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本編
7話
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メイリーンの教室についた。
たまたま扉から出てきた生徒にメイリーンが
いるかどうか聞く。
「メイリーン様ならまだ教室にいますよ、ほら。
呼びましょうか?」
「いや、自分で呼ぶよ。
メイリーン、少しいいかな。」
僕がそう言うと、教室の窓側の席に座り
本を読んでいたメイリーンが、
ゆっくりと本から顔をあげてこちらを認識瞬間
思いっきり本を落とした。
確かに僕からメイリーンの教室に来たことは
ほとんどなかったけど、本を落とすほど驚かれるとは。
やっぱり、交流が足りなかったかもしれない。
メイリーンは、落ちた本を静かに拾いカバンの中に戻しコチラにやってきた。
「あら、殿下から来てくださるなんて珍しいこともありますのね。
やっと、殿下も紳士らしくなってきたってことかしら。」
「そうかもね。」
僕がそう答えると、メイリーンは
本当に驚いたという顔をした。
まぁ、確かに今までの僕だったら今の言葉も無言でスルーしていただろう。
でも、今のままの関係じゃ何も変わらないと分かったから、まずは僕から変えていかないとね。
「それで、何の御用ですの?
まさか、たまたま教室に来ただけでなんの用もない、なんてことはございませんでしょう?」
そう言ってフフッと笑うメイリーン。
今までだったら顔の造形もあいまって
こちらを馬鹿にしてきたように感じていただろう。
実際、何度もそう思ってきた。
だが、今は特に何も不快に思わない。
「いや、君が昨日体調不良で早退したと聞いたから、今日は大丈夫なのかと思って様子を見に来たんだ。
でも、その様子なら大丈夫そうだね。
あ、そうだ。期末試験学年1位おめでとう。
今回は僕も頑張ったつもりなんだけど、
君には叶わないな。」
そう言うと、彼女は持っていた扇子を広げて
口元を隠してしまった。
本来なら扇子で口元を隠す行為は、
相手に侮辱の意味を示すためか
話をするつもりはないという意思表示をするときに多く使われ、された相手はいい気分ではない。
僕も今までこの行為をされると不快になって
彼女とその場で別れていたが、
扇子で口元を隠れる前のほんの一瞬をよく見てようやく気づけた。
彼女の口元がピクピクしていた。
そして、頬もうっすら赤くなっている。
こんな状態を見せられて気づかないほど僕は
鈍感じゃない。
彼女は、間違いなく照れている。
そして、それを扇子で隠すことでバレないようにしている。
なんで扇子を使うのか分からなかったけど、
多分手元に顔を隠せるものがいつも
扇子しかなかったのだろう。
扇子は高位の令嬢の必需品らしいから。
「きょ、今日はやけに優しいんですのね。
体調に関してはご心配をおかけして申し訳ございません。
もう 心配は要りませんわ。
用はそれだけですか?
なら失礼させていただき」
「あ、あともう1つ。
渡すものがあるんだ。
昨日アリエス嬢に君に渡すように頼まれたんだけど、ごめんね。
色々あって渡せなかったんだ。」
そう言って手紙を差し出し、メイリーンが受け取る。
「アリエスから、ですか?
あの子なんで殿下にわざわざ渡したのかしら。
私に直接渡せばよろしいのに。」
「僕もそう思ったんだけど、アリエス嬢が
婚約者である僕から渡したほうが良いって言ってね。」
「なるほど、そういうことでしたの。
一応お礼を申しあげておきますわ。
私にお礼を言ってもらえるだなんて
光栄なことだと思いなさい。」
うん、いつものメイリーンだ。
「メイリーン様、いくらあなたが王女だとしても
殿下を侮辱なさるのは許されることではございません!
あなたはラディシア王国と我が国の関係の
悪化を望んでいるのか!」
そうケインが言うと、メイリーンは
少しだけ慌てた様子で
「そんなつもりはございませんわ。
当然のことを言ったまでです。」
「当然のことだとっ!?」
口調が荒くなってきてメイリーンに
どんどんつかかっていきそうなケインをたしなめる。
「まぁまぁ落ち着いて。
じゃあ、メイリーン。また、今度ね。」
これ以上ケインとメイリーンと言い争うと、
本当に関係が悪化しかねない。
昼休みの時間も残り少なくなってきたし、
ケインをつれてここは早く食堂に
行こう。
食堂に行けば、シャロン嬢もいるから
ケインも落ち着くだろう。
たまたま扉から出てきた生徒にメイリーンが
いるかどうか聞く。
「メイリーン様ならまだ教室にいますよ、ほら。
呼びましょうか?」
「いや、自分で呼ぶよ。
メイリーン、少しいいかな。」
僕がそう言うと、教室の窓側の席に座り
本を読んでいたメイリーンが、
ゆっくりと本から顔をあげてこちらを認識瞬間
思いっきり本を落とした。
確かに僕からメイリーンの教室に来たことは
ほとんどなかったけど、本を落とすほど驚かれるとは。
やっぱり、交流が足りなかったかもしれない。
メイリーンは、落ちた本を静かに拾いカバンの中に戻しコチラにやってきた。
「あら、殿下から来てくださるなんて珍しいこともありますのね。
やっと、殿下も紳士らしくなってきたってことかしら。」
「そうかもね。」
僕がそう答えると、メイリーンは
本当に驚いたという顔をした。
まぁ、確かに今までの僕だったら今の言葉も無言でスルーしていただろう。
でも、今のままの関係じゃ何も変わらないと分かったから、まずは僕から変えていかないとね。
「それで、何の御用ですの?
まさか、たまたま教室に来ただけでなんの用もない、なんてことはございませんでしょう?」
そう言ってフフッと笑うメイリーン。
今までだったら顔の造形もあいまって
こちらを馬鹿にしてきたように感じていただろう。
実際、何度もそう思ってきた。
だが、今は特に何も不快に思わない。
「いや、君が昨日体調不良で早退したと聞いたから、今日は大丈夫なのかと思って様子を見に来たんだ。
でも、その様子なら大丈夫そうだね。
あ、そうだ。期末試験学年1位おめでとう。
今回は僕も頑張ったつもりなんだけど、
君には叶わないな。」
そう言うと、彼女は持っていた扇子を広げて
口元を隠してしまった。
本来なら扇子で口元を隠す行為は、
相手に侮辱の意味を示すためか
話をするつもりはないという意思表示をするときに多く使われ、された相手はいい気分ではない。
僕も今までこの行為をされると不快になって
彼女とその場で別れていたが、
扇子で口元を隠れる前のほんの一瞬をよく見てようやく気づけた。
彼女の口元がピクピクしていた。
そして、頬もうっすら赤くなっている。
こんな状態を見せられて気づかないほど僕は
鈍感じゃない。
彼女は、間違いなく照れている。
そして、それを扇子で隠すことでバレないようにしている。
なんで扇子を使うのか分からなかったけど、
多分手元に顔を隠せるものがいつも
扇子しかなかったのだろう。
扇子は高位の令嬢の必需品らしいから。
「きょ、今日はやけに優しいんですのね。
体調に関してはご心配をおかけして申し訳ございません。
もう 心配は要りませんわ。
用はそれだけですか?
なら失礼させていただき」
「あ、あともう1つ。
渡すものがあるんだ。
昨日アリエス嬢に君に渡すように頼まれたんだけど、ごめんね。
色々あって渡せなかったんだ。」
そう言って手紙を差し出し、メイリーンが受け取る。
「アリエスから、ですか?
あの子なんで殿下にわざわざ渡したのかしら。
私に直接渡せばよろしいのに。」
「僕もそう思ったんだけど、アリエス嬢が
婚約者である僕から渡したほうが良いって言ってね。」
「なるほど、そういうことでしたの。
一応お礼を申しあげておきますわ。
私にお礼を言ってもらえるだなんて
光栄なことだと思いなさい。」
うん、いつものメイリーンだ。
「メイリーン様、いくらあなたが王女だとしても
殿下を侮辱なさるのは許されることではございません!
あなたはラディシア王国と我が国の関係の
悪化を望んでいるのか!」
そうケインが言うと、メイリーンは
少しだけ慌てた様子で
「そんなつもりはございませんわ。
当然のことを言ったまでです。」
「当然のことだとっ!?」
口調が荒くなってきてメイリーンに
どんどんつかかっていきそうなケインをたしなめる。
「まぁまぁ落ち着いて。
じゃあ、メイリーン。また、今度ね。」
これ以上ケインとメイリーンと言い争うと、
本当に関係が悪化しかねない。
昼休みの時間も残り少なくなってきたし、
ケインをつれてここは早く食堂に
行こう。
食堂に行けば、シャロン嬢もいるから
ケインも落ち着くだろう。
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