上 下
173 / 203
第4章

上位の悪魔召喚

しおりを挟む


ナータリャクラ国 現王女 テルシャ side

「とうとう準備が整ったぞ!」

「ご苦労様です。これに悪魔とやらを呼んで入ってもらうのですね」

宰相に呼び出された私は城の地下にある研究施設に足を運ぶと、大きな水槽の中に20代くらいの男性が入っていた。
...最後に見た時はイケメンとだけしか思わなかったが、その人型兵器は『美の神』の生まれ変わりと言っても不思議でないほど完成されていた。

「美形に凝りすぎてませんか?」

「いえ、肉体レベルを上げていく段階で少しずつ無駄を省いていった結果がこれですよ。
なので、見た目だけではないので御安心を」

私個人の意見としては、人型兵器がこの世界をどれだけ滅茶苦茶にしてくれるかを期待しているので、美形がどうあれ活躍出来る程の力があるのならば文句はない。

「おかげさまで、贄も召喚の術式の準備も整いました。
しかし、上位の悪魔召喚で最後に必要なものがあるのですよ...」

「なにかしら?
すぐに用意できそうな物なら、用意しますよ?」

「それは、王族の血液を数滴なのですが...王女様から...」

「良いわ。血を入れる容器を用意しなさい」

「...え?......ありがとうございます」

何故か申し訳なさそうに聞いてきたので、私はすぐに「良い」と答えると宰相は少し驚いた表情をしていた。
何年も掛けて、ここまで計画を進めたのだから、私の血くらい容易いものです。

「お待たせしました。
こちらに王女様の血をお願い致します」

「わかった」

私は懐から護身用にと常日頃から持たされていた高価な装飾が施された短剣を取り出し、刃先に自分の指を当てた。
短剣の切れ味が良いのか、痛みを感じることなく指先から血が溢れ出してきたので、私は渡された容器に血を何滴か垂らす...

「その位で大丈夫です。
そこらの庶民の血より王族の血の方が、強力な悪魔を召喚できると分かったので、本当に助かりました」

「そうですか、これで召喚条件は整いましたか?」

「はい!これで召喚できます!
召喚部屋を作ってあるので、そちらに行きましょう」

宰相の後に続き召喚部屋とやらの部屋に着くと、床に召喚陣が書かれているだけの普通の広い部屋だった。

「では、始めましょう...
おい、始めろ!」

「はっ!」
 
宰相は自分の部下達に指示をすると、召喚陣の中心に先程の見た人型兵器が水槽に入れられたまま置かれた。

「これから贄をエネルギーへと変換し召喚陣を発動させます」

贄をエネルギーに変換しているからか、少し地揺れが起こった後、召喚陣は青く輝き始めた。

「後は、この血を垂らして...」

最初は魔法陣の端から、私の血を垂らすと血の量は少ない筈なのに魔法陣全体に広がっていった。
そして、魔法陣の青色の光が赤色に変わっていった瞬間、目の前が真っ白になるほどの光を放った。

「うわぁ!」
「きゃっ!」

パリン!

『...ふぅー、呼ばれたと思って応じてみたが......過去最高のbodyボディーだ!
なんて魂に馴染む体なのだろうか...perfectパーフェクト!』

光が収まり人型兵器の方を見ると、水槽を割って出てきたのか、自分の体を見つめながら意味不明に叫んでいた。

「お前が上位の悪魔か?」

『なんだい君は?』

「私はお前の契約者だぞ!
これからお前に一つ目の命令をあた......がぁ...ぁぁぁ...」

宰相が人型兵器に入り込んだ悪魔に命令をしようとした瞬間、宰相の胸元に拳一つ入る程の穴が空いた。
よく見ると悪魔の手元には赤色の塊を持っていた...宰相の心臓だろう。

『俺に命令すんな...』

悪魔は宰相の心臓を握りつぶした後、宰相の体を手で持ち上げ、そのまま自分の体に取り込んだ。

『全然足しならないが、ないよりはマシか...』

「あ、あなた、契約は成立してるはずでしょ?
何故殺したの?」

『殺しては駄目だったか?
それと契約はちゃんと成立してるさ』

「じゃあ、契約者である宰相を殺したの?」

『...何か勘違いしているみたいだから教えとこう。俺の契約者は貴方ですよ?美しいお嬢さん』

「え?...なんで?」

『当然じゃないか。俺を召喚するために差し出した生贄達は貴方の部下が持ってきたのであって、あの男や男の部下ではない。
それに、契約時に一番重要である血は貴方の血だ。だから、俺の契約者は貴方という訳だ。
...あぁ、安心してほしい。生贄の数は結構な量を頂いているから、大抵の事は言うこと聞くよ』

「え?王族の血でなければ、上位の悪魔を召喚出来ないんじゃ?」

『間違いを2つ訂正させてもらおう。
1つは、王族の血とかは関係ない。
王族が上位の悪魔を呼び出せたのは、王族だけができる権力を使って生贄とかの準備を完璧にしていたからだ。
庶民とかお金に余裕のない奴らは、上位の悪魔召喚を行っても生贄が少ない等の問題で、下位の悪魔しか召喚されなかった。これらの事が原因でそう勘違いしているんだろう。

もう1つは、俺は弱っちい上位の悪魔ではない...最上位の悪魔だ。
そこのところは間違えるなよ』

予想外の事に宰相ではなく私が悪魔...最上位の悪魔の契約者になってしまった。
私は最上位の悪魔に宰相が殺された光景を見てパニックになっている宰相の部下達を静めた後、最上位の悪魔に着せる服を渡した。

「予想外の事態が起こったけど、これはこれでやりやすくなったかもね...
これからが楽しみになってきたわ...」


ナータリャクラ国 王女 テルシャは最上位の悪魔が着替え終わるまでの間に、これからの計画を鼻歌を歌いながら練り直すのだった...





======================
どうも!こんにちは

最初に悪魔の雰囲気を「何こいつ?うざい!」というふうに書こうとしたのですが、上手く出せないので諦めました...

そして、
宰相さんはここで退場です。
もっと何かしてから
退場させたかったですね( ´・ω・`)
しおりを挟む
感想 586

あなたにおすすめの小説

異世界でのんびり暮らしたい!?

日向墨虎
ファンタジー
前世は孫もいるおばちゃんが剣と魔法の異世界に転生した。しかも男の子。侯爵家の三男として成長していく。家族や周りの人たちが大好きでとても大切に思っている。家族も彼を溺愛している。なんにでも興味を持ち、改造したり創造したり、貴族社会の陰謀や事件に巻き込まれたりとやたらと忙しい。学校で仲間ができたり、冒険したりと本人はゆっくり暮らしたいのに・・・無理なのかなぁ?

【助けて! ナギア君】

drop
ファンタジー
【死んだのに異世界に転生しました!】に登場するキャラ達による小さなお話です。 お話をある程度知らないと全くわからないになるので気を付けて下さい。 ※このお話はナギアという主人公が困っている人を助けていくという話です。 「死んだのに異世界に転生しました!」の2章中盤くらいから書いているので、初めての方が読むとネタバレの恐れがありますので注意!

システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。

大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった! でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、 他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう! 主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!? はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!? いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。 色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。 *** 作品について *** この作品は、真面目なチート物ではありません。 コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております 重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、 この作品をスルーして下さい。 *カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。

異世界転生した俺は、産まれながらに最強だった。

桜花龍炎舞
ファンタジー
主人公ミツルはある日、不慮の事故にあい死んでしまった。 だが目がさめると見知らぬ美形の男と見知らぬ美女が目の前にいて、ミツル自身の身体も見知らぬ美形の子供に変わっていた。 そして更に、恐らく転生したであろうこの場所は剣や魔法が行き交うゲームの世界とも思える異世界だったのである。

異世界無知な私が転生~目指すはスローライフ~

丹葉 菟ニ
ファンタジー
倉山美穂 39歳10ヶ月 働けるうちにあったか猫をタップリ着込んで、働いて稼いで老後は ゆっくりスローライフだと夢見るおばさん。 いつもと変わらない日常、隣のブリっ子後輩を適当にあしらいながらも仕事しろと注意してたら突然地震! 悲鳴と逃げ惑う人達の中で咄嗟に 机の下で丸くなる。 対処としては間違って無かった筈なのにぜか飛ばされる感覚に襲われたら静かになってた。 ・・・顔は綺麗だけど。なんかやだ、面倒臭い奴 出てきた。 もう少しマシな奴いませんかね? あっ、出てきた。 男前ですね・・・落ち着いてください。 あっ、やっぱり神様なのね。 転生に当たって便利能力くれるならそれでお願いします。 ノベラを知らないおばさんが 異世界に行くお話です。 不定期更新 誤字脱字 理解不能 読みにくい 等あるかと思いますが、お付き合いして下さる方大歓迎です。

スキルポイントが無限で全振りしても余るため、他に使ってみます

銀狐
ファンタジー
病気で17歳という若さで亡くなってしまった橘 勇輝。 死んだ際に3つの能力を手に入れ、別の世界に行けることになった。 そこで手に入れた能力でスキルポイントを無限にできる。 そのため、いろいろなスキルをカンストさせてみようと思いました。 ※10万文字が超えそうなので、長編にしました。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

スキル【アイテムコピー】を駆使して金貨のお風呂に入りたい

兎屋亀吉
ファンタジー
異世界転生にあたって、神様から提示されたスキルは4つ。1.【剣術】2.【火魔法】3.【アイテムボックス】4.【アイテムコピー】。これらのスキルの中から、選ぶことのできるスキルは一つだけ。さて、僕は何を選ぶべきか。タイトルで答え出てた。

処理中です...