上 下
8 / 11
本編

6話

しおりを挟む
昨日のあれは…

メイリーンとその侍女イリンの話を聞いてしまい、
混乱したまま自室に戻ってきた次の日の朝。
夜通し昨日の話について考えたものの、
結局何の結論も得られず登校する時間となってしまった。
部屋を出ようとしたとき、机の上に置かれた昨日アリエス嬢からメイリーンに届けてほしいと言われていた手紙が目に入り、とりあえずその手紙をカバンに入れて部屋を出る。



「あっ、おはようございます!殿下
えっ、ちょっとどうしたんですか~。」



メイリーンに会ったらどんな顔をすればいいのだろう。
話を立ち聞きしてましたなんて言えるわけないし。
そもそも、本当に昨日の会話の主はメイリーン
とイリンだったのかな?
駄目だ、 考えれば考えるほどわからなくなってくる。
とりあえず、一端頭をリセットしてメイリーンと
接さないと。
昨日の話が仮にもし全て本当だったのなら、
勝手に苦手意識をもって避けようとすることは
彼女に失礼だ。

(あれ?もう教室についた。)

メイリーンについて考えていたら、いつの間にか教室についていた。
今思い返すと 途中で誰かに挨拶されたような気がしたが、 あれは誰だったのだろうか。
無視なんて申し訳ないことしちゃったな。
流石にメイリーンではなかったと思う。

そういえば、今日メイリーンは来てるのかな?
昼休みに彼女の教室に行ってみよう。


いつものように午前の授業が終わる。
いつもならこのまま食堂に向かうが、
今日は先にメイリーンの教室に向かう。

「殿下そちらは食堂の方向ではございませんが、
どちらに向かわれるのですか?」

僕の側近の1人で宰相子息のケインが聞いてくる。

「ちょっと、メイリーンの教室にね。
昨日体調不良で早退したらしいから、
少し心配だからね。」

僕がそう答えると、ケインはなぜか少し怒った表情になった。
なぜだろう、今の会話の中に怒るポイントなんて
ないと思うけど。

「殿下!メイリーン様のことなんて心配する必要はありません。」

「どうして?婚約者の心配をすることは
当たり前のことだと思うけど。」

「メイリーン様は殿下の婚約者という立場を使って
、シャロンに陰湿なイジメをしています。
この前、私にシャロンが泣きながら教えてくれました。」

「メイリーンがシャロン嬢にイジメ?」

どういうことだろう。
メイリーンは僕に対しては色々と言ってくるが、一国の王女としての自覚をしっかりと持っている。
陰湿なイジメを行うことは彼女の矜持が許さないだろう。
ということは、本当にシャロン嬢がいじめられてるとした場合メイリーンに冤罪をかけたがっている
人物がいる可能性が高い。

とそこまで思い、昨日までの僕だったら
この話を素直に信じてしまったのではないかと
思い至る。
昨日、彼女の話を聞いたから、彼女がただ我儘で
色々なことにうるさい人ではないのかもしれないということを理解できた。
でも、そのことを理解してなかったら
メイリーンならやりそうだと思い、
彼女に注意してしまったのではないか。

「はい!シャロンが物がなくなったり、周りからは見えないところに時々悪口が書かれていて、悲しいと。
犯人に心当たりがないのか聞いたところ、
私が殿下とよく話をしているからメイリーン様が嫉妬してやってしまったのかもしれないと。」

何だそれ。
何もメイリーンがやったという証拠はないじゃないか。
それによく話をしていると言っても
基本友達と話をしていたと言って済ませられる
頻度に時間だ。

何かがおかしい。

シャロン嬢の話が全て嘘だとは思わないけど、
本当だとも思えない。

「分かった。そのことは頭に入れておくよ。
でも、それとこれは別だ。
メイリーンは僕の婚約者だ。
対面を保つためにも心配するのは必要だろう。」

そう言うと、ケインは「それは、そうですね。」
と大人しく引き下がった。
しばらくは、ケインに言った通り
メイリーンがシャロン嬢をいじめているかもしれないということを頭に入れておこう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

婚約破棄されなかった者たち

ましゅぺちーの
恋愛
とある学園にて、高位貴族の令息五人を虜にした一人の男爵令嬢がいた。 令息たちは全員が男爵令嬢に本気だったが、結局彼女が選んだのはその中で最も地位の高い第一王子だった。 第一王子は許嫁であった公爵令嬢との婚約を破棄し、男爵令嬢と結婚。 公爵令嬢は嫌がらせの罪を追及され修道院送りとなった。 一方、選ばれなかった四人は当然それぞれの婚約者と結婚することとなった。 その中の一人、侯爵令嬢のシェリルは早々に夫であるアーノルドから「愛することは無い」と宣言されてしまい……。 ヒロインがハッピーエンドを迎えたその後の話。

その歪な血の恋は報われるのか

恋愛
戦闘民族に生まれたコートニーは護衛としての実績を積みながら、王都の学園に一般生徒として入学した。 学園には一般科以外にも、貴族科や特進科など他いくつかの科があった。 本来は特進科の部類の人間だったが、護衛の仕事柄目立つはよくないと彼女は一般科にいた。 彼女が学園になれてきた頃、貴族科では一人の少年によって婚約破棄が起きる寸前まで事態が発展していた。 たまたま新しい護衛の仕事を受けたところ、問題の少年がコートニーの護衛相手になった。 なんだかんだあって少年と仲良くなったコートニーは面倒な事件に巻き込まれていくことになった。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

アルバートの屈辱

プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。 『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。

鶯埜 餡
恋愛
 ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。  しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが

伝える前に振られてしまった私の恋

メカ喜楽直人
恋愛
母に連れられて行った王妃様とのお茶会の席を、ひとり抜け出したアーリーンは、幼馴染みと友人たちが歓談する場に出くわす。 そこで、ひとりの令息が婚約をしたのだと話し出した。

当て馬令息の婚約者になったので美味しいお菓子を食べながら聖女との恋を応援しようと思います!

朱音ゆうひ
恋愛
「わたくし、当て馬令息の婚約者では?」 伯爵令嬢コーデリアは家同士が決めた婚約者ジャスティンと出会った瞬間、前世の記憶を思い出した。 ここは小説に出てくる世界で、当て馬令息ジャスティンは聖女に片思いするキャラ。婚約者に遠慮してアプローチできないまま失恋する優しいお兄様系キャラで、前世での推しだったのだ。 「わたくし、ジャスティン様の恋を応援しますわ」 推しの幸せが自分の幸せ! あとお菓子が美味しい! 特に小説では出番がなく悪役令嬢でもなんでもない脇役以前のモブキャラ(?)コーデリアは、全力でジャスティンを応援することにした! ※ゆるゆるほんわかハートフルラブコメ。 サブキャラに軽く百合カップルが出てきたりします 他サイトにも掲載しています( https://ncode.syosetu.com/n5753hy/ )

処理中です...