宰相様は抱き枕がほしい【完結】

うなきのこ

文字の大きさ
上 下
28 / 31

26 接触禁止

しおりを挟む
宰相という役職も退き暇になったかと言われればそうでもなく、時々ジョニーが相談兼遊びにくる。
「これなんですけどこの案を通した方がいいのか、もう1枚の…こっちにした方がいいか決めかねてまして」
ジョニーがハイドラへ向けた紙をタジオがちらりと盗み見るが今回遊びに来ただけらしい。
どっちの案を採用したところで結果は大差ないからだ。
勿論やり方によっては優劣がはっきりするがそんな重要案件でもなかった。
この程度の内容なら他の貴族に任せればいいのに、とハイドラを奪われたタジオは絶賛謹慎中だ。

つい先日まで行われたで1週間、ハイドラに触れることはおろか話すことも禁止された。
ハイドラと対峙している相手がいる場合も然り。

確かにやりすぎだとは反省したが愛の深さを見くびったハイドラが悪いのだとお仕置に関してはタジオは悪びれない。

最初は10日の接触禁止命令だったのだが交渉の末に7日までに縮めた。
運悪く、その間に尋ねてくる人物が多くてタジオのフラストレーションは溜まっていくばかりだった。



「ご意見ありがとうございました。では──
チェスをしよう。先日は負けてしまったがまだ一勝一敗。まだ5し」
口を挟めないのが忌々しい。
唇を強く噛み締めるタジオはハイドラの一言で持ち直す。
「ジョニーはまた煽って…君たちは仲直りしたのではなかったのかい?口出ししたくはないが、謹慎中とはいえ私の可愛い恋人なのだから虐めすぎないでくれよ」

可愛い恋人!私も貴方のことを可愛い恋人と認識してます!
声に出すことは禁止されているので心の中で叫ぶ。

「虐められたのはハイドラ様だろう?2日前に訪れた時はびっくりしたよ。『足腰立たないから出直してくれ』なんて」
やれやれと呆れた様な演技を大袈裟にするジョニーは応接室の隅に置いてあるチェスを取りに行き、ソファーに座って机に盤を広げその上に駒を並べていく。

「タジオがなかなか私を解放してくれなくてね。けれどおかげでどれだけ愛されているか確認できたから問題ないんだよ」
恥ずかしがることも無くハイドラは惚気けるがタジオは居た堪れない。
己の失態のようなものなのだから。
もう無理だと言われたのにやめようとはせず、更にハイドラを追い立てて失神させたのだ。
恋人なら何をしてもいいという訳でもない。
なので反省はしている。

この状態では言いたいことも言えないが気恥しさはジョニーに伝わったようで
「そうですか」
と言った顔はタジオに向かっていやらしく笑っていた。


「チェックメイト」
「あぁっ…2連敗か…明日は勝てるといいが」
「明日?確か明日は定例会議があるだろう、宰相殿」
機密情報もハイドラにかかればなんのその。
そんな当たり前な事には驚きもしなかった。
「早めに解決して遊びにタジオを弄りにくるさ」


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

BL団地妻on vacation

夕凪
BL
BL団地妻第二弾。 団地妻の芦屋夫夫が団地を飛び出し、南の島でチョメチョメしてるお話です。 頭を空っぽにして薄目で読むぐらいがちょうどいいお話だと思います。 なんでも許せる人向けです。

フローブルー

とぎクロム
BL
——好きだなんて、一生、言えないままだと思ってたから…。 高二の夏。ある出来事をきっかけに、フェロモン発達障害と診断された雨笠 紺(あまがさ こん)は、自分には一生、パートナーも、子供も望めないのだと絶望するも、その後も前向きであろうと、日々を重ね、無事大学を出て、就職を果たす。ところが、そんな新社会人になった紺の前に、高校の同級生、日浦 竜慈(ひうら りゅうじ)が現れ、紺に自分の息子、青磁(せいじ)を預け(押し付け)ていく。——これは、始まり。ひとりと、ひとりの人間が、ゆっくりと、激しく、家族になっていくための…。

幼馴染は僕を選ばない。

佳乃
BL
ずっと続くと思っていた〈腐れ縁〉は〈腐った縁〉だった。 僕は好きだったのに、ずっと一緒にいられると思っていたのに。 僕がいた場所は僕じゃ無い誰かの場所となり、繋がっていると思っていた縁は腐り果てて切れてしまった。 好きだった。 好きだった。 好きだった。 離れることで断ち切った縁。 気付いた時に断ち切られていた縁。 辛いのは、苦しいのは彼なのか、僕なのか…。

【完結】神様はそれを無視できない

遊佐ミチル
BL
痩せぎすで片目眼帯。週三程度で働くのがせいっぱいの佐伯尚(29)は、誰が見ても人生詰んでいる青年だ。当然、恋人がいたことは無く、その手の経験も無い。 長年恨んできた相手に復讐することが唯一の生きがいだった。 住んでいたアパートの退去期限となる日を復讐決行日と決め、あと十日に迫ったある日、昨夜の記憶が無い状態で目覚める。 足は血だらけ。喉はカラカラ。コンビニのATMに出向くと爪に火を灯すように溜めてきた貯金はなぜか三桁。これでは復讐の武器購入や交通費だってままならない。 途方に暮れていると、昨夜尚を介抱したという浴衣姿の男が現れて、尚はこの男に江東区の月島にある橋の付近っで酔い潰れていて男に自宅に連れ帰ってもらい、キスまでねだったらしい。嘘だと言い張ると、男はその証拠をバッチリ録音していて、消して欲しいなら、尚の不幸を買い取らせろと言い始める。 男の名は時雨。 職業:不幸買い取りセンターという質屋の店主。 見た目:頭のおかしいイケメン。 彼曰く本物の神様らしい……。

隣のアイツは俺の嫁~嫌いなアイツの正体は、どうやら推しのバーチャルストリーマーらしい~

藤掛ヒメノ@Pro-ZELO
BL
夕暮れ寮シリーズ第三弾。 バーチャルストリーマーが好きな榎井飛鳥は、オタク全否定の隠岐聡が大の苦手だった。 だが隠岐の方には実は秘密があって――。 両視点から進む、ヤキモキのラブストーリー!

またのご利用をお待ちしています。

あらき奏多
BL
職場の同僚にすすめられた、とあるマッサージ店。 緊張しつつもゴッドハンドで全身とろとろに癒され、初めての感覚に下半身が誤作動してしまい……?! ・マッサージ師×客 ・年下敬語攻め ・男前土木作業員受け ・ノリ軽め ※年齢順イメージ 九重≒達也>坂田(店長)≫四ノ宮 【登場人物】 ▼坂田 祐介(さかた ゆうすけ) 攻 ・マッサージ店の店長 ・爽やかイケメン ・優しくて低めのセクシーボイス ・良識はある人 ▼杉村 達也(すぎむら たつや) 受 ・土木作業員 ・敏感体質 ・快楽に流されやすい。すぐ喘ぐ ・性格も見た目も男前 【登場人物(第二弾の人たち)】 ▼四ノ宮 葵(しのみや あおい) 攻 ・マッサージ店の施術者のひとり。 ・店では年齢は下から二番目。経歴は店長の次に長い。敏腕。 ・顔と名前だけ中性的。愛想は人並み。 ・自覚済隠れS。仕事とプライベートは区別してる。はずだった。 ▼九重 柚葉(ここのえ ゆずは) 受 ・愛称『ココ』『ココさん』『ココちゃん』 ・名前だけ可愛い。性格は可愛くない。見た目も別に可愛くない。 ・理性が強め。隠れコミュ障。 ・無自覚ドM。乱れるときは乱れる 作品はすべて個人サイト(http://lyze.jp/nyanko03/)からの転載です。 徐々に移動していきたいと思いますが、作品数は個人サイトが一番多いです。 よろしくお願いいたします。

ペイン・リリーフ

こすもす
BL
事故の影響で記憶障害になってしまった琴(こと)は、内科医の相澤に紹介された、精神科医の篠口(しのぐち)と生活を共にすることになる。 優しく甘やかしてくれる篠口に惹かれていく琴だが、彼とは、記憶を失う前にも会っていたのではないかと疑いを抱く。 記憶が戻らなくても、このまま篠口と一緒にいられたらいいと願う琴だが……。 ★7:30と18:30に更新予定です(*´艸`*) ★素敵な表紙は らテて様✧︎*。 ☆過去に書いた自作のキャラクターと、苗字や名前が被っていたことに気付きました……全く別の作品ですのでご了承ください!

【完結】運命さんこんにちは、さようなら

ハリネズミ
BL
Ωである神楽 咲(かぐら さき)は『運命』と出会ったが、知らない間に番になっていたのは別の人物、影山 燐(かげやま りん)だった。 とある誤解から思うように優しくできない燐と、番=家族だと考え、家族が欲しかったことから簡単に受け入れてしまったマイペースな咲とのちぐはぐでピュアなラブストーリー。 ========== 完結しました。ありがとうございました。

処理中です...