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第一章 悪役令嬢と女神様

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 慌てて後ろを振り返るとミシェル顔負けの黒い笑みを浮かべた王子様がいた。無論、我が国の真っ黒々助ノワールである。彼はその笑みのまま私の瞳を覗き込んでくる。その意味が分からなくて私も同じように彼の瞳を覗き込んだ。するとノワールはため息をつく。私にはその意味だって分からない。

「全く、君はすぐ他の男に尻尾を振って…」

 振ってないし。男って言ってもロランだよ?そもそも恋愛対象に入らない。なにせお互いにお漏らしの数を知っている仲だ。数はお互いに黒歴史なので口に出すことはしないけれど。
 それにこれはモブを極めるための会議だ。色恋なんて巻き込む余裕はない。恋愛をするのはモブを極めてからだ。

「この私だけではそんなに不満かい?」

 そりゃあ不満に決まっている。貴方と一緒に居たらモブになれないもん。
 彼はゲームのメイン攻略対象だ。関わったら脇役が最低、下手したらヒロインになる可能性まである。それは嫌だ。王子様は王子様とくっついてこそ真のハッピーエンドなのだ。ヒロインはその真のハッピーエンドを邪魔する者である。自分がそうなるのはしにたくなるほど嫌だ。

「ロラン、待ち合わせは今夜…そうだな、月が一番高く昇るときに」

 ん?え、まさかの王子とモブでBL!?今まで考えたこともなかったけどこれはこれでいいかもなぁ。

「おい勘違いすんなよ?ただの仕事だからな」

 ええ、存じておりますとも!むしろそれでいいのです。だってロランはそう思っていた方がおいしいですから!
 例えば、
殿下っ仕事の話をするのではなかったのですか!?、そうだこれは仕事だよ…、殿下何を…っ、おや、どうしたんだい?そんなに頬を染めて…
 なーんて…きゃああああっ、やっぱり間近で見たい!!そんなおいしいシーンは見逃せないわ!!さ、どうやって部屋を抜けだそうかしら?ふふ、夜が楽しみだわ。私は小部屋の小さな窓の外を見、何色もの絵の具で描かれた夕焼けを見上げた。
  今はまだ太陽が沈みきっていないから月が一番高く昇る刻はまだ先だ。

「じゃあそういうことで」

「ああ…じゃあシルヴィラ行こうか」

 え…どこに?ヤバい、全然話を聞いてなかった。

「部屋は私の部屋の隣でいいかい?」

 私が王宮に泊まることって決定事項なの!?でも両親に何も言ってないしお泊まりは後日改めて…。

「ああ、この件はは君の両親にも根回し済みだから安心してほしい」

「ミシェル、俺らも帰ろう」

 全然安心できないよ!?貴方根回しって言いましたよね?なにこの人怖い。てかロランもミシェルもスルーしないでよ。助けを求めたいのにさっきから目が一度も合わないんですが!

「さ、行こう」

「…」

 ちょっと悔しいけど仕方ないか。くそぅ、ロランめ。あとでチェスの駒を一個盗んでやる。ミシェルは可愛いから許す。
 はぁ、とため息をつく私。この王子、根回しが完璧過ぎる。本当に12歳かよ。
 完全に逃げ道を塞がれた私は大人しくついていくことにした。
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