conceive love

ゆきまる。

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「お帰りなさい、オリバー」

「ああ、ただいま」

「食事の用意ができてるよ。マルコが腕によりを掛けて準備したんだって」

「それは楽しみだな、早速向かおう」


きっかけはよくある政略結婚だった。
かと言って仲が悪いわけではなく、今日は2回目の結婚記念日。


お互い政略結婚と分かっていながらも受け入れた縁談。
僕たちは共通の悲しみを持っていた。

----運命の番

それはαアルファΩオメガそれぞれ生きている間に出会えるかどうか分からないけれど、出会えばすぐにお互い無しでは生きていけなくなると言われるほど強い絆で結ばれた番だという。

でも僕たちはその運命の番を亡くしていた。

だから縁談を受け入れた。




ダイニングに着くといつにも増して豪華な食事が用意されていた。

「わぁ…とっても美味しそうだね、オリバー!それに僕の好きなものたくさんある!」

「マルコに礼を言わねばならんな」

「うん!そうだね!」


ここへ嫁ぐ際は受け入れて貰えるかとても不安だったけど、そんな不安はすぐにかき消されるほどに屋敷の人々は皆親切で、2年経った今もこうして記念日にはオリバーの好物はもちろん、僕の好物までたくさん用意してくれる。



運命の番が死んでしまったのはもちろん悲しいけれど、いくら悲しんでも死人が還る事は絶対に無い。

だから、オリバーと結婚した。

オリバーも僕を愛してくれているし、十分幸せだ。





「あ、」

それぞれ席に着いた時、腹に衝撃があった。

「ん?どうした?」

「いえ、この子もこの食事が楽しみみたい」

そう微笑んで少し膨らんだ腹を撫でれば、それなら早速いただくとしよう、とオリバーに促され食事を始める。




結婚後の初めての発情期ヒートでは妊娠しなかった、2回目の発情期ヒートの後で妊娠していたこと知ったのは子が流れてからだった。

Ωオメガだからオリバーと結婚できたのに、世継ぎを産めないならば意味がないと何度も泣いたけど、その度にオリバーは焦らなくていいと慰めてくれた。


それから4回目の発情期ヒートでやっと妊娠できた。


今度はちゃんと産んであげられますように。

願いが通じたのかもう5ヶ月が経とうとしている。

「あと5ヶ月もすれば産まれてくるなんて、あっという間だね」

「…ああ」

「やっぱり、αアルファの男の子がいい?」

「元気に産まれてくるならαアルファでもΩオメガでも、男でも女でも…どちらでもいいさ」

「ふふ、そうだね」


(あと5ヶ月…無事に育ってね…)




そう思いながら、2度目の結婚記念日はオリバーと二人でゆっくりと過ごし、眠りについた。


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