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10 「カウンセリング」
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巽が保護されたあとストレス緩和の為にカウンセラーが警察によって充てがわれた。
実の所それだけが理由ではなく、巽の口から犯人に繋がる情報が上がった場合の保険だった。
守秘義務があるカウンセリングは患者から聞き取った情報は警察であれ何処にも漏らす事はしない。しかし特異例の場合は秘密裏に情報開示を求められることもあった。
大企業CROWの子息が誘拐されたと成れば何がなんでも犯人を挙げよと躍起にもなるだろう。
巽の誘拐についての新情報が有った場合は担当刑事の林へ報告するようにと。
当時は本当に記憶が曖昧だった様子で保護されてから数日は詳細を思い出せずカウンセリングでの聞き取りでも「分からない」としか答えなかった。
警察病院でのカウンセリング回数も減らされた頃、いつもの様に他愛ない話から徐々に誘拐に関して訊かれると巽はまた怯えるようになった。
その怯えは人を観察する仕事の人間でないと分からないほど隠すのが上手かった。
林も時折巽に会っていて怯えていることに気づいてカウンセラーに報告をしてきた。
「現段階ではなんとも言えないないので貴方の報告書で必要であれば書き込んでおいてほしい」と。
言い方からして巽の精神へ配慮しての事だと行き着く。きっと独断だ。
カウンセリングの度に怯えを隠しながらも「覚えていない」と言い張る巽の心が壊れそうで林とも相談の結果、これ以上情報は得られないと判断し捜査は打ち止めとなり、警察へ提出するための報告書には怯えが見られる事は書かなかった。
その後はカウンセラーが事件について訊くことはしなくなったがそのままカウンセリングは続けられ20歳を過ぎてからは月一だったのが半年に一回に変更された。
もう15年の付き合いになるそのカウンセラー高木は久しぶりに来院する巽の為にカウンセリングに必要な準備を始める。
リラックス効果のあるお茶の準備程度だが。
先代CROWの両親と祖母が亡くなってから多忙の為に通院ができないと知らされて以来3年ぶりにカウンセリングする事となる。
何かしら抱えるものがある患者であっても通院の頻度は本人が決めることで強制はしない。
きっとこの3年で話したいことが沢山あるだろうと、通常一日に2人見ることにしているのだが今日は巽以外の予約は入れていない。
「どうぞ座って」
来院した巽を迎え入れ暖かいお茶を差し出す
「雨だし少し冷えているでしょう?」
「そうですねお茶ありがとうございます」
「3年も経つし話したいこと沢山あるだろうから多く時間を取っているし気兼ねなく話したいと思ったら都度話してね」
昼に来院した巽と4時間ほど、喋り続けた訳では無いが話をした。
両親が亡くなって余裕がなかったが今はもうこうして来院できる位には余裕もできた
桜を見に行った
猫を迎え入れた
幼馴染みと付き合うフリをしている
順を追って話した巽の話は聞き取りやすく纏める時もすごく楽で助かる。
メディアに取り挙げられて居たので幼馴染と交際していることは知っていた。
(恋人のフリか。幼馴染みとはいえあの時男に触られることに怯えていた少年が男と付き合うとは…話を聞く限り性的接触はしていないからまだ分からないが…)
ただやはり恋人のふりが出来るほど信頼のおける幼馴染みとの接触には拒否反応は出ないらしい。
なんてこともない話でも守秘義務があるのだからと嘘偽りなく話せる範囲で全てを打ち明けて貰えるかがカウンセラーの腕の見せ所である。
3年カウンセリングを受けて居なかった巽に対して高木はどこまで話してくれるか不安だったがフリだと言うことを打ち明けられたのなら信頼関係を一から作り直す必要もなさそうだと結論づけた。
巽から話がないので未だ魘されている事を知らない高木だが、過去に触ろうとすると怯えていた様子から察するに誘拐の間に犯人に何かしらされたのだろう事は想像に難くなく成長した今でも触られることに抵抗はあるのでは無いかと心配になる。
信頼関係どうこう関係なく、事件に関しては話してはくれなさそうだと今回も諦めるのだった。
巽は未だ夢に見るあの時の事を高木に話せないでいた。
当時から支離滅裂でも良いから思ったことをなんでも話せばいいと高木に言われていた。
でも聡い巽は自分のされた事に関して少しでも話せばカウンセラー伝てに警察に報告が為されて守秘義務だなんて守られないことを知っていた。
警察に根掘り葉掘り訊かれる事を恐れて「何も覚えていない」と嘘を貫き通したのだった。
でも今なら子供の頃とは違ってはっきりと「警察へは報告しないでほしい」といえる。
何よりもう時効なのだ。
今更話しても今後捜査される事がない。
犯人を名指ししても大人になってからの新情報には信頼性がなく証拠として成り立たない。
だから警察への報告義務もないいまなら話せるのではないかと思っていた。
事件から15年も経ったというのに忘れられない。
幼馴染にすら言えなかった自身のされた事を吐き出したい気持ちが募っていた。
でも話した事によってもしかしたら曖昧な部分も詳細に思い出してしまうのではないかと恐怖でもあった。
誕生日にされたことは覚えている。
だがその後の保護される迄の三日間だけが思い出せていないのだ。
結局、今回も話ができず病院を後にした。
実の所それだけが理由ではなく、巽の口から犯人に繋がる情報が上がった場合の保険だった。
守秘義務があるカウンセリングは患者から聞き取った情報は警察であれ何処にも漏らす事はしない。しかし特異例の場合は秘密裏に情報開示を求められることもあった。
大企業CROWの子息が誘拐されたと成れば何がなんでも犯人を挙げよと躍起にもなるだろう。
巽の誘拐についての新情報が有った場合は担当刑事の林へ報告するようにと。
当時は本当に記憶が曖昧だった様子で保護されてから数日は詳細を思い出せずカウンセリングでの聞き取りでも「分からない」としか答えなかった。
警察病院でのカウンセリング回数も減らされた頃、いつもの様に他愛ない話から徐々に誘拐に関して訊かれると巽はまた怯えるようになった。
その怯えは人を観察する仕事の人間でないと分からないほど隠すのが上手かった。
林も時折巽に会っていて怯えていることに気づいてカウンセラーに報告をしてきた。
「現段階ではなんとも言えないないので貴方の報告書で必要であれば書き込んでおいてほしい」と。
言い方からして巽の精神へ配慮しての事だと行き着く。きっと独断だ。
カウンセリングの度に怯えを隠しながらも「覚えていない」と言い張る巽の心が壊れそうで林とも相談の結果、これ以上情報は得られないと判断し捜査は打ち止めとなり、警察へ提出するための報告書には怯えが見られる事は書かなかった。
その後はカウンセラーが事件について訊くことはしなくなったがそのままカウンセリングは続けられ20歳を過ぎてからは月一だったのが半年に一回に変更された。
もう15年の付き合いになるそのカウンセラー高木は久しぶりに来院する巽の為にカウンセリングに必要な準備を始める。
リラックス効果のあるお茶の準備程度だが。
先代CROWの両親と祖母が亡くなってから多忙の為に通院ができないと知らされて以来3年ぶりにカウンセリングする事となる。
何かしら抱えるものがある患者であっても通院の頻度は本人が決めることで強制はしない。
きっとこの3年で話したいことが沢山あるだろうと、通常一日に2人見ることにしているのだが今日は巽以外の予約は入れていない。
「どうぞ座って」
来院した巽を迎え入れ暖かいお茶を差し出す
「雨だし少し冷えているでしょう?」
「そうですねお茶ありがとうございます」
「3年も経つし話したいこと沢山あるだろうから多く時間を取っているし気兼ねなく話したいと思ったら都度話してね」
昼に来院した巽と4時間ほど、喋り続けた訳では無いが話をした。
両親が亡くなって余裕がなかったが今はもうこうして来院できる位には余裕もできた
桜を見に行った
猫を迎え入れた
幼馴染みと付き合うフリをしている
順を追って話した巽の話は聞き取りやすく纏める時もすごく楽で助かる。
メディアに取り挙げられて居たので幼馴染と交際していることは知っていた。
(恋人のフリか。幼馴染みとはいえあの時男に触られることに怯えていた少年が男と付き合うとは…話を聞く限り性的接触はしていないからまだ分からないが…)
ただやはり恋人のふりが出来るほど信頼のおける幼馴染みとの接触には拒否反応は出ないらしい。
なんてこともない話でも守秘義務があるのだからと嘘偽りなく話せる範囲で全てを打ち明けて貰えるかがカウンセラーの腕の見せ所である。
3年カウンセリングを受けて居なかった巽に対して高木はどこまで話してくれるか不安だったがフリだと言うことを打ち明けられたのなら信頼関係を一から作り直す必要もなさそうだと結論づけた。
巽から話がないので未だ魘されている事を知らない高木だが、過去に触ろうとすると怯えていた様子から察するに誘拐の間に犯人に何かしらされたのだろう事は想像に難くなく成長した今でも触られることに抵抗はあるのでは無いかと心配になる。
信頼関係どうこう関係なく、事件に関しては話してはくれなさそうだと今回も諦めるのだった。
巽は未だ夢に見るあの時の事を高木に話せないでいた。
当時から支離滅裂でも良いから思ったことをなんでも話せばいいと高木に言われていた。
でも聡い巽は自分のされた事に関して少しでも話せばカウンセラー伝てに警察に報告が為されて守秘義務だなんて守られないことを知っていた。
警察に根掘り葉掘り訊かれる事を恐れて「何も覚えていない」と嘘を貫き通したのだった。
でも今なら子供の頃とは違ってはっきりと「警察へは報告しないでほしい」といえる。
何よりもう時効なのだ。
今更話しても今後捜査される事がない。
犯人を名指ししても大人になってからの新情報には信頼性がなく証拠として成り立たない。
だから警察への報告義務もないいまなら話せるのではないかと思っていた。
事件から15年も経ったというのに忘れられない。
幼馴染にすら言えなかった自身のされた事を吐き出したい気持ちが募っていた。
でも話した事によってもしかしたら曖昧な部分も詳細に思い出してしまうのではないかと恐怖でもあった。
誕生日にされたことは覚えている。
だがその後の保護される迄の三日間だけが思い出せていないのだ。
結局、今回も話ができず病院を後にした。
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