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勇者と元勇者は少女を助ける
その2
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「ガーディアン、武装解除」
私はガーディアンに、いつものチャリに戻るように言う。
そうして、私が前に乗りウィルドさんが補助席に乗る。
「ガーディアン、運転お願いね」
リリン! と鳴る。
「任せて!」と言っているように聞こえて、フッと笑みを浮かべる私。
そのまま澪ちゃんを見上げた。
黒い瘴気を口から吐き出してる。
もう見上げるほど高い天井は真っ暗で輝いていたシャンデリアや、天使が舞っていた天井画は闇に隠れ見えなくなっていた。
その黒い気は腐敗を促すようで、ボロボロと上から天井の壁材がはがれ落ちてくる。
(一刻も早く、澪ちゃんから瘴気を引きはがさなくちゃ!)
ダーク聖女としての澪ちゃんは、確実にレベルが上がってきている。
「あまりのんびりやっていられんぞ、ミサト。レベルが上がれば上がるほど、ミオから瘴気を引き剥がすことが難しくなってくる」
「はい! 援護お願いします」
ガーディアン! と私が声を上げると、ミオちゃんに迫る。
「俺達も援護するぞ!」
アントンさんの号令で、澪ちゃんの攻撃が私達に集中しないよう髪や爪の攻撃、そして吐き出される瘴気に向け、物理攻撃や回復攻撃をしてくれる。
「澪ちゃん! 目を覚まして!」
私は一生懸命話しかけながら、澪ちゃんに回復魔法を行う。
後ろでウィルドさんが立ち上がり、剣を奮う。
つーか、凄いな。ウィルドさん。荷台に立って剣を奮うなんて。
やっぱり、ただのおっさんじゃなかったんだ。
「澪ちゃん! 国の危機が終わって元の世界へ帰ったら、一緒に遊ぼうね! って話したよね? 大学は同じところ受けよう! って話し合ったよね? 頑張って叶えようよ! ね? ――だから、瘴気に負けないで!」
私は澪ちゃんに訴えながら回復魔法をかける。
「……コ、ンナ国……滅ブ、ベキ……」
瘴気に取り込まれた澪ちゃんが、初めて応えた。
「澪ちゃん! 私の言ってること、分かる?」
「クダラヌ支配者……ガイル国……一度、滅ブベキ」
「確かに、どうしようもない王様と王太子様だと思うよ! 努力しないで遊んでばかりで、国の金を使ってる勇者達と一緒になって放蕩生活してるし! 全然、仕事していなさそうだし!」
下にいる王様と王太子様は何か言いたげなようだけど、おっさんズに睨まれて小さくなった。
「勇者もそのパーティ達も、驕っていていい気になって遊んでばかりでレベルも上がってないし、こうしているときも、剣も碌に振れないし」
今の状況で、さすがにお荷物だと理解したのか邪魔にならない場所に避難している勇者ミナトとそのパーティ達は、ショボンとしている。
「でも、今のままだと澪ちゃんはきっとこの国に住んでる人達にも害を与えてしまうよ! 澪ちゃんはそれでいいの?」
髪の毛が止まった。
「このまま瘴気に取り込まれて澪ちゃんの意識がなくなったら、きっと国に住む人達だけでなく、植物や動物達も滅ぼそうとするよ!? 澪ちゃんはそれでいいの?」
「……ソレハ」
「私は嫌だよ! 澪ちゃんがこのまま瘴気に取り込まれて澪ちゃんが消えちゃうの! 澪ちゃんがダーク聖女として生きていくのは嫌だよ!!」
だらん、と力なく澪ちゃんの腕が落ちる。
「ミサト! いまだ!」
ウィルドさんの掛け声に、私は澪ちゃんに向かって剣を投げた。
私の「治癒」と「聖」の力を籠めた剣を――
澪ちゃんは、傷ついたんだ。
勇者達の態度に。
王様の国を考えないで、勇者達ばかりに媚びを売る態度に。
そして王太子のいい加減な恋の仕方に。
傷ついた心を「治癒」して
「聖」の力で瘴気を滅する。
澪ちゃんのお腹に刺さった。
ギャァアアアアアアアアアアアアアアアア
地の底から這い上がってくるような叫び。
それはこの食堂ばかりでなく、城全体、いえ、国中にまで響きわたりそうな叫びで思わず耳を塞ぐほどだ。
「これは……?」
「今まで瘴気に取り込まれた奴らの断末魔だろう……」
ウィルドさんが教えてくれる。
断末魔の叫びのあと、その場には以前の澪ちゃんが宙に浮いていた。
がくん、と一揺れしたあと、落下。
私は慌ててガーディアンで澪ちゃんを追いかけて、ウィルドさんが受け止めてくれた。
私はガーディアンに、いつものチャリに戻るように言う。
そうして、私が前に乗りウィルドさんが補助席に乗る。
「ガーディアン、運転お願いね」
リリン! と鳴る。
「任せて!」と言っているように聞こえて、フッと笑みを浮かべる私。
そのまま澪ちゃんを見上げた。
黒い瘴気を口から吐き出してる。
もう見上げるほど高い天井は真っ暗で輝いていたシャンデリアや、天使が舞っていた天井画は闇に隠れ見えなくなっていた。
その黒い気は腐敗を促すようで、ボロボロと上から天井の壁材がはがれ落ちてくる。
(一刻も早く、澪ちゃんから瘴気を引きはがさなくちゃ!)
ダーク聖女としての澪ちゃんは、確実にレベルが上がってきている。
「あまりのんびりやっていられんぞ、ミサト。レベルが上がれば上がるほど、ミオから瘴気を引き剥がすことが難しくなってくる」
「はい! 援護お願いします」
ガーディアン! と私が声を上げると、ミオちゃんに迫る。
「俺達も援護するぞ!」
アントンさんの号令で、澪ちゃんの攻撃が私達に集中しないよう髪や爪の攻撃、そして吐き出される瘴気に向け、物理攻撃や回復攻撃をしてくれる。
「澪ちゃん! 目を覚まして!」
私は一生懸命話しかけながら、澪ちゃんに回復魔法を行う。
後ろでウィルドさんが立ち上がり、剣を奮う。
つーか、凄いな。ウィルドさん。荷台に立って剣を奮うなんて。
やっぱり、ただのおっさんじゃなかったんだ。
「澪ちゃん! 国の危機が終わって元の世界へ帰ったら、一緒に遊ぼうね! って話したよね? 大学は同じところ受けよう! って話し合ったよね? 頑張って叶えようよ! ね? ――だから、瘴気に負けないで!」
私は澪ちゃんに訴えながら回復魔法をかける。
「……コ、ンナ国……滅ブ、ベキ……」
瘴気に取り込まれた澪ちゃんが、初めて応えた。
「澪ちゃん! 私の言ってること、分かる?」
「クダラヌ支配者……ガイル国……一度、滅ブベキ」
「確かに、どうしようもない王様と王太子様だと思うよ! 努力しないで遊んでばかりで、国の金を使ってる勇者達と一緒になって放蕩生活してるし! 全然、仕事していなさそうだし!」
下にいる王様と王太子様は何か言いたげなようだけど、おっさんズに睨まれて小さくなった。
「勇者もそのパーティ達も、驕っていていい気になって遊んでばかりでレベルも上がってないし、こうしているときも、剣も碌に振れないし」
今の状況で、さすがにお荷物だと理解したのか邪魔にならない場所に避難している勇者ミナトとそのパーティ達は、ショボンとしている。
「でも、今のままだと澪ちゃんはきっとこの国に住んでる人達にも害を与えてしまうよ! 澪ちゃんはそれでいいの?」
髪の毛が止まった。
「このまま瘴気に取り込まれて澪ちゃんの意識がなくなったら、きっと国に住む人達だけでなく、植物や動物達も滅ぼそうとするよ!? 澪ちゃんはそれでいいの?」
「……ソレハ」
「私は嫌だよ! 澪ちゃんがこのまま瘴気に取り込まれて澪ちゃんが消えちゃうの! 澪ちゃんがダーク聖女として生きていくのは嫌だよ!!」
だらん、と力なく澪ちゃんの腕が落ちる。
「ミサト! いまだ!」
ウィルドさんの掛け声に、私は澪ちゃんに向かって剣を投げた。
私の「治癒」と「聖」の力を籠めた剣を――
澪ちゃんは、傷ついたんだ。
勇者達の態度に。
王様の国を考えないで、勇者達ばかりに媚びを売る態度に。
そして王太子のいい加減な恋の仕方に。
傷ついた心を「治癒」して
「聖」の力で瘴気を滅する。
澪ちゃんのお腹に刺さった。
ギャァアアアアアアアアアアアアアアアア
地の底から這い上がってくるような叫び。
それはこの食堂ばかりでなく、城全体、いえ、国中にまで響きわたりそうな叫びで思わず耳を塞ぐほどだ。
「これは……?」
「今まで瘴気に取り込まれた奴らの断末魔だろう……」
ウィルドさんが教えてくれる。
断末魔の叫びのあと、その場には以前の澪ちゃんが宙に浮いていた。
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