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特別企画枠
Arcobaleno-Stella
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七香は今日、八歳になりました。
学校から帰ってきて、お母さんとお父さんと一緒に夜ご飯を食べました。
レタスと千切りキャベツとミニトマトが入ったグリーンサラダ。
ローリエで煮込んだ玉ねぎとベーコンと玉子のコンソメスープ。
大きな塊を焼いてアルミホイルに包んでおいたローストビーフ。
イチゴがたくさん乗ったホールケーキも、家族三人で分けて食べました。
夜ご飯のお片付けが終わると、七香はお母さんとお父さんから、とっても大きなプレゼントをもらいました。
いろんな動物が小さく描かれたラッピング用紙と、金色の縁取りが綺麗な赤いリボンで包まれている、両腕をうんと伸ばしてようやく持てるくらいの大きな大きな四角いプレゼントです。
七香は、可愛らしい動物の絵と、キラキラしたリボンを見て大喜び。
その場で開けても良いかどうか、お母さんとお父さんに訊きました。
お母さんとお父さんは、もちろん良いよ、と答えました。
中には何が入っているのだろう?
七香はドキドキわくわくしながら、リボンをほどいて、せっかくの可愛いラッピング用紙も破いてしまわないように、少しずつ剥がしていきました。
ラッピングをすべて取り払うと、そこには四角い箱がありました。
四角い箱には、たくさんの色が印刷されていて、とてもにぎやかです。
印刷の中には、なにやら道具のような物が写っている写真もありました。
先端の尖りに毛糸を引っ掛けた金の棒は、編み物に使う物でしょうか。
白っぽい粘土から千切られた欠片が、ウサギや猫の形になっています。
たくさん並ぶ小瓶の中と、その手前には、色とりどりのビーズが散り。
半透明な器とその周りには、透き通った液体と透明なアクセサリーが。
タンバリンみたいな形の白い布には、針と糸で植物が描かれています。
その四角い箱を床に置いて上から見ると、プラスチックの持ち手の所に、金色の大きな文字で『Arcobaleno-Stella』と書かれていました。
七香には、その文字が読めません。
文字を模様だと思った七香は、特に気にせず、箱を上から開きました。
開いた箱のフタのすぐ下には、箱の中身を隠すような仕切り板があって、その仕切り板の上には、真っ白な封筒がくっ付いていました。
七香は、真っ白な封筒を持ち上げて、表と裏を見比べます。
どうやら、仕切り板にくっ付いていたほうから封筒を開けるようです。
シールも何も付いていない封筒を開くと、中には黒いカードがあります。
一枚だけ入っている、表も裏も真っ黒な、プラスチック製のカード。
大きさは、七香の右手と同じくらいです。
何が書いてあるんだろう?
七香は、拡げた封筒の口に右手の指を入れて、カードを掴みました。
すると、突然。
七香の頭の中に、不思議な声が聴こえてきました。
『ああ、やっと見つけた。君が、新しい『クレアトーレ』なんだね』
不思議な声は、女の人みたいに高い音、男の人みたいに低い音で、七香に何かを話しかけています。
キョロキョロと周りを見ても、お母さんとお父さん以外は誰も居ません。
お母さんとお父さんには聴こえていないのか、二人は七香を見つめたままピクリとも動きません。
「あなた、だあれ?」
首を傾げた七香の質問に、不思議な声が答えました。
『はじめまして。ボクは、クラフトフェアリー。君は、物作りが好き?』
不思議な声のクラフトフェアリーは、声だけで、七香に質問しました。
七香は、クラフトフェアリーの質問に頷いて答えます。
「七香はね、物を作るのね、好きだよ。昨日もね、ビーズのアクセサリーを作ってたの。お母さんのスマホに付ける、黄色いストラップなの」
七香のお母さんは、ひまわりの花が好きです。
だから、七香はお母さんに喜んでほしくて、ひまわりの花をイメージした黄色のストラップを作っていました。
でも、そのストラップはまだ未完成。
夜、これから寝る少し前に、買っておいたラッピングバッグに詰めたら、それをお母さんにプレゼントして、それでやっと完成する贈り物です。
そんな話を聴いたクラフトフェアリーは、嬉しそうに声を弾ませます。
『素敵だね。七香は、贈りたい相手のことを考えて、それから、作ることを楽しんでいるんだね。それって、すごくすごく、素敵な気持ちだね』
七香のお母さんは、働き者です。
朝、七香よりも早く起きて洗濯をしているし、朝ご飯を作ってくれるし、お弁当が必要な日は欠かさず作ってくれます。
七香が学校に行く時も、お父さんが仕事に行く時でも、忘れ物が無いか、一緒にカバンの中身を見直してくれます。
七香が学校から帰って来たら、お家の中は綺麗になっているし、洗濯物はタンスの中に入っています。
夜ご飯も作ってくれるし、夜ご飯のお片付けもするし、なのに、七香より先に寝てる日はありません。
七香のお母さんは、毎日すごいんです。
だから七香は、お母さんに『ありがとう』がしたかったのです。
その『ありがとう』をクラフトフェアリーに素敵だねと言われた七香は、くすぐったそうに「えへへ」と笑いました。
そんな七香に、クラフトフェアリーが質問をします。
『ボクはね。七香みたいに、素敵な気持ちで物作りを楽しんでくれる人間をずっと探していたんだ。七香、ボクから君へ『ギフト』を贈りたいと思う。その『ギフト』を使って、『アース』を作ってくれないかな?』
七香は不思議そうに、パチパチとまばたきをしました。
「『ギフト』? で、『アース』? を、作るの?」
クラフトフェアリーは、『うん』と、声だけで頷きます。
『ボクは、七香の前の『クレアトーレ』が作った『アース』で生まれたの。だけどね、ボクが生まれた『アース』は、作った『クレアトーレ』の想いが途絶えてしまったから、ボク以外の全部が消えちゃった』
「全部、消えちゃった? お家も、家族も、全部?」
『うん。ボクも、声と『ギフト』以外は、全部消えちゃった』
「それで、声しか聴こえないの?」
『うん』
「そうなんだ……」
七香は、泣きたくなりました。
お母さんが消えちゃったら、どんなに悲しいだろう。
お父さんが消えちゃったら、どんなに淋しいだろう。
お家が無くなったら、どこへ帰れば良いのだろう。
美味しいご飯も、食べれなくなってしまうのかな。
それは、嫌だな。
『だから、七香に『アース』を作ってほしいんだ。七香の素敵な気持ちで、『アース』を作ってくれたら、ボクはもう一度、ボクになれるから』
「七香に、『アース』を作ってほしいの? 七香が『アース』を作ったら、クラフトフェアリーは、嬉しい?」
悲しいのは、嫌だな。
淋しいのは、嫌だな。
帰る場所が無いのは、どうしたら良いんだろう。
ご飯が食べられなくなったら、どうしたら良いんだろう。
七香は一生懸命考えました。
七香がそうなったら嫌だと思っていることが、クラフトフェアリーには、すでに起きているのです。
でも、七香が『ギフト』で『アース』を作れば、クラフトフェアリーは、元の、声だけじゃないクラフトフェアリーに戻れると言いました。
そして、七香の質問に、クラフトフェアリーは『うん』と答えました。
『七香が素敵な気持ちで物作りを楽しんでくれて、そうして、『アース』を純粋な想いで満たしてくれるなら。ボク達『クレアート』は、人間と一緒に生きていける。それはとても嬉しくて、温かいことだと思う。だからね』
『クレアトーレ』として『ギフト』を使い、七香が想像する、七香だけの『アース』を作って、生みだした『クレアート』達を、愛してほしい。
『君は、ボクに、形をくれる?』
クラフトフェアリーの質問に、七香はちょっとだけ迷いました。
『アース』を作ってほしいと言われても、『アース』がなんなのか、よく分からないからです。
七香には、クラフトフェアリーのお話は難しくて、クラフトフェアリーが何を言いたいのか、全部は分かりませんでした。
でも、七香は「うん」と答えました。
「七香が、クラフトフェアリーのお家を作ってあげる!」
悲しいのは、嫌だから。
淋しいのは、嫌だから。
帰る場所がほしいから。
美味しいご飯を食べたいから。
七香は、クラフトフェアリーにも、自分と同じものをあげたいと思って、力強く頷きました。
クラフトフェアリーは、とても嬉しそうに『ありがとう』と答えました。
『ボク達の新しい『クレアトーレ』に、『ギフト』を。どうか、七香が生み育てる『クレアート』で、『アース』が光り輝きますように』
クラフトフェアリーがそう言うと、七香が掴んでいた黒いカードが突然、ピカッと光りました。
七香がびっくりして目を閉じると、今度はお母さんが不思議そうな声で、七香に質問します。
「どうしたの、七香。封筒を持ったまま、中身も見ないでボーッとして……そんなに嬉しかったの?」
お母さんの声を聴いた七香は、ハッとして顔を上げました。
さっきまで少しも動いてなかったお母さんとお父さんは、今はいつも通り動いています。
七香が、あれ? と思って、自分の手を見ると。
白い封筒の中で掴んでいた黒いカードが、何故か真っ白になっています。
その真っ白なカードを封筒から取り出すと、片面には名前を書く枠が。
もう片面には、金色の文字で『Arcobaleno-Stella』と書いてあります。
七香は、それを見てようやく、これは文字なんだと気付きました。
この文字は、どういう意味なんだろう?
気になった七香は、お母さんに質問しました。
「お母さん。これ、なんて書いてあるの?」
お母さんは、にっこり笑って答えました。
「それは『Arcobaleno-Stella』って読むの」
お母さんの隣に座るお父さんも、へえ~と、納得したように答えました。
「日本語で『虹の星』って意味か。クラフトキットにピッタリの名前だな」
七香は、封筒がくっ付いていた仕切り板を取り出して、箱の中身を覗いてみました。
中には、箱の外に印刷されている写真と同じようなビーズや布や小瓶が、透明なプラスチックの袋で小分けにされた状態でびっしり詰まっています。
八歳の誕生日に、七香がお母さんとお父さんからもらったプレゼントは、アクセサリーやぬいぐるみを自分で作れる、材料と道具のセットでした。
「そっかあ。これで『アース』を作れば良いんだね、クラフトフェアリー」
中身を取り出して、一つ一つ見比べていた七香は、宝石のようにキラキラ光り輝くビーズや道具を天井に掲げて、クラフトフェアリーに言いました。
「待っててね、七香の『クレアート』。みんなに、お家をあげるから!」
そうして七香は、お母さんとお父さん、それと、クラフトフェアリーから『ギフト』を受け取り、クラフトフェアリー達『クレアート』のお家となる『アース』を、工作キット『Arcobaleno-Stella』で作り始めたのです。
学校から帰ってきて、お母さんとお父さんと一緒に夜ご飯を食べました。
レタスと千切りキャベツとミニトマトが入ったグリーンサラダ。
ローリエで煮込んだ玉ねぎとベーコンと玉子のコンソメスープ。
大きな塊を焼いてアルミホイルに包んでおいたローストビーフ。
イチゴがたくさん乗ったホールケーキも、家族三人で分けて食べました。
夜ご飯のお片付けが終わると、七香はお母さんとお父さんから、とっても大きなプレゼントをもらいました。
いろんな動物が小さく描かれたラッピング用紙と、金色の縁取りが綺麗な赤いリボンで包まれている、両腕をうんと伸ばしてようやく持てるくらいの大きな大きな四角いプレゼントです。
七香は、可愛らしい動物の絵と、キラキラしたリボンを見て大喜び。
その場で開けても良いかどうか、お母さんとお父さんに訊きました。
お母さんとお父さんは、もちろん良いよ、と答えました。
中には何が入っているのだろう?
七香はドキドキわくわくしながら、リボンをほどいて、せっかくの可愛いラッピング用紙も破いてしまわないように、少しずつ剥がしていきました。
ラッピングをすべて取り払うと、そこには四角い箱がありました。
四角い箱には、たくさんの色が印刷されていて、とてもにぎやかです。
印刷の中には、なにやら道具のような物が写っている写真もありました。
先端の尖りに毛糸を引っ掛けた金の棒は、編み物に使う物でしょうか。
白っぽい粘土から千切られた欠片が、ウサギや猫の形になっています。
たくさん並ぶ小瓶の中と、その手前には、色とりどりのビーズが散り。
半透明な器とその周りには、透き通った液体と透明なアクセサリーが。
タンバリンみたいな形の白い布には、針と糸で植物が描かれています。
その四角い箱を床に置いて上から見ると、プラスチックの持ち手の所に、金色の大きな文字で『Arcobaleno-Stella』と書かれていました。
七香には、その文字が読めません。
文字を模様だと思った七香は、特に気にせず、箱を上から開きました。
開いた箱のフタのすぐ下には、箱の中身を隠すような仕切り板があって、その仕切り板の上には、真っ白な封筒がくっ付いていました。
七香は、真っ白な封筒を持ち上げて、表と裏を見比べます。
どうやら、仕切り板にくっ付いていたほうから封筒を開けるようです。
シールも何も付いていない封筒を開くと、中には黒いカードがあります。
一枚だけ入っている、表も裏も真っ黒な、プラスチック製のカード。
大きさは、七香の右手と同じくらいです。
何が書いてあるんだろう?
七香は、拡げた封筒の口に右手の指を入れて、カードを掴みました。
すると、突然。
七香の頭の中に、不思議な声が聴こえてきました。
『ああ、やっと見つけた。君が、新しい『クレアトーレ』なんだね』
不思議な声は、女の人みたいに高い音、男の人みたいに低い音で、七香に何かを話しかけています。
キョロキョロと周りを見ても、お母さんとお父さん以外は誰も居ません。
お母さんとお父さんには聴こえていないのか、二人は七香を見つめたままピクリとも動きません。
「あなた、だあれ?」
首を傾げた七香の質問に、不思議な声が答えました。
『はじめまして。ボクは、クラフトフェアリー。君は、物作りが好き?』
不思議な声のクラフトフェアリーは、声だけで、七香に質問しました。
七香は、クラフトフェアリーの質問に頷いて答えます。
「七香はね、物を作るのね、好きだよ。昨日もね、ビーズのアクセサリーを作ってたの。お母さんのスマホに付ける、黄色いストラップなの」
七香のお母さんは、ひまわりの花が好きです。
だから、七香はお母さんに喜んでほしくて、ひまわりの花をイメージした黄色のストラップを作っていました。
でも、そのストラップはまだ未完成。
夜、これから寝る少し前に、買っておいたラッピングバッグに詰めたら、それをお母さんにプレゼントして、それでやっと完成する贈り物です。
そんな話を聴いたクラフトフェアリーは、嬉しそうに声を弾ませます。
『素敵だね。七香は、贈りたい相手のことを考えて、それから、作ることを楽しんでいるんだね。それって、すごくすごく、素敵な気持ちだね』
七香のお母さんは、働き者です。
朝、七香よりも早く起きて洗濯をしているし、朝ご飯を作ってくれるし、お弁当が必要な日は欠かさず作ってくれます。
七香が学校に行く時も、お父さんが仕事に行く時でも、忘れ物が無いか、一緒にカバンの中身を見直してくれます。
七香が学校から帰って来たら、お家の中は綺麗になっているし、洗濯物はタンスの中に入っています。
夜ご飯も作ってくれるし、夜ご飯のお片付けもするし、なのに、七香より先に寝てる日はありません。
七香のお母さんは、毎日すごいんです。
だから七香は、お母さんに『ありがとう』がしたかったのです。
その『ありがとう』をクラフトフェアリーに素敵だねと言われた七香は、くすぐったそうに「えへへ」と笑いました。
そんな七香に、クラフトフェアリーが質問をします。
『ボクはね。七香みたいに、素敵な気持ちで物作りを楽しんでくれる人間をずっと探していたんだ。七香、ボクから君へ『ギフト』を贈りたいと思う。その『ギフト』を使って、『アース』を作ってくれないかな?』
七香は不思議そうに、パチパチとまばたきをしました。
「『ギフト』? で、『アース』? を、作るの?」
クラフトフェアリーは、『うん』と、声だけで頷きます。
『ボクは、七香の前の『クレアトーレ』が作った『アース』で生まれたの。だけどね、ボクが生まれた『アース』は、作った『クレアトーレ』の想いが途絶えてしまったから、ボク以外の全部が消えちゃった』
「全部、消えちゃった? お家も、家族も、全部?」
『うん。ボクも、声と『ギフト』以外は、全部消えちゃった』
「それで、声しか聴こえないの?」
『うん』
「そうなんだ……」
七香は、泣きたくなりました。
お母さんが消えちゃったら、どんなに悲しいだろう。
お父さんが消えちゃったら、どんなに淋しいだろう。
お家が無くなったら、どこへ帰れば良いのだろう。
美味しいご飯も、食べれなくなってしまうのかな。
それは、嫌だな。
『だから、七香に『アース』を作ってほしいんだ。七香の素敵な気持ちで、『アース』を作ってくれたら、ボクはもう一度、ボクになれるから』
「七香に、『アース』を作ってほしいの? 七香が『アース』を作ったら、クラフトフェアリーは、嬉しい?」
悲しいのは、嫌だな。
淋しいのは、嫌だな。
帰る場所が無いのは、どうしたら良いんだろう。
ご飯が食べられなくなったら、どうしたら良いんだろう。
七香は一生懸命考えました。
七香がそうなったら嫌だと思っていることが、クラフトフェアリーには、すでに起きているのです。
でも、七香が『ギフト』で『アース』を作れば、クラフトフェアリーは、元の、声だけじゃないクラフトフェアリーに戻れると言いました。
そして、七香の質問に、クラフトフェアリーは『うん』と答えました。
『七香が素敵な気持ちで物作りを楽しんでくれて、そうして、『アース』を純粋な想いで満たしてくれるなら。ボク達『クレアート』は、人間と一緒に生きていける。それはとても嬉しくて、温かいことだと思う。だからね』
『クレアトーレ』として『ギフト』を使い、七香が想像する、七香だけの『アース』を作って、生みだした『クレアート』達を、愛してほしい。
『君は、ボクに、形をくれる?』
クラフトフェアリーの質問に、七香はちょっとだけ迷いました。
『アース』を作ってほしいと言われても、『アース』がなんなのか、よく分からないからです。
七香には、クラフトフェアリーのお話は難しくて、クラフトフェアリーが何を言いたいのか、全部は分かりませんでした。
でも、七香は「うん」と答えました。
「七香が、クラフトフェアリーのお家を作ってあげる!」
悲しいのは、嫌だから。
淋しいのは、嫌だから。
帰る場所がほしいから。
美味しいご飯を食べたいから。
七香は、クラフトフェアリーにも、自分と同じものをあげたいと思って、力強く頷きました。
クラフトフェアリーは、とても嬉しそうに『ありがとう』と答えました。
『ボク達の新しい『クレアトーレ』に、『ギフト』を。どうか、七香が生み育てる『クレアート』で、『アース』が光り輝きますように』
クラフトフェアリーがそう言うと、七香が掴んでいた黒いカードが突然、ピカッと光りました。
七香がびっくりして目を閉じると、今度はお母さんが不思議そうな声で、七香に質問します。
「どうしたの、七香。封筒を持ったまま、中身も見ないでボーッとして……そんなに嬉しかったの?」
お母さんの声を聴いた七香は、ハッとして顔を上げました。
さっきまで少しも動いてなかったお母さんとお父さんは、今はいつも通り動いています。
七香が、あれ? と思って、自分の手を見ると。
白い封筒の中で掴んでいた黒いカードが、何故か真っ白になっています。
その真っ白なカードを封筒から取り出すと、片面には名前を書く枠が。
もう片面には、金色の文字で『Arcobaleno-Stella』と書いてあります。
七香は、それを見てようやく、これは文字なんだと気付きました。
この文字は、どういう意味なんだろう?
気になった七香は、お母さんに質問しました。
「お母さん。これ、なんて書いてあるの?」
お母さんは、にっこり笑って答えました。
「それは『Arcobaleno-Stella』って読むの」
お母さんの隣に座るお父さんも、へえ~と、納得したように答えました。
「日本語で『虹の星』って意味か。クラフトキットにピッタリの名前だな」
七香は、封筒がくっ付いていた仕切り板を取り出して、箱の中身を覗いてみました。
中には、箱の外に印刷されている写真と同じようなビーズや布や小瓶が、透明なプラスチックの袋で小分けにされた状態でびっしり詰まっています。
八歳の誕生日に、七香がお母さんとお父さんからもらったプレゼントは、アクセサリーやぬいぐるみを自分で作れる、材料と道具のセットでした。
「そっかあ。これで『アース』を作れば良いんだね、クラフトフェアリー」
中身を取り出して、一つ一つ見比べていた七香は、宝石のようにキラキラ光り輝くビーズや道具を天井に掲げて、クラフトフェアリーに言いました。
「待っててね、七香の『クレアート』。みんなに、お家をあげるから!」
そうして七香は、お母さんとお父さん、それと、クラフトフェアリーから『ギフト』を受け取り、クラフトフェアリー達『クレアート』のお家となる『アース』を、工作キット『Arcobaleno-Stella』で作り始めたのです。
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