことをものと思ってるんだよ。
そんなメイリーン様と殿下が将来結婚すると思うと、私殿下が心配なの。
また、もしかしたら次は暗殺者でも差し向けられるんじゃないかって。
もう、私色々心配で…」

そう言ってシャロン嬢はハラハラと涙を流す。
この様子が演技だとは思えないが、
正直不審な点が多い。
これは、何かがあるな。
しばらく様子を見ながら陰で調べてみよう。

「心配してくれてありがとう。
メイリーンにはきつく言っておくから、
あまり心配しないでいいよ。
君のことは僕が守るから。」

そう言うとさっきまでの様子が信じられないほど
笑顔になるシャロン嬢。

「ありがとう、殿下。
殿下にそう言ってもらえて、安心したよ。 
じゃあ、私のもう行くね。」

そう言って去っていくシャロン嬢。
シャロン嬢がこの場から完全にいなくなったのを確認して僕は僕の護衛である陰を呼び出す。
その場に静かに現れる陰たち。

「メイリーンとシャロン嬢両名を
しばらくの間見張れ。
不審なことがあったら、僕に報告。
絶対に気づかれるなよ。」

「御意。」

そう答えたと思ったらまた静かに消える陰たち。

2人には少し申し訳ないが、
しばらく見張らせてもらおう。
おそらく、そうすれば何か大事なことが分かるから。

しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

人生を共にしてほしい、そう言った最愛の人は不倫をしました。

松茸
恋愛
どうか僕と人生を共にしてほしい。 そう言われてのぼせ上った私は、侯爵令息の彼との結婚に踏み切る。 しかし結婚して一年、彼は私を愛さず、別の女性と不倫をした。

むしゃくしゃしてやりましたの。後悔はしておりませんわ。

緑谷めい
恋愛
「むしゃくしゃしてやりましたの。後悔はしておりませんわ」  そう、むしゃくしゃしてやった。後悔はしていない。    私は、カトリーヌ・ナルセー。17歳。  ナルセー公爵家の長女であり、第2王子ハロルド殿下の婚約者である。父のナルセー公爵は、この国の宰相だ。  その父は、今、私の目の前で、顔面蒼白になっている。 「カトリーヌ、もう一度言ってくれ。私の聞き間違いかもしれぬから」  お父様、お気の毒ですけれど、お聞き間違いではございませんわ。では、もう一度言いますわよ。 「今日、王宮で、ハロルド様に往復ビンタを浴びせ、更に足で蹴りつけましたの」  

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。

鶯埜 餡
恋愛
 ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。  しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが

【コミカライズ&書籍化・取り下げ予定】お幸せに、婚約者様。私も私で、幸せになりますので。

ごろごろみかん。
恋愛
仕事と私、どっちが大切なの? ……なんて、本気で思う日が来るとは思わなかった。 彼は、王族に仕える近衛騎士だ。そして、婚約者の私より護衛対象である王女を優先する。彼は、「王女殿下とは何も無い」と言うけれど、彼女の方はそうでもないみたいですよ? 婚約を解消しろ、と王女殿下にあまりに迫られるので──全て、手放すことにしました。 お幸せに、婚約者様。 私も私で、幸せになりますので。

初恋の相手と結ばれて幸せですか?

豆狸
恋愛
その日、学園に現れた転校生は私の婚約者の幼馴染で──初恋の相手でした。

永遠の誓いを立てましょう、あなたへの想いを思い出すことは決してないと……

矢野りと
恋愛
ある日突然、私はすべてを失った。 『もう君はいりません、アリスミ・カロック』 恋人は表情を変えることなく、別れの言葉を告げてきた。彼の隣にいた私の親友は、申し訳なさそうな顔を作ることすらせず笑っていた。 恋人も親友も一度に失った私に待っていたのは、さらなる残酷な仕打ちだった。 『八等級魔術師アリスミ・カロック。異動を命じる』 『えっ……』 任期途中での異動辞令は前例がない。最上位の魔術師である元恋人が裏で動いた結果なのは容易に察せられた。 私にそれを拒絶する力は勿論なく、一生懸命に築いてきた居場所さえも呆気なく奪われた。 それから二年が経った頃、立ち直った私の前に再び彼が現れる。 ――二度と交わらないはずだった運命の歯車が、また動き出した……。 ※このお話の設定は架空のものです。 ※お話があわない時はブラウザバックでお願いします(_ _)

【掌編集】今までお世話になりました旦那様もお元気で〜妻の残していった離婚受理証明書を握りしめイケメン公爵は涙と鼻水を垂らす

まほりろ
恋愛
新婚初夜に「君を愛してないし、これからも愛するつもりはない」と言ってしまった公爵。  彼は今まで、天才、美男子、完璧な貴公子、ポーカーフェイスが似合う氷の公爵などと言われもてはやされてきた。  しかし新婚初夜に暴言を吐いた女性が、初恋の人で、命の恩人で、伝説の聖女で、妖精の愛し子であったことを知り意気消沈している。  彼の手には元妻が置いていった「離婚受理証明書」が握られていた……。  他掌編七作品収録。 ※無断転載を禁止します。 ※朗読動画の無断配信も禁止します 「Copyright(C)2023-まほりろ/若松咲良」  某小説サイトに投稿した掌編八作品をこちらに転載しました。 【収録作品】 ①「今までお世話になりました旦那様もお元気で〜ポーカーフェイスの似合う天才貴公子と称された公爵は、妻の残していった離婚受理証明書を握りしめ涙と鼻水を垂らす」 ②「何をされてもやり返せない臆病な公爵令嬢は、王太子に竜の生贄にされ壊れる。能ある鷹と天才美少女は爪を隠す」 ③「運命的な出会いからの即日プロポーズ。婚約破棄された天才錬金術師は新しい恋に生きる!」 ④「4月1日10時30分喫茶店ルナ、婚約者は遅れてやってきた〜新聞は星座占いを見る為だけにある訳ではない」 ⑤「『お姉様はズルい!』が口癖の双子の弟が現世の婚約者! 前世では弟を立てる事を親に強要され馬鹿の振りをしていましたが、現世では奴とは他人なので天才として実力を充分に発揮したいと思います!」 ⑥「婚約破棄をしたいと彼は言った。契約書とおふだにご用心」 ⑦「伯爵家に半世紀仕えた老メイドは伯爵親子の罠にハマり無一文で追放される。老メイドを助けたのはポーカーフェイスの美女でした」 ⑧「お客様の中に褒め褒めの感想を書ける方はいらっしゃいませんか? 天才美文感想書きVS普通の少女がえんぴつで書いた感想!」

婚約破棄されなかった者たち

ましゅぺちーの
恋愛
とある学園にて、高位貴族の令息五人を虜にした一人の男爵令嬢がいた。 令息たちは全員が男爵令嬢に本気だったが、結局彼女が選んだのはその中で最も地位の高い第一王子だった。 第一王子は許嫁であった公爵令嬢との婚約を破棄し、男爵令嬢と結婚。 公爵令嬢は嫌がらせの罪を追及され修道院送りとなった。 一方、選ばれなかった四人は当然それぞれの婚約者と結婚することとなった。 その中の一人、侯爵令嬢のシェリルは早々に夫であるアーノルドから「愛することは無い」と宣言されてしまい……。 ヒロインがハッピーエンドを迎えたその後の話。

処理中です...