宰相様は抱き枕がほしい【完結】

7 私も... ※

「してくれるのかい？有り難いが口には咥えなくていいからね？」
「したいです」
 力強く迫り、自身の露出していたペニスを仕舞ってハイドラをソファーへと座らせた。


ぴちゃぴちゃわざと音を立ててしゃぶるタジオの口からこぼれた自らの先走り。酷く淫猥に見える雄の顔でニヤリと口角を上げ裏筋を舐める。
「…っ…ぅ…んっ」
タジオのその表情に欲情し声が漏れる。
「そのしたり顔やめなさいっ」
声を出してしまったことに羞恥しつい咎めた。

したり顔？と一瞬考えたがさすが優秀な補佐は直ぐにこの顔に興奮を覚えたのだと理解した。
「(ハイドラ様を受け入れるのが当たり前だと思っていたけど…)」
今度はハイドラが興奮したと言った表情をわざと作りながら更に責め立てる。
「…ジォ…はぁ………ぁっ──!」
出したいと訴えた彼のペニスをじゅぽじゅぽと激しく音を立ると直ぐに果てた。
「貴方は存外可愛らしい方だったんですね」
割と早く吐き出したハイドラへと口元を拭きながら呟く。
「君の舌技が上手かったからね」
顔に欲情した、とは明言しなかったものの先の発言でバレているだろうに「早かったのは技術のおかげだ」と見栄を張る。

「…なぁタジオ。もしかして君は私に挿れたいのかな？」
衣服を整え終えたハイドラは率直に尋ねた。
「正直申しますと、先日された行為を私も貴方にしたい、と思うくらいにはなりました。つまりリードする側へ立ちたい。」
少し早口に唱え、続ける。
「貴方を気持ちよくして差し上げたいというのは変わりませんが、それは受ける側でなくてもいいのではと。そしてハイドラ様、きっと貴方も先程抱かれたいと思ったのではないでしょうか？貴方は今、私の恋人です。仕事仲間でも友人でもなく、恋人です。いつもより我儘でもいいのですよ？貴方も正直に気持ちをお伝えください」
「ははっそうだね！たしかに。うん。君に尋ね口に出した時「抱かれたい」と自覚したんだ。リードしてくれると言うのならこの身を委ねるよタジオ」
にこやかに全力で愛してると伝えてくれる眼差し。過去に何度も見てきた瞳だが今初めてこの眼差しの意味を知った。本当に出会った頃から好意を抱いていたのだと。
「ハイドラ様の御身、お預かりします」
「はは！誘拐犯みたいな発言だな？」
「一部の者からしたらたしかに誘拐犯、或いは窃盗犯と認定されるでしょうね」
「？窃盗犯かい？そうだね、私の心を何年も掴んで離さなかった君は窃盗犯か」
声を出して笑いながらハイドラはそう解釈したが、タジオが掴んでいた情報と本当は違う。わざわざ訂正もしない。必要も無い。
「では窃盗犯らしく、今夜は貴方の処女をいただきますね」
「………」
「…え？ハイドラ様もしかして処女ではないのですか!?えっ!?」
まさかの処女ではなかった!?記憶違いか。補佐の立場で友人でもあったタジオは万が一のためにハイドラの周囲の人間関係を把握していた。1度きりしかあっていない者でも記憶しているし夜を共にした相手も影により情報を得ていた。それなのに。
あたふたするタジオをみてハイドラは肩を震わせ笑っていた。
「…!!ハイドラ様!!」
笑っている事にやっと気づき責める様に名を呼んた。
「…ふふっふはは！タジオ、君は私の交友関係も全て把握しているだろう？それなのに無言の私を『非処女』だと思ったのかい？ふふ」
反応をみて楽しんでいたと宣ったが怒りは湧かない。だが意地悪する恋人へ今夜仕返しをしてやろうと心に決めた。
「今夜が楽しみですね…？」
「おっと」
したり顔を見せられたハイドラは、しかし先程抱いた物とは別の感情を抱いたのだった。