111 / 203
第3章
魔族軍の指揮官
しおりを挟む魔族 side
「さぁ、目的地はもう少しですよ~」
背中から蝙蝠のような翼を生やした女性は魔族の軍全体に透き通るような声で喋った。
フルガファダイア帝国を攻め滅ぼし、そこを起点に人族を滅ぼすというのが今回の作戦です。
今頃、私の部下がデアトリーナ国と交戦状態だろう。
人族は自信家なのか馬鹿なのか分からないが、他の敵国を放置して人族同士で戦争をしているらしい。
更に阿呆なのか主戦力を殆ど連れて戦争に出ていったとかで、現在のフルガファダイア帝国の騎士は雑魚しか残っていないらしい。
「気を付ける点は、高ランクの冒険者さんね~」
「フリディアティ様!
突然、フルガファダイア帝国の方から沢山の騎士がこちらに向かってきているそうです!
数は3万以上はいるかと思います!」
「あら?そうなのですか~
何処から湧いてきたのか分かりませんが、向かってきているのならばBを突撃させなさい」
何かがおかしいわね..
フルガファダイア帝国内の騎士はそんなに多くは無いはず。
戻って来たとしても速すぎるし...途中で私達に気づき戻って来たのかしら?
「どうも、こんにちは。
あなたがここの魔族の指揮官ですか?」
私がフルガファダイア帝国について考え事をしていると後ろから声を掛けられ振り返ると、そこには小さな男の子が立っていた。
「...驚いたわね~。そこまで気配を消せるなんて、見た目にそぐわない実力者さんかな?」
「小さい頃から鍛えてますからね。そこらの人には負けないと思いますよ?」
「ふふふ、綺麗な黒髪黒目ね。
指揮官...ん~そうとも言える立場かしらね。
用件は何?戦うならこの人数を相手に出来るかしら?」
既に周りの部下も男の子の存在に気づき警戒している。私の合図があればすぐに動けるだろう。
男の子は私の軽く放った威圧を受けても、笑顔を崩すこと無く喋り始めた。
「争い事はあまり好きじゃないんですよね。出来るなら穏便に済ませたいのが本音です。
用件は兵を退いてください」
「出来ない用件ね~(殺れ)」
私は部下に脳内で合図を送った。
所詮は人族である。冒険者ランクが高そうですが、この人数と不意打ちを受ければ耐えきれぬだろう。
私の合図と同時に男の子の後にいた部下は音と気配を決して槍で突き刺そうとし吹き飛んだ.....
「グフゥォォ!!!」
「うーん、不意打ちするのならば殺気も消した方がいいですよ?
気配を消すのが上手くても殺気を消さない人が多いですからね」
不味いですわね...
本当に実力者のようだけど、どれだけの強さを持っているのかが分からない。
「脅すのは嫌ですが、分からせるには仕方ないですね」
男の子がそう言った瞬間、凄まじい殺気が放たれた。
私は自分の威圧を最大に引き出し男の子の殺気を弱めるも、意識を保つことに精一杯だった。
「やっぱり、リーダー的な人は対処能力が凄いね。これで撤退してくれるかな?」
「はぁ.....これはやばいわね..」
私は周りを見渡すと辛うじて立っている者が十数名、残りは気絶してしまっていた。
少年は笑顔のままこちらの返答を待っているが、戦おうとすれば一瞬で殺られる事はわかった。
「わかったわ...今回は撤退するわ。
でもね、このままだとここに迫って来ている騎士達に私の部下が皆殺しにされてしまうわ」
「あっ....魔族領土の入口付近に転移させますね。騎士の方は僕が説得しておきます」
「あなたって本当に規格外ね...」
「では、さようなら」
男の子の言葉を最後に私の目の前は暗くなるのだった...
ナギア side
「先ほどの殺気はやはりお前だったか..」
魔族の軍団を転移させてからしばらくすると、騎士団長と実力のある騎士たちがやって来た。
先程の殺気せいなのか顔色が優れない人が多いと感じた。
「あっ..調整ミスってました。すみません」
「気にしなくていい。これだけ離れて薄まっていた殺気に当たっただけで体調を崩すやつは、その辺りの鍛錬が苦手な奴だけだ。
一つ聞きたいが、ここに魔族の軍勢がいたはずだがどうした?」
「(脅して)帰ってもらいました」
「あの殺気からして脅したのだな。
だが何故魔族を生かして返した?
お前程の実力なら余裕だろ?」
「あの位ならば出来ますけど魔族の中にも良い人は沢山いると思うし、何もしてない人を殺したくなかったというのもありますね」
そう言うと騎士団長は納得してくれたのか、頷いた。
「貴様がナギア・ハールトークか....魔族は全て滅ぼさなければいけない存在。貴様はそれを逃がした。よって、貴様をここで殺してやる!」
「止せ!」
怒りで騎士団長の言葉が聞こえなかったのか、数人の騎士がナギア目掛けて突撃してきた。
「ぅぅ....」
「落ち着いて下さい。
魔族は人族のように沢山います。
そして、全てが同じではありませんよ?」
「だ....だま..れっ!」
突撃してきた騎士達を重力魔法で地面に叩きつけ押さえつけて落ち着かせようとするが駄目だった。だが、騎士団長の説得で渋々ながらも襲うは止めたようだ。
「今は魔族の脅威は無いですが、国の方は頑張って下さいね」
「あぁ、今回はありがとう。
お陰で民に被害が無く事が終わったよ。約束の方は守れるよう善処する」
騎士達がフルガファダイア帝国に帰っていくのを見送った後、ナギアはデアトリーナ国とイソーギス国にリアとモチとプニを迎えに行くのだった....
======================
どうも!こんにちは
お気に入り数が3800越えました!
ありがとうございます!
久しぶりに1章の最後に出た魔族の1人が出てきましたね。
他の魔族はいつか出ますよ!
45
お気に入りに追加
9,466
あなたにおすすめの小説

異世界でのんびり暮らしたい!?
日向墨虎
ファンタジー
前世は孫もいるおばちゃんが剣と魔法の異世界に転生した。しかも男の子。侯爵家の三男として成長していく。家族や周りの人たちが大好きでとても大切に思っている。家族も彼を溺愛している。なんにでも興味を持ち、改造したり創造したり、貴族社会の陰謀や事件に巻き込まれたりとやたらと忙しい。学校で仲間ができたり、冒険したりと本人はゆっくり暮らしたいのに・・・無理なのかなぁ?

異世界転生した俺は、産まれながらに最強だった。
桜花龍炎舞
ファンタジー
主人公ミツルはある日、不慮の事故にあい死んでしまった。
だが目がさめると見知らぬ美形の男と見知らぬ美女が目の前にいて、ミツル自身の身体も見知らぬ美形の子供に変わっていた。
そして更に、恐らく転生したであろうこの場所は剣や魔法が行き交うゲームの世界とも思える異世界だったのである。

システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。
大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった!
でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、
他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう!
主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!?
はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!?
いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。
色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。
*** 作品について ***
この作品は、真面目なチート物ではありません。
コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております
重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、
この作品をスルーして下さい。
*カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる
十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

異世界召喚失敗から始まるぶらり旅〜自由気ままにしてたら大変なことになった〜
ei_sainome
ファンタジー
クラスメイト全員が異世界に召喚されてしまった!
謁見の間に通され、王様たちから我が国を救って欲しい云々言われるお約束が…始まらない。
教室内が光ったと思えば、気づけば地下に閉じ込められていて、そこには誰もいなかった。
勝手に召喚されたあげく、誰も事情を知らない。未知の世界で、自分たちの力だけでどうやって生きていけというのか。
元の世界に帰るための方法を探し求めて各地を放浪する旅に出るが、似たように見えて全く異なる生態や人の価値観と文化の差に苦悩する。
力を持っていても順応できるかは話が別だった。
クラスメイトたちにはそれぞれ抱える内面や事情もあり…新たな世界で心身共に表面化していく。
※ご注意※
初投稿、試作、マイペース進行となります。
作品名は今後改題する可能性があります。
世界観だけプロットがあり、話の方向性はその場で決まります。
旅に出るまで(序章)がすごく長いです。
他サイトでも同作を投稿しています。
更新頻度は1〜3日程度を目標にしています。

転生したら神だった。どうすんの?
埼玉ポテチ
ファンタジー
転生した先は何と神様、しかも他の神にお前は神じゃ無いと天界から追放されてしまった。僕はこれからどうすれば良いの?
人間界に落とされた神が天界に戻るのかはたまた、地上でスローライフを送るのか?ちょっと変わった異世界ファンタジーです。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる