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第4章

後始末

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白羅 side

「よし、城の壊れた場所も元に戻したし、王女様の方を解決しようか~」

「は、はい...」

ナギアさんは修復不可能と思われる所を一瞬で直したり、何がそこに置いてあったかも分からない場所も完璧に直してしまった。
僕達も手伝うと言ったが、結局やる事は殆どないので、気絶して倒れているクラスメイト達を城の空いている部屋などに寝かせたりした。

ナギアさんの能力に慣れたと思っていても、毎回驚かされてばかりだ。
確かナギアさんが夕食時に教えてくれた『想像強化』というのが、ナギアさんがこの世界に来る時にお願いしたものらしい。
佐倉とかも言っていたが、異世界での魔法の使い方の定番はイメージ力が大切だそうだ。そして、この世界も同じようにイメージ力が重要になっている。

ナギアさんは異世界ものの小説が好きなようで、もし異世界に飛ばされて能力が貰えるとしたら、絶対イメージを強化出来るようなのを選ぶと言っていた。

ナギアさん自身の修行話を聞いたことがあったが、溜息しか出なくなるような内容ばかりだった。
属性魔法の練習は全属性+それぞれの混合魔法の全組み合わせをしながら、生き物の形にして生きているように操る修行。
剣術は影で沢山の分身を作って一対多でやるそうだ。これだけ聞くと少しおかしいが普通の剣術修行に思える。しかし、驚く内容はこの後だ...
剣術修行をすると周りに被害が起こりやすいという理由で、広い別空間を創り出し、そこでやっていると言うのだ。

もちろん、リルリアさんも一緒だそうだ。


「王女様って、そういえば何処に行ったんですかね?
もしかしたら、戦闘に巻き込まれて既に...」

「あぁ、大丈夫だよ。
戦闘が始まったあと、謁見の間の奥の部屋に逃げ込んだんだけど、絶対被害に遭うと思ったから場内にいる人と一緒に纏めて一つの部屋に閉じ込...避難させたんだ~」

なるほど、だから皆を部屋に運んだ時に誰もいなかったのか。
...ナギアさん、今「閉じ込めた」って言おうとしてなかったか?

「じゃあ、王女様と城に仕えている何人かをここに呼びますか~」

ナギアさんはそう言うと、目の前の床に王女様と何人かが現れたが、その表情は何が起こったのか分からずにポカンとしていた。

「王女様、貴方と契約した悪魔は勇者によって滅ぼされました。
罪を認めて女王の座を降りてくれませんか?」

「え...最上位悪魔で最強の肉体を持つメリルが殺られたの......
ちっ!お前らは女王に逆らった反逆者として世界中に広めて......うっ...」

「仕方ありませんね、最後の手段を使います」

普通の人なら動けなくなる程の圧を飛ばしながら、怒る王女様は突然蹲った。

「わ、私は何て事を...」

「貴方は今まで何の罪をしてきたのですか?」

「悪魔の生贄として魔物や奴隷、スラム街の人達の命を奪った...直接じゃなくても、私が命令したこと......うっ...いやぁぁぁああぁぁ!」

蹲ったままの王女様は、先程の怒気はなく弱々しい声で話した後、突然泣き叫び出した。

「ナギアさん...洗脳とかしたんですか?」

「そんな事はしてないよ...
僕は女王の中にある罪へ意識を高めただけだよ。
城を直している間に女王様の部下とかを調べたら、生贄の為に人を攫ったり、自分の自己満足の為だけに罪のない人の命を奪わせたりと色々してる事が分かったんだ」

王女...テルシャが僕達を召喚したばかりの頃に見せていたあの笑顔は全て演技だったのかな...そう思うと悲しいな。

「そういえば、宰相は何故死んだのですか?」

「言うの忘れてたね。
悪魔召喚時に宰相は悪魔に殺されたよ。
最後に必要と思われていた王族の血は契約者を登録するようなものだったらしく、契約者となれなかった宰相は悪魔に殺された取り込まれたんだ......あっ来た」

ナギアさんは僕らに教えてくれた後、何も無い空間を見つめて呟くと、ナギアさんの見ている先に見覚えのある人が現れた...名前は忘れてしまったが、このナータリャクラ国の冒険者ギルドのギルマスだ。

「貴方の影って本当に本人と見分けがつかないわね...それと、影なのに映像を映す魔法を使えるのが凄いわ。まず、影が魔法を使うなんて他では聞いたことないけどね」

「こんにちは、グリディーナさん。
後はお願いしても良いですか?」

「分かったわ。...ほら、貴方達!
ポカンとしてないで仕事を始めるわ!手伝いなさい」

ギルマスは王女様の手を引きながら、王女様と一緒に連れてこられた数名に声を掛けると「何故我々が...」と言い始めたが、ギルマスが一喝した事ですぐに動き始めた。

「勇者達が起きるまでは城にいると良いよ。
もう、あの悪魔を倒せるのならば、主に挑まない限り死ぬ事は難しいと思う」

「ということは、もう修行は終わりですか?」

「それでも良いよ。
勇者達の帰還する手段が見つかったんだけど、しばらく時間がかかるんだ。
だから、その間の期間の過ごし方は自由だ。

詳しい説明は明日にでも皆に教えるね」

とうとう期間方法が見つかったのか、ナギアさんの事だから「帰還する転移装置作ったよ~」とか言いそう......流石に別世界とこの世界を繋ぐことはナギアさんでも無理か。


悪魔との戦いが終わり、王女様の問題もある程度解決した。
そして、僕達の最終目的である帰還方法もナギアさんが見つけてくれた...

ナギアさんは「明日、城に行くからまたね。しっかり休むんだよ~」と言いながらリルリアさんとモチとプニを連れて消えてしまった。

「僕達も空いてる部屋を借りて休もうか」

僕達は少しずつ現れ始めた疲労感を抑えながら部屋に向かうのだった...






======================
どうも!こんにちは

ナギア君がやろうと思えば、超平和な世界征服も可能でしょうね。
記憶や思考を操って自分の良い方向に...


裏で1番大変なのがギルマスのグリディーナさんですね(^^;
次の王を決めるまでの間、ギルド+国の仕事をこなし、これまでの事件をまとめた書類を作成した後、各国に知らせたり、ナギア達の指名手配を解いたり......
ナギアもフォロー出来ることはすると思いますが、大変ですね。
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