隣の家に住むイクメンの正体は龍神様でした~社無しの神とちびっ子神使候補たち

鳴澤うた

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六章 イクメンの正体

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(目が……辰巳さんの瞳孔が……)

 細い。
 人の目じゃない。
 虹彩も濃い紫色から金色になっている。

「上位の神様達は僕や御遣い候補の子供達に『もっと現代の日本の環境に慣らせ』『もっと現代の、色々な食の味を体験させよ』と仰る。そのために慣れていない僕に、菜緒さんを関わらせようとしている」
「……上位の、神様?」
「そうです。『七福神』ともいいます。大黒天、毘沙門天、恵比寿天、寿老人、福禄寿、弁財天、布袋天に抽象、概念神に祖霊神など他に八百万の神ともいわれる大勢の神様がいらっしゃいますが、主に七福神様方がたくさんいらっしゃる神々からご依頼を受けて、僕は御遣い候補の子供達の養育をしているんです」
「辰巳さん……話している内容が壮大になってきているような……酔ってますよね?」
 はは、と笑ってみせるが辰巳の表情は真剣そのものだ。

 そして金色の目のままだし、虹彩も細いまま。
「どうして菜緒さんを選んだのか、それは『偶然』に神の目についたのでしょう。菜緒さんはおそらく全ての事情を知っても恐れも抱かず増長することもなく、この『現実』を受け入れるでしょう。貴女はその度量も力も持っている。だからこそ、神々は貴女を選んだ」
「辰巳さん、いったい何を……? ちょっと非現実的ですよ? それに辰巳さんはいったいどうして御遣い候補の子供達を養育しているんですか?」

 どこかの宗教団体かと思っていたが――そっちの方がマシな気がする。
 そっちの方がよほど現実的だ。
 辰巳の言っていることは、今の日本の常識から外れすぎている。
 神々から御遣い候補の養育を任されている辰巳は、いったい何者なんだろう? と。

 菜緒の問いに辰巳は少し哀しげに目を伏せると、彼らしい、しゃんとした姿勢で座り直す。
 どこか気高さを感じる彼の雰囲気の中に哀愁が漂っていて、菜緒は聞いてはいけないことを聞いてしまったのだろうかと思った。

「……僕は、昔ある村の小さな神社の神でした」

 聞き間違いではないだろうか?

 菜緒は自分の両耳を掴み、揉み込む。いわゆる刺激マッサージだ。
 耳の聞こえがどうかなってしまったかと思わず揉んだ。
 そんな菜緒を見て、辰巳は苦笑してみせる。

「嘘だと思いますか?」
「……神社の神主さんと言ったのかと。聞き間違いかと」
「本当ですよ。こうして僕を雇っている上位の神様のおかげで顕現していますけれど。『藤村の龍神様』と呼ばれておりました」
「藤村辰巳……」
 玄関の表札に『藤村』と書いてあった。

 藤村の辰――龍。

「ええ、過去に神社を建ててくれた村人達に感謝をこめて藤村を苗字として使わせてもらっています。僕は……人の世に住み、関わっているので人らしくしなくてはなりません。違和感を抱かせては、疑心を呼び寄せますので」

 辰巳さんが龍神?

 菜緒は彼の横顔を凝らすように見つめる。
 人だ。どう見ても人だ。
 すらりとした体躯で優男のような。現代によくいる文化人的な青年。
 でも、確かに彼の美顔は人から外れているし、何より纏う雰囲気がどこか崇高で恐れ多いと感じてしまう。

 ――そう、まるで本当に神がそこに姿を現しているような。

(待って……待って待って! そんな簡単に鵜呑みしていいの? 菜緒。確かに辰巳さんはどこか謎めいていて神秘的だけれど。それに夢の中で悪夢を退治してくれた神官みたいな人に似ているけれど……)

 そこまで考えて菜緒は背筋が粟立った。
 
 あの夢に出てきた、神官みたいな人は辰巳だ。
 藤色の狩衣に袴姿で、脇だけ長めに残してあるヘアスタイルなのに後ろ髪があり、脇の髪をゆったりと留めていたのでおくれ毛が出てて。

(あの姿が、辰巳さんの本来の姿……?)

 どうして気付かなかったの?
 だってあれは夢だから――そう思っていたから。




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