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第一章:監禁されるは生徒会
第九話:何はともあれ生徒会
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アルファ先生は特別棟の二階、突き当たりの教室で立ち止まり、呟くように言った。
「ここだよ。生徒会室」
アルファ先生はくいと顎で教室を指し、こんこんとノックする。
少し遅れて、教室の中から返事が聞けてくる。返事が聞こえたことを確認すると、アルファ先生はドアをがらがらと開けた。
生徒会室の中は一見すると、普通の教室と変わらない様子だった。それこそ、さっきまで過ごしていた自分のクラスと全く変わらない造りだ。
中にいたのはラムダだけで、他の人は見当たらない。
やはり生徒会に入るという話は嘘だったのだろうか? そんな疑惑が強くなる。
しかしそれよりも感じたことがある。それは疑問。
ここは本当に生徒会室なのだろうか?
俺はアニメや漫画といったサブカルチャーが大好きだから、所謂オタク知識で申し訳ないのだが、生徒会室にはソファーがあるものだと教わった。ソファーとまでは行かなくても、ティーポットや電子レンジ程度はあっても良いはずだ。それがたとえ、現実世界の生徒会であってもだ。
しかし今目の前にあるのは普通の教室だ。しかも特別棟の教室のはずなのに、自分のクラスと変わらない。
自分が生徒会に入ることを疑ってはいたものの、内心生徒会に入ることを少しだけ楽しみにしていた。そんな俺に対してこの仕打ちだ。俺はショックのあまり、声を出せずにいた。
そんな俺を面白がるように、生徒会室にいたラムダがてちてちと近寄ってくる。ラムダは俺の目の前に立つと、無言で俺の顔を覗き込んでくる。
「……何?」
俺が必死に言葉を絞り出すと、ラムダはふんと鼻で笑った。しかし俺に何を言うでもなく、アルファ先生に声をかける。
「アルファ、連れてきてくれてありがとう」
「ああ、そうか。では私は職員室に戻ろう。それじゃあ三人とも、気をつけて活動しろよ」
アルファ先生はそう言い残して、教室から出て行った。そんなアルファ先生を見送ると、ラムダは意地悪そうに微笑んだ。
「とりあえず、座ろうか」
俺と帝野はラムダに促され、席についた。もちろん席は……帝野が窓側の一番後ろの席、俺がその前の席、そして俺の隣がラムダだ。
席に着くなり俺は呟く。
「いや、この座り方なら、教室で良かったじゃん」
ラムダも同じことを考えていたのか「たはは」と苦笑いした。
「まあ、一応生徒会の活動をするわけだからね。生徒会室でやらなきゃダメだろう?」
「名目上?」
「うちは実体も重要視するよ。生徒会が解体されたら、先輩たちに合わす顔がないからね。まあ、そもそもOBとは物理的に会えないんだけどね!」
ラムダはキリリとキメ顔でサムズアップした。
「それは何故……と聞きますわ。帝野家たるもの、先人には敬意を払わなければなりませんわ」
「ムショに入っているから会えないんだよ? いや、会えないこともないけど、非常に面倒くさい」
「そうか。刑務所に……は?」
普通に生活している分には聞くことがないであろう言葉に、思わず聞き返してしまう。
ムショ、所謂刑務所のことだろうか? いや、おそらく聞き間違えだろう。きっと残暑に入っていると言ったんだろう。ほら、沖縄とか四月でも暑いじゃん? 残暑だよ、ザンショ。因みに名古屋の夏は沖縄より暑い。これ豆知識な。
俺が刑務所という言葉は聞き間違えだろうと高を括っていると、ラムダはポンと肩を叩いてきた。
「認めよう? OB、OGは半分以上捕まった経験がある」
「いや! 何でだよ! 模範生代表の生徒会でしょ!? 何でそんなに非行少年少女になってるんだよ!?」
ラムダから告げられた衝撃の事実に俺は思考することを放棄し、ただただまくし立てた。
ラムダはそんな俺を見て、指をさしながらケタケタと笑った。
「全力少年」
「はっ倒すぞ!?」
「ギャハハハハ!」
俺がラムダを睨みつけると、何がおかしいのか、ラムダはさらに大笑いした。
一通り笑うとラムダは目尻の涙を拭い、話し始めた。
「ずっと気付いていたけどさあ、多分二人とも勘違いしているよね」
「何がですの?」
帝野はこてりと首を傾げた。正直言って、かなりあざとい。原因を考えてみると、思い当たる節は一つ、ラムダだ。こいつのあざとい仕草が移ってしまったのだろう。
俺はお嬢様に悪影響を与えるんじゃないと思いながら、ジロリとラムダを見つめる。そんな俺の視線をよそに、ラムダはぺらぺらと話し続けた。
「君たちは生徒会が模範生代表、優等生が所属する会だと思っているのだろうが、それは他の学校の生徒会だ。うちの生徒会とは違う。君たちが想像している模範生代表というのは、うちの学校では生徒議会に当たるな」
「つまり……俺が思っていた生徒会は、この学校では生徒議会って言うの?」
「ああ、各委員会の委員長とその他生徒議会の役職で構成されているのが生徒議会だ。因みに、一応生徒会長も入っているんだぞ?」
「はあ、生徒会長が……」
ラムダの言葉を聞いて、ふとある疑問が浮かんでくる。生徒会長?
俺はぐるりと周りを見渡した。やはり俺たち以外の人間の姿は見当たらない。
すると必然的に生徒会長は目の前のあざと少女になってくるわけで。でもそうは考えにくい。つまり考えられる結論は一つ。
「生徒会長は今日は休みなのか?」
「いや、私だよ?」
ラムダはあっけらかんと俺が切り捨てた可能性を言い放った。
「え……え?」
「どういうことですの!?」
俺と帝野が戸惑っていると、ラムダはさらに追い討ちをかけてくる。
「序でに言うとさあ。私、君たちより年上だから。敬意を払っても良いんだよ?」
「……つまり?」
俺が必死に言葉を絞り出すと、ラムダは舌をぺろと出し、コツンと自分の頭を叩いた。
「留年しちゃった!」
あまりにも古典すぎるあざとさにツッコミを入れたかったり、ラムダが留年していたという事実を問い詰めたかったり。或いはラムダが生徒会長というのは本当なのかと訊ねたかったり。時には他の生徒会のメンバーについて訊きたかったり。
質問事項は湧き水の如く溢れ返るというもの。しかし質問事項が多すぎて、何から聞けば良いのかわからない。故に俺は黙り込んでしまった。
そんな俺を見て、ラムダはニヤリと笑った。
「さあ、生徒会について話をしようか」
「ここだよ。生徒会室」
アルファ先生はくいと顎で教室を指し、こんこんとノックする。
少し遅れて、教室の中から返事が聞けてくる。返事が聞こえたことを確認すると、アルファ先生はドアをがらがらと開けた。
生徒会室の中は一見すると、普通の教室と変わらない様子だった。それこそ、さっきまで過ごしていた自分のクラスと全く変わらない造りだ。
中にいたのはラムダだけで、他の人は見当たらない。
やはり生徒会に入るという話は嘘だったのだろうか? そんな疑惑が強くなる。
しかしそれよりも感じたことがある。それは疑問。
ここは本当に生徒会室なのだろうか?
俺はアニメや漫画といったサブカルチャーが大好きだから、所謂オタク知識で申し訳ないのだが、生徒会室にはソファーがあるものだと教わった。ソファーとまでは行かなくても、ティーポットや電子レンジ程度はあっても良いはずだ。それがたとえ、現実世界の生徒会であってもだ。
しかし今目の前にあるのは普通の教室だ。しかも特別棟の教室のはずなのに、自分のクラスと変わらない。
自分が生徒会に入ることを疑ってはいたものの、内心生徒会に入ることを少しだけ楽しみにしていた。そんな俺に対してこの仕打ちだ。俺はショックのあまり、声を出せずにいた。
そんな俺を面白がるように、生徒会室にいたラムダがてちてちと近寄ってくる。ラムダは俺の目の前に立つと、無言で俺の顔を覗き込んでくる。
「……何?」
俺が必死に言葉を絞り出すと、ラムダはふんと鼻で笑った。しかし俺に何を言うでもなく、アルファ先生に声をかける。
「アルファ、連れてきてくれてありがとう」
「ああ、そうか。では私は職員室に戻ろう。それじゃあ三人とも、気をつけて活動しろよ」
アルファ先生はそう言い残して、教室から出て行った。そんなアルファ先生を見送ると、ラムダは意地悪そうに微笑んだ。
「とりあえず、座ろうか」
俺と帝野はラムダに促され、席についた。もちろん席は……帝野が窓側の一番後ろの席、俺がその前の席、そして俺の隣がラムダだ。
席に着くなり俺は呟く。
「いや、この座り方なら、教室で良かったじゃん」
ラムダも同じことを考えていたのか「たはは」と苦笑いした。
「まあ、一応生徒会の活動をするわけだからね。生徒会室でやらなきゃダメだろう?」
「名目上?」
「うちは実体も重要視するよ。生徒会が解体されたら、先輩たちに合わす顔がないからね。まあ、そもそもOBとは物理的に会えないんだけどね!」
ラムダはキリリとキメ顔でサムズアップした。
「それは何故……と聞きますわ。帝野家たるもの、先人には敬意を払わなければなりませんわ」
「ムショに入っているから会えないんだよ? いや、会えないこともないけど、非常に面倒くさい」
「そうか。刑務所に……は?」
普通に生活している分には聞くことがないであろう言葉に、思わず聞き返してしまう。
ムショ、所謂刑務所のことだろうか? いや、おそらく聞き間違えだろう。きっと残暑に入っていると言ったんだろう。ほら、沖縄とか四月でも暑いじゃん? 残暑だよ、ザンショ。因みに名古屋の夏は沖縄より暑い。これ豆知識な。
俺が刑務所という言葉は聞き間違えだろうと高を括っていると、ラムダはポンと肩を叩いてきた。
「認めよう? OB、OGは半分以上捕まった経験がある」
「いや! 何でだよ! 模範生代表の生徒会でしょ!? 何でそんなに非行少年少女になってるんだよ!?」
ラムダから告げられた衝撃の事実に俺は思考することを放棄し、ただただまくし立てた。
ラムダはそんな俺を見て、指をさしながらケタケタと笑った。
「全力少年」
「はっ倒すぞ!?」
「ギャハハハハ!」
俺がラムダを睨みつけると、何がおかしいのか、ラムダはさらに大笑いした。
一通り笑うとラムダは目尻の涙を拭い、話し始めた。
「ずっと気付いていたけどさあ、多分二人とも勘違いしているよね」
「何がですの?」
帝野はこてりと首を傾げた。正直言って、かなりあざとい。原因を考えてみると、思い当たる節は一つ、ラムダだ。こいつのあざとい仕草が移ってしまったのだろう。
俺はお嬢様に悪影響を与えるんじゃないと思いながら、ジロリとラムダを見つめる。そんな俺の視線をよそに、ラムダはぺらぺらと話し続けた。
「君たちは生徒会が模範生代表、優等生が所属する会だと思っているのだろうが、それは他の学校の生徒会だ。うちの生徒会とは違う。君たちが想像している模範生代表というのは、うちの学校では生徒議会に当たるな」
「つまり……俺が思っていた生徒会は、この学校では生徒議会って言うの?」
「ああ、各委員会の委員長とその他生徒議会の役職で構成されているのが生徒議会だ。因みに、一応生徒会長も入っているんだぞ?」
「はあ、生徒会長が……」
ラムダの言葉を聞いて、ふとある疑問が浮かんでくる。生徒会長?
俺はぐるりと周りを見渡した。やはり俺たち以外の人間の姿は見当たらない。
すると必然的に生徒会長は目の前のあざと少女になってくるわけで。でもそうは考えにくい。つまり考えられる結論は一つ。
「生徒会長は今日は休みなのか?」
「いや、私だよ?」
ラムダはあっけらかんと俺が切り捨てた可能性を言い放った。
「え……え?」
「どういうことですの!?」
俺と帝野が戸惑っていると、ラムダはさらに追い討ちをかけてくる。
「序でに言うとさあ。私、君たちより年上だから。敬意を払っても良いんだよ?」
「……つまり?」
俺が必死に言葉を絞り出すと、ラムダは舌をぺろと出し、コツンと自分の頭を叩いた。
「留年しちゃった!」
あまりにも古典すぎるあざとさにツッコミを入れたかったり、ラムダが留年していたという事実を問い詰めたかったり。或いはラムダが生徒会長というのは本当なのかと訊ねたかったり。時には他の生徒会のメンバーについて訊きたかったり。
質問事項は湧き水の如く溢れ返るというもの。しかし質問事項が多すぎて、何から聞けば良いのかわからない。故に俺は黙り込んでしまった。
そんな俺を見て、ラムダはニヤリと笑った。
「さあ、生徒会について話をしようか」
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