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ホラー系

うそつき

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「絶対に……絶対に、お前を……っ!」

  もう何度目の約束?
  いつもいつも、同じ言葉ばかり。

「お……前、を……」

  わたしに伸ばした指先が宙を掻いて、地面に落ちた。
  赤い池が飛沫を飛ばし、波紋を描く。

  いつもと同じ約束。
  いつもと同じ結末。
  変わり映えしない、あなたとわたし。

「……うそつき」

  ねぇ、どうしてあなたは一人じゃないの?
  あなたの側で地面に転がる三つの肉塊。
  あなたの光に惹かれて集まる邪魔者達。
  毎回違う顔。
  毎回同じ数。

  ねぇ、どうしてあなたはわたしを見てくれないの?
  毎回約束してくれるのに。
  わたしだけはと、腕を伸ばしてくれるのに。

「ねぇ……早く、わたしを見て。わたしだけを見て」

  もの言わぬあなたを抱きしめて、くちづける。
  まだ温かいあなたは、でも、もう居ない。
  次のあなたになる為に、ここから消えた。

  いつものように、わたしだけを残して、消えた。

  ひどい人。

  いつもいつも、うそばかり。
  わたしはあなたを待っているのに。
  ここで、あなただけを待っているのに。

  あなたは今回も一人じゃなかった。
  わたしを求めておきながら。
  毎回毎回、わたし以外の肉塊を大切にする。
  
  ひどい、うそつき。

  そんなあなたは要らないから。
  わたし以外の肉塊を見る目も
  わたし以外の声を聴く耳も
  うそを吐く舌も
  届かない腕も
  わたしが全部食べちゃうの。

「ねぇ……早く、わたしを見て。わたしだけを」

  わたしは、あなただけを、待っているから。

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