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番外編 妻に近づくための幾つかの注意事項
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真夜中、ベッドで寝ている妻に後ろから近づく場合は特に気をつけなくてはいけない。
たとえぐっすり寝ていたとしても、不用意に近づいてはいけない。
眠っているように見えても油断がならないからだ。
かといって、声をかけて起こす愚行はできない。
入籍という事実上の結婚をして三ヶ月がたった。
俺は彼女の信頼を得ているはずだ。
こうして真夜中に帰ってきてベッドに入ると、彼女は寝ぼけ眼で「おかえりなさい・・」と呟いて、俺にすり寄ってくる。そしてすやすやと眠ってくれる。
やっと俺を通りすがりの浮遊霊と間違わなくなったのだから。
最初の頃は大変だった。
あれは結婚して間もない頃だ。
仕事で真夜中に帰宅し、ベッドで寝ている彼女を後ろから抱きしめようとしたら、彼女はいきなり俺の顔面に肘鉄をくらわせた。思いきり。
そして彼女は「痛い!!」と叫んで飛び起きた。
痛いのはこっちだ。
「どうして!?」
そのセリフは俺が言いたい。
彼女は肘が痛くて『何かが違う』と思い飛び起きたらしい。
彼女の言い分によると、通りすがりの浮遊霊が背中に張りついてくることがあり、『そんな時は容赦なく肘鉄をくらわせてやれ』と、母親に教わったと言うのだ。
以来母親の教えを守って実行している。
確かにあの母親なら容赦しないだろうな。ひねり潰して塵にでもしそうだ。
その後、彼女は俺にひたすら謝り、俺は俺でもちろん若干の仕返しはした。『かわいがる』という優しい仕返しを。
日が昇り、疲れて眠っている彼女を残して屋敷の食卓に向かった。
義父となった惣領貴之が俺の顔を見るなり、
「ぶわっははははははっっ!!!」
と大笑いした。
さらに事情を知って、
「浮遊霊って・・!通りすがりの浮遊霊に間違われたって・・!!ひゃはははははははははっ・・・か、勘弁してくれぇ・・、腹痛え・・!!ははははは・・・っ!おいおいおい!『仙道京司朗』ともあろう色男がよお!形無しじゃねえか!!あははははははははっ!ホント俺の娘は最高だぜ!なあ、京司朗よ!はははははははは」
あんなに腹を抱えて息も切れぎれに笑う親父を、俺は初めて見た。
俺は今夜も警戒しつつ、妻となった彼女にゆっくりと手を伸ばした。
まず最初にすることは彼女の腕を押さえることだ。
肘鉄を繰り出さないように、念のためだ。
「・・む・・?」
腕を押さえられた彼女は不服げに言葉をもらした。
「ただいま。俺だよ」
「・・・・う・・?んー・・おかえりなさい・・」
彼女は寝ぼけ眼で俺を認識すると、ぴたりと体を近づけた。彼女のあたたかな体温を俺は感じとる。
空っぽだった俺の両腕のなかが満たされる。
俺は彼女の髪に口づけて、抱きしめた。
「おやすみ」
彼女は無防備に寝息をたてて、すやすやと眠り続ける。
満たされる想いは、予想外の出来事も含めて、幸福の意味を今日も教えてくれる。
真夜中、ベッドで寝ている妻に後ろから近づく場合は特に気をつけなくてはいけない。
たとえぐっすり寝ていたとしても、不用意に近づいてはいけない。
眠っているように見えても油断がならないからだ。
かといって、声をかけて起こす愚行はできない。
入籍という事実上の結婚をして三ヶ月がたった。
俺は彼女の信頼を得ているはずだ。
こうして真夜中に帰ってきてベッドに入ると、彼女は寝ぼけ眼で「おかえりなさい・・」と呟いて、俺にすり寄ってくる。そしてすやすやと眠ってくれる。
やっと俺を通りすがりの浮遊霊と間違わなくなったのだから。
最初の頃は大変だった。
あれは結婚して間もない頃だ。
仕事で真夜中に帰宅し、ベッドで寝ている彼女を後ろから抱きしめようとしたら、彼女はいきなり俺の顔面に肘鉄をくらわせた。思いきり。
そして彼女は「痛い!!」と叫んで飛び起きた。
痛いのはこっちだ。
「どうして!?」
そのセリフは俺が言いたい。
彼女は肘が痛くて『何かが違う』と思い飛び起きたらしい。
彼女の言い分によると、通りすがりの浮遊霊が背中に張りついてくることがあり、『そんな時は容赦なく肘鉄をくらわせてやれ』と、母親に教わったと言うのだ。
以来母親の教えを守って実行している。
確かにあの母親なら容赦しないだろうな。ひねり潰して塵にでもしそうだ。
その後、彼女は俺にひたすら謝り、俺は俺でもちろん若干の仕返しはした。『かわいがる』という優しい仕返しを。
日が昇り、疲れて眠っている彼女を残して屋敷の食卓に向かった。
義父となった惣領貴之が俺の顔を見るなり、
「ぶわっははははははっっ!!!」
と大笑いした。
さらに事情を知って、
「浮遊霊って・・!通りすがりの浮遊霊に間違われたって・・!!ひゃはははははははははっ・・・か、勘弁してくれぇ・・、腹痛え・・!!ははははは・・・っ!おいおいおい!『仙道京司朗』ともあろう色男がよお!形無しじゃねえか!!あははははははははっ!ホント俺の娘は最高だぜ!なあ、京司朗よ!はははははははは」
あんなに腹を抱えて息も切れぎれに笑う親父を、俺は初めて見た。
俺は今夜も警戒しつつ、妻となった彼女にゆっくりと手を伸ばした。
まず最初にすることは彼女の腕を押さえることだ。
肘鉄を繰り出さないように、念のためだ。
「・・む・・?」
腕を押さえられた彼女は不服げに言葉をもらした。
「ただいま。俺だよ」
「・・・・う・・?んー・・おかえりなさい・・」
彼女は寝ぼけ眼で俺を認識すると、ぴたりと体を近づけた。彼女のあたたかな体温を俺は感じとる。
空っぽだった俺の両腕のなかが満たされる。
俺は彼女の髪に口づけて、抱きしめた。
「おやすみ」
彼女は無防備に寝息をたてて、すやすやと眠り続ける。
満たされる想いは、予想外の出来事も含めて、幸福の意味を今日も教えてくれる。
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