嘆きの花

由宇ノ木

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絶えることなく咲き乱れる美しい花々。

館の庭を彩る花々は、ルシフェルがジョゼフィーヌのためにと世界中から集め、用意させたものだった。



 「ジョゼフィーヌ様、お部屋にお連れ致します・・。お体を壊されては大変です」


 黒い巻き毛に黒い瞳、青年へと成長した若き執事・セルジュが、花の中に横たわる裸体のジョゼフィーヌを気遣い体を抱き起こした。


 「ええ、そうね・・」


彼女はさっきまで、この花の中でルシフェルに抱かれ、選ばれた新たな召し使い達とも交わりを行っていた。


ルシフェルの命令は絶対だった。



哀しげに微笑むジョゼフィーヌはセルジュに体を預け、部屋へと戻った。



 「おかわいそうに・・。お体がすっかり冷たくなっております。いますぐ温いお飲み物と湯浴みのご用意をいたします」



 「そうね、ありがとう・・・」



少年だったセルジュとの交わりのあとで、ルシフェルは次々と気に入った召し使い達にジョゼフィーヌの体を与えていった。


 彼女を汚すために。


同時に召し使い達をよりいっそうジョゼフィーヌの忠実な下僕とするために。


 繰り広げられる狂乱の宴には昼も夜もなく、ジョゼフィーヌはふと自分がどれだけの者達と交わったのかを考えた。




しかし―――




「セルジュ・・」

「はい、なんでございましょう?」


「・・いいえ・・、なんでもないわ・・・」



どれだけの者達が自分の体に群がり刻まれたのか

彼女の記憶にはなかった。




わかっていることは一つ。




いつからか、瞳から涙がこぼれ落ちることはなくなっていた。




 「セルジュ、窓を開けてちょうだい・・」

 「お寒うございませんか?」


 「いいのよ・・、いいの・・・・・」


ジョゼフィーヌは優しく微笑む。



開かれた窓からは花の香りが広がり、部屋を甘い香りで満たしていく。



甘い香りに満たされた部屋は、ジョゼフィーヌの心も体も癒そうと、静かに眠りへと誘いだした。




ジョゼフィーヌは思う。




目覚めれば庭には新しい花々が咲いているだろう。


空は青く澄んで、山々の緑も輝いてこの瞳に写ってくれるだろう。



たとえこの身がどれだけ汚れても―――



「お休みなさいませ、ジョゼフィーヌ様・・」


セルジュはそっと部屋を出た。




時間は歩みを止めたまま流れ、ジョゼフィーヌを通りすぎる。




人間でもなく魔界にも属すことない命と体は不死となっていた。




そう、あれからどれだけの者達がこの身に刻み込まれていったのか記憶にはもうない



なのにジョゼフィーヌの心は未だ清いままで、

遠い時の彼方で微笑んでいる懐かしい夢を見つづけている。




そしてジョゼフィーヌは出逢う。



運命を再び大きく変えることになる少年と。



 天使長ミカエルに育てられながらも、天界を追われることになった片翼天使族の少年・レックスと出逢うことになる。







END



  

 
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