誰にも触れられたくないトコロ 【完結】

うなきのこ

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閑話 「私は『さくら』」

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私はお母さんに捨てられた。…多分。
もしかしたら迷子になったのをそのまま気づかないで兄弟とどっか行っちゃっただけなのかもしれない

帰るお家が分からなくて夜はちょっと寒くて
どこか暖かいところは無いかなって探していた

美味しい匂いに釣られてちょっと狭いところ抜けると気持ちいい芝生があってゴロゴロしてたらニンゲンに会ってその人間は優しく持ち上げてくれた

ちょっと前に出会ったニンゲンには追い回されたから触られるのはちょっと怖かったけどこのニンゲンは大丈夫そうだったから抵抗しないで置いた

私は抱えられたまま別のニンゲン達と合流したら、どうやら美味しい匂いの元はここだったみたい

ちょっと声を出してみればお肉をくれて
でも噛み切れなくて味だけを堪能したの
美味しかった

お肉をくれたニンゲンの足のうえが暖かくて心地よくてちょっと寝ちゃったみたい

「───  ──」
なに言ってるのか分からないけど落ち着く低い声のニンゲンが来てベチャベチャのご飯と温かいミルクをくれた
さっきのお肉も美味しかったけどこれも美味しい!食べやすくてぺろっと食べきっちゃった


おなかいっぱいになっていつの間にかぐっすり寝てたみたいね
起きたらもふもふの布に包まれてたの

どこだろう?って最初はわからなくて怖かったけど直ぐにニンゲンに連れてきてもらった暖かくて新しいお家だって気づいたわ
そういえばニンゲンの気配が減ってるわね
4匹居たはずなのだけど3匹居ない
きっと散歩ね

「───」
新しいお家を探検していたら昨日のニンゲンが1匹でいたから近づいてみたらこっちを見てなにか言ってたけどよく分からない

お母さんが言っていたけど同じクニに生まれた私たちは言葉が通じるけど別のクニからきた子とは会話が出来ないらしいわ
多分ニンゲンも違うクニの子なのね

お母さんは首を噛んで運んでくれてたけどニンゲンは急に脚の付け根を捕まえて運ぶからびっくりしたわ
でもその後優しく毛繕いしてくれるからこのニンゲンは好きよ
昨日このニンゲンに向かって何回も「ハンダ」って言ってたから多分ニンゲンの名前よね
他の3匹の名前は分からないわ
あのニンゲンたちごちゃごちゃ言っててどれがどれかわかんない
まぁ顔で区別できるからいいかしら

ハンダがなにか言ってるけどやっぱり全然意味が分からない
でも「ゴハン」って言うと美味しいご飯が出てくるからきっと「ゴハン」は「ご飯」って意味ね!
大事だわ!
狩りをしなくてもお腹いっぱいになるくらいのご飯が置いてあるのよ
用意してくれるのはありがたいけどちょっと多いわね…
また後でお腹すいたら食べましょう

さて探検再開するわよ!
さっきは確か1番端っこからここまで来たはず
美味しい匂いに釣られてここに来たけど途中に高いところに行けそうな場所があったからそっち行ってみようかしら
でも眠たい…探検はやっぱりまた後でにしてさっきの暖かい場所に戻る事にするわ

全然ホコリっぽくなくて心地のいい場所ね!ここは
もふもふの布もあって日も暖かくて…心地いいわ…




ニンゲンに連れられて色んな獣の匂いのする所に行って、そした知らないニンゲンが私の身体をあちこち触ってくるのよ!?レディになんてことするの!
レディの扱い方を一から勉強して欲しいわ!

そういえばニンゲン達が私の事みて「サクラ」て言ってきたのだけど「ゴハン」じゃないなら何かしら…
気になるから近づくと笑うのよ?何なのかしら「サクラ」って?




この家に来てから1週間くらい経つけど「サクラ」が私の名前だと私気づいたの!だってお母さんが私を呼んで毛繕いしてくれる時と同じ
「サクラ」って言ったあとニンゲンが毛繕いしてくれる
種族が違うって言っても分かることはあるのね
この名前響きが優しくてすごく気に入ったわ!

あとハンダ以外にも顔と名前が一致するようになったのよ
私ってば天才じゃない??

この家に来てからすごく楽しいの
お母さんと兄弟達とはぐれてしまったのは悲しいけどきっとまた会えるのだしそれまでこの家にいてあげる

タツミってニンゲンとはあんまり関わることはしないけど夜あの子時々魘されているの

ソウとシュウが必死に起こすのを私も手伝ってあげるのだけど

今夜も
涙を流して
何か嫌なことがあるのかしら
もしかして昼間どこかに行ってるけど虐められてるの?
泣かないで…私まで悲しくなるわ…だから…何時でも慰めてあげるから…



タツミとソウとシュウが何かいつもと違う雰囲気の毛皮を着て出かけて行ったわ
その間私はハンダの膝の上で1日ゴロゴロしてて心地よかった
何より心地いいのはマッサージ!
ハンダはレディの扱い方をよく分かってるわね!
素晴らしいわ!私の伴侶にしてあげたかった!
残念ながら相手が居るみたいで別の女の匂いがするから諦めたの
奪うのは可哀想だから手を出さないわ


ハンダがご飯の準備をし始めたけど今日は色んな匂いがする
美味しそうな匂いね

タツミ達が帰ってきていつもの毛皮に着替えてきた

!!なんかいっぱいプレゼント貰ったわ!
このサクサクしたご飯美味しい!
お魚の味がするのにパサパサする!おもしろーい!
お魚の形したおもちゃも楽しいわ!
今日はすっごくいい一日ね!
と思ったらご飯もいつもより豪華だわ!
何故かしら?
タツミの笑顔も普段より可愛いわね
素敵だわ!



おなかいっぱいになっちゃった…
動けなーい

タツミ達と同じ部屋で今日も寝たかったわ
動けないからもう諦めてハンダの部屋で寝ようかしら

?なんかソウとシュウの顔が暗いわね…
それになんだかタツミの雰囲気もちょっと…何かしら…
魘されている時に近い様な空気を感じるわ…大丈夫かしら…心配だけど…
シュウが優しい手つきで撫でてきてなんとなく「来なくていい」って言われた気がしたから遠慮して置いた方がいいのよね?わかったわ

さてと!全く動けない訳では無いから先にハンダの部屋のふかふか布で寝ていようかしら

「にゃー」
ふかふか布を温めておいてあげるから早く来なさいよ
「すぐ行くよ」
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