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異世界での生活
20 パン屋"レディア"
しおりを挟む「でもいくら精神防御魔法があると言っても…心の声が聞こえてしまうのは気味悪いですよね。屋敷内が安全だから魔法を解除してるのに俺のせいで魔力を消費させるのは申しわけないです。
だから、俺」
「出て行く気かい?」
「、はい。」
「ミオも常に他人の心を聞こうとしている訳では無いのだろう?」
「そりゃあ、相手に申し訳ないですし。」
「なら問題ない。気味が悪いなんて思っていないし、君は読もうとしなくて私も聞かれて困ることは滅多にない。ただ仕事関係のことを考えている時だけは魔法をつかうことを許してくれるかい?守秘義務があるからね」
「え、と…はい」
「あともうひとつ、触れてでも聞こえてしまうんだったね…一応確認しておこうか」
手を差し伸べられ触れる。
『防御魔法かけたけど聞こえている可能性はあるな…ミオの負担にならないように新しい魔法も考えよう』
「あ…」
「…もしかして聞こえたかな?」
「…はい。…すみません」
「謝らなくてもいいよ。
防御魔法かけていたのだけれど意味なかったみたいだね。さっき言ったけど心を許してると緩むことはあるが…さっきと強度は同じにしているからそれはないか…
ミオの力は触れる方が力が強いみたいだね」
「…はい。これだけは制御が難しくて」
「君の力を抑えらるような魔法を考えておくから心配しなくていい。
このままこの屋敷で過ごしなさい。いいね?」
「抑える魔法?」
「ミオの力を他に知られるのは望んでいないのだろう?ましてや君は悪用はしないのだから公表したところで他の不安を煽るだけだからね。それなら君の力を抑える方が早い」
「そんな魔法あるんですか?」
「ないよ。けれど作れないことも無いはずだからね。光魔法の使い手である私が開発してみせるよ」
光魔法保有者は他の属性がほとんど使えない代わりに傷や病、新しい魔法が作れるらしい。
俺はこの能力を抑える魔法があるのならとリンドさんに託した。
リンドさんには感謝してもしきれない。
リンドさんに居るだけでいいと言われていた助手という立場は言葉通りほとんど居るだけで、俺は仕事してる感がなくてリンドさんに仕事させてくれと切望した。
「本当にいてくれるだけでよかったんだけど…そうだね、そこの資料の背表紙、読めるかい?」
「分かります」
「私は片付けるのが得意じゃなくてね、出来れば棚に戻す作業を代わりにしてもらいたい」
「片付け苦手だったんですね」
「ふふ、以外かい?」
「はい、すごく丁寧な方ですしきちんとしてるイメージがありました」
「何故か片付けだけはなかなか手が進まないんだ」
そうしてリンドさんの代わりに整理整頓や資料集めなどをして過ごせば、この世界に来てひと月が経ち給料が貰えるようになっていた。
給料は当初前借りしていた10万円分を引かれた分だけを受け取った。
ここの空気に慣れて文字も覚え1人で外出しても問題なく過ごせるようになっていた俺は休みになるとゼレンを連れて出かけている。
リンドさんに出かける時は馬車を使ってと言われて拒否したら、せめてゼレンは必ず連れて行ってくれと言われてしまったからだけど。
当初ゼレンは少し後ろから着いてくるくらいだから一緒に出かけてる、て感じはしなくて窮屈には感じなかった。
「ゼレン、あの店行こう!昨日話してたパン屋さんなんだけど今日から新スイーツも出してるんだって!」
「はい、楽しみにしておりました!」
ニコニコしているゼレンは俺よりひと回り年上だけど甘いものの話をする時はすごく可愛い顔をする。
リンドさんも綺麗な顔をしていて、すれ違う人もブサイクと言えるような人は一人もいないことに初めはびっくりした。
顔面偏差値が高いと俺の凡人顔が逆に目立つ…
それでも整っている方ではあるけどね。
こうしてゼレンと出かけることが多いから今や友達と言える程の仲になっていた。
「いらっしゃい、ミオ」
「こんにちは。新作スイーツ買いに来ました!」
「さっきできたばかりなんだ、ここで食べていくか?」
「はい、そうします」
「好きに座って待っていてくれ」
パン屋とカフェを併設しているこの店"レディア"はリンドさんの屋敷からほど近い所にある。
毎週末来ている俺はすっかり常連だ。
「お飲み物は何にしますか?」
「新作に合う飲み物をお願いします」
「では私も」
「かしこまりました」
好き嫌いのない俺はメニューを見て決めるより新作スイーツに合う飲み物を選んでもらうことにした。
ゼレンも同じに。
「新作スイーツ、としか聞いてなくて見た目も材料も何が使われてるのか分からないんですよ」
「では運ばれてくるのが楽しみですね」
「はい」
「文字の読み書きもマスターされましたし、次は魔法ですね」
「魔法って難しい…ウィンに教わってますが魔力の使い方が下手って言われます」
「ふふ、そうですか?一度知れば案外簡単ですよ」
「ゼレンは土と火ですよね、どれくらいの規模まで影響を与えることができるんです?」
「私の魔法は最大出力なら火魔法はリンド様の敷地を一度に薙ぎ払えるくらい、土魔法はその半分ほどの範囲までですね。あまり大規模のものは出来ません」
「いや大規模ですよね、それ。」
俺はまだ習い始めたばかりだからかほんのちょこっと、手の内位までにしか魔法範囲は働かない。
魔法の扱いが上手くなる事が暫くの課題になりそうだ…
応援ありがとうございます!
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