現実主義な皇太子殿下の恋愛事情

アムール

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1話

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「仕方ないから、あなたを私の婚約者にしてあげますわ!
光栄に思いなさい!」

これが、僕と僕の婚約者メイリーンが初めての顔合わせの時、メイリーンから言われた言葉だった。

メイリーンは、赤髪に金色の少し釣り上がった目をしている。
可愛い顔立ちなのだが、すこしキツく見えがちな顔だった。

言葉を交わす前から何となく気が強そうな子だな
とは思っていたけど、この言葉は完全予想外だった。

この時、僕たちはお互いに10歳。

流石に第一声が「婚約者にしてあげますわ。光栄に思いなさい。」

苦手意識を持ってしまうのも仕方がないだろう。

ラディシア王国と我が国は古くからの友好国だが、国力なら僅かに我が国が上回っている。
それなのに、完全な上から目線。

正直に言って、気が合う気はしなかった。

はじめての顔合わせの時、その後も彼女の口から出てきたのは、お世辞にも美しい言葉とは言えなかった。

「何ですかこの紅茶は!
こんな紅茶より我が国から持ってきた紅茶にしましょう!」

…この紅茶は我が国の特産品の1つなんだけどな。
それに、充分美味しいと思うのだが。
だが、この時はメイリーンが持ってきた紅茶が
確かに美味しかったので何も言わなかった。

入れる際にも「この城の使用人より私の方が紅茶を入れるのに慣れているようですから、私が入れますわ!」と言って本当に自分で紅茶を用意してしまった。

美味しかったは美味しかったのだが、わざわざ
我が城の使用人と比べる必要が
あったのだろうか?
今でもよく分からない。

他にも、
「このお菓子は甘すぎですわ!
イリン、あれを。」

「はい、お嬢様。」

イリンというのはメイリーンの侍女なのだろう。
我が国に来たときからずっと引き連れている。

それに、確かに今日のお菓子は甘いと思うけど
それは大の甘党だと噂の君用にシェフが
工夫したからなんだけどね。

僕はあまり甘いものが好きじゃないから、
このお菓子は僕が食べれる限界の甘さになっている。
でも、いつもメイリーンが食べているお菓子よりは
甘くないはずだ。
なのに、なぜ甘すぎると言うのだろうか。

イリンが持ってきたのは少し形がバラバラな
クッキーだった。
食べないのは失礼かと思い少し摘んでみたが、
全然甘くないクッキーだった。

確かにこれが今の彼女の基準なら今回用意された菓子は甘すぎという評価になるだろう。
その時も僕的にもちょうど良かったので、あまり深く追求しなかった。

極めつけは、会話の中で起こった。

会話をしている内に今どんな内容を勉強しているか…という話題になった。

驚くことに彼女の方が進んでいたようで僕の知らない知識を知っていた。

素直に凄いと思い、称賛を贈ろうとしたその時

「こんなことも分からないなんて、皇太子殿下は
勉強不足ですのね!」

そう言ってきたのだ。
僕のことを指さしながら。

今思い返せば、人生の中で1番カチンときた経験だった。

その後は詳しく覚えていないが、あまり話さなず時間が過ぎていったと思う。

その顔合わせが終わった後、僕と彼女は
ほとんど会わなくなった。

婚約は成立しているのだが、友好国とはいえ国が違う。
そんな簡単に遊びに来る、行くなんてことは
できず僕もあまり会うのに乗り気でなかったことから1年に1回の公式的な場所以外では全く会う機会がなかったからだ。



◇◆◇

あの出来事から5年。

僕と彼女は15歳となり、同じ学園に入学した。

同じ学園にいるので、勿論それに合わせて一緒にいる時間も増えたのだが、どうしても初対面での苦手意識は拭いきれず、将来王妃になる人間としては相応しくない言葉をまだたまに使う彼女に対して逆に苦手意識は深まり、僕は不仲が疑われない程度に彼女と接するようになった。

そして、僕たちが入学した1年後、ティクター嬢は
僕たちの前に現れた。
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