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洗礼の儀
大事な報告 〜リリィ(お母様視点)〜
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私は娘と息子が部屋から退出するのを見送り、
使用人たちに気づかれないようにため息をついた。
「それで、リリィ。どうしたんだい?
僕に話があるんだろう。」
そう言ってこちらを真剣な目で見つめてくる旦那様。
できるだけ態度には出さないように気をつけていたつもりなのだけど。
「…やはり、あなたには叶わないわね。」
「愛しの奥さんが少し苦しそうなのを僕が見落とすわけないからね。
それで、どうしたんだい?」
「今日、教会にて大司教様より1週間以内にもういちど来るように言われたの。
そして、マリンの膨大だという魔力量。
ここまでいえば、あなたならどういうことか分かるでしょう?」
私がそう言うと、旦那様は予想通り信じたくないというような思いつめた顔をしていらした。
「…魔力超過多症…か。」
「えぇ。信じたくはないけど、おそらくそうかと。」
"魔力超過多症。
基本的に魔力は多い方が良いと言われてはいるが、
魔力超過多症は別。
多すぎる魔力に体が耐えられなくなってしまう病気。
10万人に1人の割合でなる病気で、最悪の場合オーバーヒートという現象をおこし死にも至る恐ろしい病気である。"
「今はまだ大丈夫なようだけど、あの子がこのまま成長していけば、いつかは。」
魔力というのは人によって差異はあっても、
基本的に年齢とともに増えていくもの。
このまま成長していくにつれて、あの子が病弱になっていくなんて考えたくもない。
「…できれば、考えたくはないな。
こうしてはいられない。早速明日教会に行こう。」
「お仕事は大丈夫なの?」
「1日の休みぐらい脅してでも許可させるさ。」
そう冗談を言う旦那様。
できるだけ気丈に振る舞おうとした結果なのだろうが、動揺を隠せていない。
しかし、当たり前でしょう。
いきなり娘が死ぬかもしれない病気の可能性があると分かったら家族に優しい旦那さまが平気でいられるわけがない。
「ふふっ、分かったわ。
明日、できるだけ早くに教会に行きましょう。
私も詳しく知りたいことですし。」
「そうだな。
だが、本当にそうなら魔法の家庭教師をもうつけることにしたのは正解だったな。
魔力超過多症の治療法は魔力のコントロールを
上達させるしかない。
これは、より慎重に家庭教師を選ばなければな。」
「私も協力するわ。」
「あぁ、ありがとう。」
いつ教会に行くのかが決まったので旦那さまと他愛もない話を少ししたあと、私も食堂を後にした。
廊下を歩いていると前方にアリスが見えた。
いつもは、マリンの部屋にいるはずだけど
どうしたのかしら。
「アリスどうしたの?マリンは?」
「あ、奥様。
お嬢様はもうお休みになられたのですが、まだ仕事を終えるには早い時間ですし、何をしたらいいのかと。」
「あなたは、マリンの専属侍女なのだからマリンが寝たのならもう仕事を終えていいわよ。
あなたも今日は色々と大変だっただろうし、もう休みなさい。」
「ですが…いえ、分かりました。
それでは、奥様失礼いたします。」
そう言い使用人の宿舎塔に帰っていくアリス。
それにしても、もうマリン寝ちゃったのね。
まだ早い時間だし、やはり疲れていたのかしら。
少しだけ…と思いながらマリンの部屋に向かう。
静かに扉を開けると静かに寝息を立てながら気持ち良さそうに寝ている。
(気持ち良さそうね。どんな夢を見ているのかしら。)
「大丈夫よ、マリンちゃん。
あなたが例えもし本当に魔力超過多症でも
お母様もお父様もあなたを支え続けるから。」
「……むにゃ……あれ?お母様。」
「ごめんなさい、起こしちゃった?
気にしないで、すぐに出ていくから。」
「…はい………」
そう言ってまた寝ていくマリン。
「お休みなさい、いい夢を。」
そう言い残し、私はマリンの部屋を後にした。
使用人たちに気づかれないようにため息をついた。
「それで、リリィ。どうしたんだい?
僕に話があるんだろう。」
そう言ってこちらを真剣な目で見つめてくる旦那様。
できるだけ態度には出さないように気をつけていたつもりなのだけど。
「…やはり、あなたには叶わないわね。」
「愛しの奥さんが少し苦しそうなのを僕が見落とすわけないからね。
それで、どうしたんだい?」
「今日、教会にて大司教様より1週間以内にもういちど来るように言われたの。
そして、マリンの膨大だという魔力量。
ここまでいえば、あなたならどういうことか分かるでしょう?」
私がそう言うと、旦那様は予想通り信じたくないというような思いつめた顔をしていらした。
「…魔力超過多症…か。」
「えぇ。信じたくはないけど、おそらくそうかと。」
"魔力超過多症。
基本的に魔力は多い方が良いと言われてはいるが、
魔力超過多症は別。
多すぎる魔力に体が耐えられなくなってしまう病気。
10万人に1人の割合でなる病気で、最悪の場合オーバーヒートという現象をおこし死にも至る恐ろしい病気である。"
「今はまだ大丈夫なようだけど、あの子がこのまま成長していけば、いつかは。」
魔力というのは人によって差異はあっても、
基本的に年齢とともに増えていくもの。
このまま成長していくにつれて、あの子が病弱になっていくなんて考えたくもない。
「…できれば、考えたくはないな。
こうしてはいられない。早速明日教会に行こう。」
「お仕事は大丈夫なの?」
「1日の休みぐらい脅してでも許可させるさ。」
そう冗談を言う旦那様。
できるだけ気丈に振る舞おうとした結果なのだろうが、動揺を隠せていない。
しかし、当たり前でしょう。
いきなり娘が死ぬかもしれない病気の可能性があると分かったら家族に優しい旦那さまが平気でいられるわけがない。
「ふふっ、分かったわ。
明日、できるだけ早くに教会に行きましょう。
私も詳しく知りたいことですし。」
「そうだな。
だが、本当にそうなら魔法の家庭教師をもうつけることにしたのは正解だったな。
魔力超過多症の治療法は魔力のコントロールを
上達させるしかない。
これは、より慎重に家庭教師を選ばなければな。」
「私も協力するわ。」
「あぁ、ありがとう。」
いつ教会に行くのかが決まったので旦那さまと他愛もない話を少ししたあと、私も食堂を後にした。
廊下を歩いていると前方にアリスが見えた。
いつもは、マリンの部屋にいるはずだけど
どうしたのかしら。
「アリスどうしたの?マリンは?」
「あ、奥様。
お嬢様はもうお休みになられたのですが、まだ仕事を終えるには早い時間ですし、何をしたらいいのかと。」
「あなたは、マリンの専属侍女なのだからマリンが寝たのならもう仕事を終えていいわよ。
あなたも今日は色々と大変だっただろうし、もう休みなさい。」
「ですが…いえ、分かりました。
それでは、奥様失礼いたします。」
そう言い使用人の宿舎塔に帰っていくアリス。
それにしても、もうマリン寝ちゃったのね。
まだ早い時間だし、やはり疲れていたのかしら。
少しだけ…と思いながらマリンの部屋に向かう。
静かに扉を開けると静かに寝息を立てながら気持ち良さそうに寝ている。
(気持ち良さそうね。どんな夢を見ているのかしら。)
「大丈夫よ、マリンちゃん。
あなたが例えもし本当に魔力超過多症でも
お母様もお父様もあなたを支え続けるから。」
「……むにゃ……あれ?お母様。」
「ごめんなさい、起こしちゃった?
気にしないで、すぐに出ていくから。」
「…はい………」
そう言ってまた寝ていくマリン。
「お休みなさい、いい夢を。」
そう言い残し、私はマリンの部屋を後にした。
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