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14. 仕返しは、礼儀正しく確実に。(3)
しおりを挟むああ、もう!何でこんなことばかり続くの?!
「本当に申し訳ありません。支店の者が間違ったみたいで」
そうよ。
私が悪いんじゃないわ。
「支店のって・・、青木ちゃんのこと?あの娘がこんな間違いするかしら?まあ、今度聞いてみるわ」
まずい!
このママ、青木と仲がいいの?いつの間に?
「い、いえ!もうひとりの新人の娘です。今日青木さんの代わりに本店勤務で・・・」
「ああ、そういうこと。間違いは誰にでもあるから仕方ないけど、気をつけてちょうだい。そもそも持ってくるあなたが確認不足なのよ?あなたもしっかりしないといけなかったのよ?わかってる?」
「はい。申し訳ありませんでした」
何よ!なんで私が怒られなきゃいけないの?
だいたい処分用の花をなんでいつまでも配達用の花置き場に置いておくのよ!
私は下げたくもない頭を下げて謝っていた。
配達なんか来なきゃよかった。でも店にいたくなかった。
そもそも糸川が来るからいけないのよ。青木が来てればこんなことにならなかったのに!
みじめな気持ちで頭を下げ続けていた時、お店のママが「あら、社長」と言ってあたしは後ろを振り向いた。
社長だ。
よかった。来てくれたんだ。わざわざ私の為に?
腕に抱えてるのは納入品のスプレーバラだ。でも二束抱えてる。
私はお礼を言おうと社長が側に来るのを待った。
けれど、社長は私と目を合わせもせず、「お前は店に戻れ」と言ったまま、ママに声をかけた。
「よお。ママ。久し振り。店の従業員が間違えちまって迷惑かけたな。これは迷惑料だ」
社長は納入用の濃いピンクのスプレーバラの他に、ラベンダーの束をママに渡していた。
「あらぁ、いいわねぇ!素敵なラベンダー!懐かしい富良野を思い出すわぁ。いいのかしら、こんなにたくさんもらっちゃって、なんだか悪いわぁ」
「最近ママのところのコーヒー飲みにきてねぇしな。まあ、もらってくれ。逆さにしときゃあドライフラワーにもなる」
「ありがとうねぇ、うれしいわ。いまは青木ちゃんがたまにコーヒー飲みに来てくれてるのよ」
離れて行く足取りに、青木の名前が聞こえた。
私は不安になった。私が間違いを支店のせいにしたのを教えてるんじゃないかと思った。
「青木が?」
「そうよ。ついでにってお花の手入れもしてくれて。いい娘よねぇ。うちで働いてくれないかしら?」
「おいおい、勘弁してくれ。青木がいなくなったら支店がまわらねぇよ」
「だったらちゃんとかわいがってやんないとねぇ、逃げらんないようにさ。社長はかわいがる相手をいつも間違うから」
「俺だってあいつのことは可愛がりてぇさ。俺の体でじっくりと、女の体を開かせてやりてえが、あいつはガードが堅くてな」
「バカだね!あんたはそんなんだから駄目なんだよ!!」
乗ってきた社用車のガソリンが少なくなっていた。私はガソリンスタンドによって、ついでに洗車も頼んで、時間潰しに喫茶店でコーヒーを飲んでいた。店に戻りたくなかった。
目もろくに合わせてもらえなくて、今月のお手当ては低いかもしれない。まるっきりないなんてことはないだろうけど。
そんなことを考えながら、一時間ほど、喫茶店で過ごした。
店に戻ると、糸川が「お帰りなさい。お疲れ様です」と言ってきた。
何よ!あんたのせいで私は朝から嫌な思いしてるのよ!
なのに、何事もなかったかのように糸川は私に「事務作業終わってます」と言った。
糸川は言ってた通りに事務を終わらせていた。
「そう、じゃあ、確認するから」と言うと、
「社長が確認してくれました」と、笑顔で答えた。
悔しい。腹が立つ!
私は無性に悔しさを感じた。
まるでなんにもなかったかのように山形も糸川も仕事をしている。
少しは大丈夫だった?とか心配くらいしろよ!この気のきかないバカ女ども!!
こんなにみじめな気持ちを抱えているのに、ニコニコと笑顔で答える糸川に、私は無性に悔しさを感じていた。
事務先輩が悔しそうにしていた。
アッハハ!笑っちゃう!
あたしがニコニコ笑顔でいるのが腹立たしいんだろうな。
あたしの一番の仕返しは、あたしが笑顔で幸せでいること。楽しそうなこと。でもこれって本来は仕返しでもなんでもないと思うの。
あたしはあんたの自業自得の失敗を気にかけるなんてしない。話題になんかしてやらない。心配なんかしてやるはずがない。
そうやっていつまでも悶々としてればいいよ。
なんで誰かがいつも気遣ってくれるって思うのかな?
これで逆恨みされちゃうかな?
まさかね!
されたとしても、いつだって返してやればいいだけのことだよね。
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