宰相様は抱き枕がほしい【完結】

13 ニンジン料理(?)

「他に植えたい物とか無いかい？まだスペースあるみたいだが」
「ハイドラ様はないんですか？」
「そうだな…長期栽培が必要なのがあるんだが正直ちゃんと育てられるか不安でね」
長期栽培…樹木に成る果物が良いのかと思い至って尋ねた。
「取寄せます。なんですか？」
「君の心」
「──!?!?」
思ったものと違う答えが返って来てタジオは焦ったが周りは仲睦まじいなぁと生暖かい視線を送るのみだった。
「…そうですね…死ぬまでお世話して下されば幸いです」
「勿論だよ」
可愛い反応を見せるなぁとハイドラはタジオの反応を楽しんでいた。


「さて、畑に植えたい植物はこれも育てられるか不安だが、ここは中間地と言っても北に近いだろう？北端での栽培が適してると言うロシュビスはどうかな？」
「いいですね、食べたことないです。柑橘の匂いがするキャベツでしたよね。
買うとちょっと値が張るみたいですし栽培出来たら商売にも出来そうです」
「ロシュビスにするんですか？」
「やはり育てられないか？」
料理長がわざわざ口を出してきたと言うのなら何か問題でもあるのだろう。
「実は前に試した事があるんです。ここに来る前に。でも種を撒いて芽は出たのですが陽の光に耐えられなくて直ぐに枯れました。色々試して見たのですが全滅で。あまりお勧めできません。」
「そうか。ロシュビスがダメなら南のゴーフォッドは出来そうかな？」
「ゴーフォッドなら気温も適してるしツル植物ですからこの範囲でも沢山できるでしょう」
「じゃあ後日頼むよ」
任せてくださいと胸を張り、休憩用の飲食物を持ってくると断りを入れてその場を離れた。
「さぁ君たち、休憩にしよう。取り残しのあったものは料理長ノッドに渡して置いてくれ。それでノッドが何か美味しいものを考えてくれるだろうからね」
「ハイドラ様、申し訳ありませんが今夜はきまって…」
「ん？聞こえないなぁ？」
「…夕食のメニューを考えてなかったので食材が決まって助かります。」
「はは！すまない、考えていたもので良い」
「いえ折角なので活かしてみせます」


夕食はいつもより豪華で邸に普段隠れている影も全て降りてくるように呼んだ。言わば身内だけの立食パーティーだ。
「短時間でよくここまで準備できたな。ご苦労様」
「毎度労わってくださり有難う御座います」

「…ところでこれはノッドが？」
ハイドラが指す方を見るとそれは昼間見つけたニンジンをそのまま使った料理だった。
「わっ!?なんで！あの、申し訳ありませんっこれは料理班で悪ノリして盛っただけでっ」
しどろもどろにソレの説明をするとハイドラは形もコレだったのかと聞いたが大まかな形は弄っていないらしい。
ただ無駄に凝って本物に近づけた形になったのだと言う。

「謝らなくてもいいが面白い形だね？ほぼ原型なんだろう？」
「…はい」
「技術は凄い。無駄使いな気もするがね？」
「…ありがとうございます…？」
「これを食べるのは男として少し嫌だから私は遠慮しておくよ」
「当たり前です」
今迄静観していたタジオがもう見るなと別のテーブルへ連れていった。
実は最初からソレがある事を知っていた。影が知らせてきた無駄に凝った料理(？)を知ってハイドラの反応が気になり用意するようにと指示したのだった。



ニンジン料理と言っても丸ごと煮たニンジンを皿に立てて周りに色んな種類のキノコを散らしミルクで作ったソースをかけただけの本当に悪ノリして作ったのだと分かる物だった。

そう。もう気づいているだろう。
掘り起こされたニンジンはいきり勃つペニスの様だった…。