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番外編 美之の黒歴史 2
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「あっくん、ジャックマンみるー!」
ジャックマンとは朗が好きな戦隊ヒーロー特撮ドラマだ。
祖国を救うため、ハイジャッカーとなった五人の男女が最終的には祖国を救えずとらえられ処刑されるのだが、哀れに思った神様が、遠い未来の地球を救うヒーローに生まれ変わらせるという話だ。
正義のヒーロー達がハイジャック犯という設定と歌詞に問題があると物議をかもし、国内どころか世界を巻き込んで議論となったのだ。国連まで口出しをしてきたせいで、日本と世界の戦隊ヒーローオタク達が怒り、面白がったハッカー集団が国連をサイバー攻撃してしまうという事態になってしまったいわくの作品だ。
作品は六週で打ち切りとなり、その後はネット配信のみになった。スポンサーは惣領家である。
朗が椅子によじ登ると美之が、
「みゆちゃんも!みゆちゃんもみるー!」
と、朗を押しのけて椅子に無理やり登ろうとした。
「みゆちゃん、だめ。あぶないから。こっち」
司がソファセットのテーブルを動かそうとしている。テーブルなら三人ならんでパソコン画面をのぞけるはずだ。
司がテーブルを動かそうとしているのを見て理解した朗と美之は司を手伝った。三人でうんしょうんしょとテーブルを机の椅子の位置まで移動させた。
三人一緒にテーブルの上に立ちパソコン画面をのぞいた。
「まっくろー」
朗が画面を叩いた。
「みゆちゃんしってる。ここおすんだよ」
美之がキーボードを押そうとした。
「ちがう。ここ」
司が押した。
司がキーボードを押すと画面が明るくなって、九等分の分割画面と見知らぬ人間が九人現れた。
驚いたのは待機していた各国九人の京司朗の部下達である。
いきなり画面いっぱいに子供の顔が三つ現れたのだ。
それもギュウギュウだ。
例えるならゴールデンレトリバーの仔犬がおっぱい探して重なりあってギュウギュウになってるそんな感じだった。
「OhMyGot!OhMyGot!!Cute!!Cute!!Cute!!!」
画面真ん中のナイジェリア人のボビーが悶絶して叫んでいる。
天使のような三つ子達の登場に騒然となった。
一人は髪を二つに結った、一重に見えるが大きめの目にぷくぷくほっぺの女の子。一人は真っ直ぐなサラサラな髪のくっきり二重まぶたに大きな目の将来有望な美男をすでに思わせる男の子。さらにもう一人は全く同じ顔の巻き毛の男の子。
「え?!誰??天使??」「いやーん!かわいい!」「ボスはどうした!」「まさかリアル江戸川コナンか!?」「サスガ エキゾチックアニメジャパーン!」「ボスが子供になってさらに分裂するという奇っ怪な事件」「おい、新しいネタにする気かよ」
大騒動である。
三つ子は聞こえてきた声に自己紹介を始めた。
「みゆちゃんはねー、みゆちゃんっていうんだよ!」
「ボクはあっくんだよ!」
「・・・つかさ」
司は二人に挟まれて苦しい。
九人は自ずと理解した。
ボスの子供達であると。
あの噂の三つ子か。
そして八人が同じ事を考えた。
━━これは面白い!!━━
ボスの知られざる私生活をのぞけるチャンスが勝手に落ちてきた。
棚からぼた餅とはこの事か。
三つ子達からボスの情報を得るのだ!
八人は使命に燃えた。
九人中残り一人のボビーは京司朗の私生活より、今目の前のかわいい三つ子達に夢中だ。日本語が全然わからないので、ボビーは英語でひたすら三つ子達のかわいさを褒め称えている。時折フランス語がまじるのは、ナイジェリアの学校ではフランス語も教えているからだ。
京司朗の部下達がいっせいに質問した。八人分の声が被さって質問されたので三つ子達は何を言われてるのかがわからなかった。そもそもボリュームが小さい。
ただ、“おとうさん”の部分だけは聞き取れたので美之が答えた。その横で司がキーボードをいじっている。ボリュームが大きくなった。
「おとーさん?おとーさんのなまえはねー『ちょーしちろー』だよ!」
八人は「え?」となった。
司も「え?」と思ったが、面倒なので特に訂正はしなかった。
朗はひたすらジャックマンを観ると連呼して「ジャーック♪ジャックジャック♪ハイジャックー♪♪ちきゅーをまーもるハイジャックーー♪」と、物議をかもしたオープニングを歌い始めた。
ボビーは日本語がわからないのでかまわず三つ子のかわいさを一人一人褒めている。
美之は午前中に貴之と一緒に時代劇『長七郎江戸日記』を観て、父の名前となんとなく同じだと思ったせいで記憶に刻まれてしまった。そして頭のなかで“京司朗”が“長七郎”に変化していた。
画面右下の日本語堪能なイギリス人女性・ポーラが「みゆちゃんは何がすきなの?」と、まずは美之を籠絡しようとした。
「みゆちゃんはね、ドーナチュがすき!あっくんもちゅかさもドーナチュがすきだよ!」
「あっくんはジャックマンのからあげだよ!」
「ドーナチュだよ!!」
「ジャックマンのからあげだよ!!」
「ドーナチュだよ!!!」
まずい、きょうだい喧嘩勃発だ。止めなくてはいけない。画面真ん中ボビーの左隣のやはり日本語が堪能なカナダ人女性・キャサリンが、
「司君は!司君は何が好きかな!?」と、話題を司に振ったが、朗が、
「なんだよ!みゆちゃんなんかウンチがくっさいくせに!!」
と、叫んだ。
八人は再び「え?」となった。
女の子に対してなんてことを言うのかと八人は思ったが、美之は意外にも「いいんだもん!」と胸を張って認めた。美之は画面に向き直り、
「みゆちゃんのウンチくっさいんだよ!おねえさんたちのウンチはくっさい?」
八人は三度「え?」となり、まさかそんな質問が飛んで返ってくるとは思ってなかったキャサリンとポーラが困惑している。
キャサリンの下画面の日本人・滝沢が、
「俺のウンチはくっさいよ」
と、助け船を出した。
「やったあー!」
美之がニコニコと喜んだ。
「みゆちゃんのおともだちだー!」
どうやらウンチがくっさいと美之に友達認定されるらしい。
「あっくん、ジャックマンみるー!」
ジャックマンとは朗が好きな戦隊ヒーロー特撮ドラマだ。
祖国を救うため、ハイジャッカーとなった五人の男女が最終的には祖国を救えずとらえられ処刑されるのだが、哀れに思った神様が、遠い未来の地球を救うヒーローに生まれ変わらせるという話だ。
正義のヒーロー達がハイジャック犯という設定と歌詞に問題があると物議をかもし、国内どころか世界を巻き込んで議論となったのだ。国連まで口出しをしてきたせいで、日本と世界の戦隊ヒーローオタク達が怒り、面白がったハッカー集団が国連をサイバー攻撃してしまうという事態になってしまったいわくの作品だ。
作品は六週で打ち切りとなり、その後はネット配信のみになった。スポンサーは惣領家である。
朗が椅子によじ登ると美之が、
「みゆちゃんも!みゆちゃんもみるー!」
と、朗を押しのけて椅子に無理やり登ろうとした。
「みゆちゃん、だめ。あぶないから。こっち」
司がソファセットのテーブルを動かそうとしている。テーブルなら三人ならんでパソコン画面をのぞけるはずだ。
司がテーブルを動かそうとしているのを見て理解した朗と美之は司を手伝った。三人でうんしょうんしょとテーブルを机の椅子の位置まで移動させた。
三人一緒にテーブルの上に立ちパソコン画面をのぞいた。
「まっくろー」
朗が画面を叩いた。
「みゆちゃんしってる。ここおすんだよ」
美之がキーボードを押そうとした。
「ちがう。ここ」
司が押した。
司がキーボードを押すと画面が明るくなって、九等分の分割画面と見知らぬ人間が九人現れた。
驚いたのは待機していた各国九人の京司朗の部下達である。
いきなり画面いっぱいに子供の顔が三つ現れたのだ。
それもギュウギュウだ。
例えるならゴールデンレトリバーの仔犬がおっぱい探して重なりあってギュウギュウになってるそんな感じだった。
「OhMyGot!OhMyGot!!Cute!!Cute!!Cute!!!」
画面真ん中のナイジェリア人のボビーが悶絶して叫んでいる。
天使のような三つ子達の登場に騒然となった。
一人は髪を二つに結った、一重に見えるが大きめの目にぷくぷくほっぺの女の子。一人は真っ直ぐなサラサラな髪のくっきり二重まぶたに大きな目の将来有望な美男をすでに思わせる男の子。さらにもう一人は全く同じ顔の巻き毛の男の子。
「え?!誰??天使??」「いやーん!かわいい!」「ボスはどうした!」「まさかリアル江戸川コナンか!?」「サスガ エキゾチックアニメジャパーン!」「ボスが子供になってさらに分裂するという奇っ怪な事件」「おい、新しいネタにする気かよ」
大騒動である。
三つ子は聞こえてきた声に自己紹介を始めた。
「みゆちゃんはねー、みゆちゃんっていうんだよ!」
「ボクはあっくんだよ!」
「・・・つかさ」
司は二人に挟まれて苦しい。
九人は自ずと理解した。
ボスの子供達であると。
あの噂の三つ子か。
そして八人が同じ事を考えた。
━━これは面白い!!━━
ボスの知られざる私生活をのぞけるチャンスが勝手に落ちてきた。
棚からぼた餅とはこの事か。
三つ子達からボスの情報を得るのだ!
八人は使命に燃えた。
九人中残り一人のボビーは京司朗の私生活より、今目の前のかわいい三つ子達に夢中だ。日本語が全然わからないので、ボビーは英語でひたすら三つ子達のかわいさを褒め称えている。時折フランス語がまじるのは、ナイジェリアの学校ではフランス語も教えているからだ。
京司朗の部下達がいっせいに質問した。八人分の声が被さって質問されたので三つ子達は何を言われてるのかがわからなかった。そもそもボリュームが小さい。
ただ、“おとうさん”の部分だけは聞き取れたので美之が答えた。その横で司がキーボードをいじっている。ボリュームが大きくなった。
「おとーさん?おとーさんのなまえはねー『ちょーしちろー』だよ!」
八人は「え?」となった。
司も「え?」と思ったが、面倒なので特に訂正はしなかった。
朗はひたすらジャックマンを観ると連呼して「ジャーック♪ジャックジャック♪ハイジャックー♪♪ちきゅーをまーもるハイジャックーー♪」と、物議をかもしたオープニングを歌い始めた。
ボビーは日本語がわからないのでかまわず三つ子のかわいさを一人一人褒めている。
美之は午前中に貴之と一緒に時代劇『長七郎江戸日記』を観て、父の名前となんとなく同じだと思ったせいで記憶に刻まれてしまった。そして頭のなかで“京司朗”が“長七郎”に変化していた。
画面右下の日本語堪能なイギリス人女性・ポーラが「みゆちゃんは何がすきなの?」と、まずは美之を籠絡しようとした。
「みゆちゃんはね、ドーナチュがすき!あっくんもちゅかさもドーナチュがすきだよ!」
「あっくんはジャックマンのからあげだよ!」
「ドーナチュだよ!!」
「ジャックマンのからあげだよ!!」
「ドーナチュだよ!!!」
まずい、きょうだい喧嘩勃発だ。止めなくてはいけない。画面真ん中ボビーの左隣のやはり日本語が堪能なカナダ人女性・キャサリンが、
「司君は!司君は何が好きかな!?」と、話題を司に振ったが、朗が、
「なんだよ!みゆちゃんなんかウンチがくっさいくせに!!」
と、叫んだ。
八人は再び「え?」となった。
女の子に対してなんてことを言うのかと八人は思ったが、美之は意外にも「いいんだもん!」と胸を張って認めた。美之は画面に向き直り、
「みゆちゃんのウンチくっさいんだよ!おねえさんたちのウンチはくっさい?」
八人は三度「え?」となり、まさかそんな質問が飛んで返ってくるとは思ってなかったキャサリンとポーラが困惑している。
キャサリンの下画面の日本人・滝沢が、
「俺のウンチはくっさいよ」
と、助け船を出した。
「やったあー!」
美之がニコニコと喜んだ。
「みゆちゃんのおともだちだー!」
どうやらウンチがくっさいと美之に友達認定されるらしい。
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