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第一章:監禁されるは生徒会
第一話:反省文の反省
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蒼白い顔をして、担任の向日葵アルファ先生はため息をついた。
「これが……反省文……だと……?」
停学明け初日。俺と帝野は登校後すぐにアルファ先生に呼び出されていた。おそらく、反省文を確認するためだろう。
一瞬、目の届かない範囲で問題を起こされると困るからとも考えてしまったが、非常に気分が悪いので忘れることにした。
たとえアルファ先生が俺たちのことを睨んでこようとも、忘れてやる。
「おい」
「ひっ! ごめんなさい」
アルファ先生のドスの効いた声を聞いた瞬間、自然と謝罪の言葉が出ていた。
アルファ先生はなまじ美人なだけに、真顔とか怒った顔が怖い。
俺の謝罪の言葉を聞くと、アルファ先生はもう一度ため息をつく。
「まあ……いいだろう。今回だけだ。おいサザンカ。帝野も悪気があったわけじゃないらしい。テンパって何を言っていいかわからなくなってしまったそうだ。許してやれ」
「は、はあ……」
ちらと隣の帝野の下へと目をやる。
帝野は初めて見たときのような気品が感じられる表情ではなく、幼児が親に叱られ、泣き出す前のような顔をしていた。
「サザンカさんと言うのですね。ごめんなさいですわ」
帝野は俺の方へと向き直り、頭を下げた。
喧嘩から一週間、眠りにつくたびに帝野への怒りは薄らいでいくばかりだった。さらに誠意が感じられる謝罪ときた。流石にもう怒りが湧くなんてことはない。
「いや、俺こそごめん。殴ったりしちゃって」
俺も帝野の方へと向き直り、頭を下げた。
謝罪の途中、アルファ先生が「いや、お前ボコボコにされてただろ」とか言っていた気がするが気にしない。まあ、恥ずかしいしね。
俺が頭を上げると、アルファ先生はぱんと手を叩いた。
「はい、これで仲直り! さあ、教室に行くぞ」
「え? 俺ら同じクラスなんですか?」
俺が訊ねると、アルファ先生は顔を引き攣らせた。
「お前……まさかクラスを確認するより先に喧嘩したのか? お前は不良なのか?」
「いや、クラスは確認しましたよ。ただそれだけでクラスメイトの顔と名前が覚えられるわけではないですし、というか顔なんてわからないですし?」
「言い訳ばかり……お前は本当に非行少年だな」
「心外です」
アルファ先生は職員室の引き戸をガラガラと空けると、カラカラと笑いながら歩き始めた。
俺たちも後に続く。
「言い訳して良いわけありませんわ。反省、大切。ワタクシ、この一週間で学びましたわ」
「おお! 流石優等生! どこぞのヤンキーと違って優秀だな。チョコレートでもやろう。ほれ」
アルファ先生はズボンのポケットからチョコレートを取り出し、俺と帝野に手渡す。
俺は会釈しながら受け取り、チョコレートの種類を確認した。
「いや、チョコ味の飴じゃないですか」
「チョコレートは溶けるだろう? 春とはいえ」
「だったら飴だと言えば……」
「言い訳して良いわけありませんわー!」
「流石優等生だな」
「いや、どう考えてもツッコミ待ちなだけでしょう」
そんな話をしながら俺たちは歩いていく。
俺と帝野は直接会話することは少なく、アルファ先生に話しかけるのが大半だった。
だからおそらく、二人きりになったときは微妙に気まずい空気になるのだろう。
しかし、三人で話す時間は楽しかった。
横に目をやると、帝野が育ちの良さを感じさせるように優雅に歩いていた。
帝野は俺と目が合うと、今度は「はえ?」と言いながら小首を傾げた。
その仕草は気品や高圧的と言った言葉からは無縁のもので、帝野桔梗は同級生の普通の女の子だということを感じさせた。
そのことが嬉しいのか、若干笑みが溢れる。
ああ。もしかしたら、帝野とは仲良くできるかもしれないな。
一週間前に喧嘩した相手と仲良くできるかも、なんて言う自分の考えがおかしくて、自然と足取りが軽くなった。
たんたんたん。三人でリズムを刻みながら歩き始める。
怒りから始まった高校生活だったが、今ははやる気持ちを抑えるのに精一杯だった。
「これが……反省文……だと……?」
停学明け初日。俺と帝野は登校後すぐにアルファ先生に呼び出されていた。おそらく、反省文を確認するためだろう。
一瞬、目の届かない範囲で問題を起こされると困るからとも考えてしまったが、非常に気分が悪いので忘れることにした。
たとえアルファ先生が俺たちのことを睨んでこようとも、忘れてやる。
「おい」
「ひっ! ごめんなさい」
アルファ先生のドスの効いた声を聞いた瞬間、自然と謝罪の言葉が出ていた。
アルファ先生はなまじ美人なだけに、真顔とか怒った顔が怖い。
俺の謝罪の言葉を聞くと、アルファ先生はもう一度ため息をつく。
「まあ……いいだろう。今回だけだ。おいサザンカ。帝野も悪気があったわけじゃないらしい。テンパって何を言っていいかわからなくなってしまったそうだ。許してやれ」
「は、はあ……」
ちらと隣の帝野の下へと目をやる。
帝野は初めて見たときのような気品が感じられる表情ではなく、幼児が親に叱られ、泣き出す前のような顔をしていた。
「サザンカさんと言うのですね。ごめんなさいですわ」
帝野は俺の方へと向き直り、頭を下げた。
喧嘩から一週間、眠りにつくたびに帝野への怒りは薄らいでいくばかりだった。さらに誠意が感じられる謝罪ときた。流石にもう怒りが湧くなんてことはない。
「いや、俺こそごめん。殴ったりしちゃって」
俺も帝野の方へと向き直り、頭を下げた。
謝罪の途中、アルファ先生が「いや、お前ボコボコにされてただろ」とか言っていた気がするが気にしない。まあ、恥ずかしいしね。
俺が頭を上げると、アルファ先生はぱんと手を叩いた。
「はい、これで仲直り! さあ、教室に行くぞ」
「え? 俺ら同じクラスなんですか?」
俺が訊ねると、アルファ先生は顔を引き攣らせた。
「お前……まさかクラスを確認するより先に喧嘩したのか? お前は不良なのか?」
「いや、クラスは確認しましたよ。ただそれだけでクラスメイトの顔と名前が覚えられるわけではないですし、というか顔なんてわからないですし?」
「言い訳ばかり……お前は本当に非行少年だな」
「心外です」
アルファ先生は職員室の引き戸をガラガラと空けると、カラカラと笑いながら歩き始めた。
俺たちも後に続く。
「言い訳して良いわけありませんわ。反省、大切。ワタクシ、この一週間で学びましたわ」
「おお! 流石優等生! どこぞのヤンキーと違って優秀だな。チョコレートでもやろう。ほれ」
アルファ先生はズボンのポケットからチョコレートを取り出し、俺と帝野に手渡す。
俺は会釈しながら受け取り、チョコレートの種類を確認した。
「いや、チョコ味の飴じゃないですか」
「チョコレートは溶けるだろう? 春とはいえ」
「だったら飴だと言えば……」
「言い訳して良いわけありませんわー!」
「流石優等生だな」
「いや、どう考えてもツッコミ待ちなだけでしょう」
そんな話をしながら俺たちは歩いていく。
俺と帝野は直接会話することは少なく、アルファ先生に話しかけるのが大半だった。
だからおそらく、二人きりになったときは微妙に気まずい空気になるのだろう。
しかし、三人で話す時間は楽しかった。
横に目をやると、帝野が育ちの良さを感じさせるように優雅に歩いていた。
帝野は俺と目が合うと、今度は「はえ?」と言いながら小首を傾げた。
その仕草は気品や高圧的と言った言葉からは無縁のもので、帝野桔梗は同級生の普通の女の子だということを感じさせた。
そのことが嬉しいのか、若干笑みが溢れる。
ああ。もしかしたら、帝野とは仲良くできるかもしれないな。
一週間前に喧嘩した相手と仲良くできるかも、なんて言う自分の考えがおかしくて、自然と足取りが軽くなった。
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