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ルシフェルは窓辺にもたれ、瞳を閉じた。
あたたかな室内に響く、女の艶やかな鳴き声に聞き入っている。
快楽の旋律は美しく変化し、時に切なく、時に苦しげに奏でられた。
それにしても――
ルシフェルは小さくため息をついた。
心とはなんと厄介なものか・・・
肉体を支配するのは簡単だ
刻み込まれた快楽は消えることなく肉体を蝕み続けるのだから・・・
ルシフェルはすぐそばで行われている凌辱の儀式を再び満足げに確認し、昨夜の宴でのサタンの言葉を思い出していた。
「サタン様もうまいことを言う」
魔界の上級悪魔にすらめったに声をかけない悪神サタンが、昨夜の宴で白のドレスを身に付けたジョゼフィーヌの美しさをこう讃えた。
ほう・・・、これは美しい
なるほど・・聖女か
お前のような者ならば、何度でも汚したくなる
さぞや楽しいことだろう
体の細胞ひとつひとつを浸蝕していくように、サタンは抑揚のない、重い低い声を魔界中に響かせた。
お前がルシフェルやアスタロト、ベルフェゴールを夫としていなければ
すぐにでもその身を孕ませていたものを
惜しいことよ・・・
あのサタンにそのような言葉を吐かせるとは・・・
そう、
それだけお前の美しさは格別なのだ
だが、お前の美しさにはもうひとつ理由がある
それは
ジョゼフィーヌ、
お前の心が清いままだからだ
どれだけの者に辱めを受け犯されてもお前の心は清い
何がお前をそうさせるのか
未だ神への祈りか?
いや、違う
ミカエルだ
ミカエル、君のせいだ
君の存在が彼女の心を支配しているからだ
「ミカエル、君は酷い奴だよ。私から愛するアデレードを奪い、まだ足りないというのだから・・・」
ルシフェルは懐かしげにミカエルの名をつぶやいて微笑んだ。
「セルジュ、今日は一日休みをあげよう。彼女の『心地良さ』をゆっくり堪能したまえ」
「はい、ありがとうございます」
セルジュは一瞬天使のように無邪気に笑った。
「セルジュ・・・もとのあなたに戻って・・・・」
そんな言葉は虚しいだけと知っていても言わずにはいられない。
「楽しみたまえ、二人とも」
ルシフェルは穏やかに微笑んで部屋を出た。
部屋の外にはジョゼフィーヌ付きの若い執事が控えていた。
「ルシフェル様、魔界よりリリス様がお戻りになられました」
「ああ、わかったよ。・・セオドア」
「はい」
「セルジュを手伝ってあげるといい。その方が彼女が楽だろう・・・。そして君もあの白く美しい体を味わうといい。いや、君の躯をたっぷりと味わわせたまえ」
「・・ご命令のままに」
セオドアは扉を開け、明るい日差しの中で繰り広げられている儀式の二人を目にした。
ジョゼフィーヌの中で激しい律動を繰り返すセルジュ。
初めての快楽。
あふれる女の蜜の淫猥な響きがセオドアの耳を刺激し、彼の躯も興奮の極みへと誘われた。
「・・・セオ・・ド・・・ア・・」
「ルシフェル様のご命令がございました」
「・・・お願い・・・・やめ・・て・・・」
「私の躯も味わうように・・・と」
脱ぎ捨てていく服の下から引き締まった肌があらわれる。
太く、硬く、勃ちあがっている男の象徴は脈打ち、ジョゼフィーヌのふっくらとした唇へと運ばれた。
想像していた通りの柔らかな唇。
「さあ、私のかわいい人・・、」
言葉にうながされ、ジョゼフィーヌの唇が少しずつ開くと、セオドアは一瞬背筋が緊張し、すぐに感嘆のため息をもらした。
あたたかな舌先が触れ、包みこまれ―――
ああ、たまらなくいい・・
ずっと望んでいたのだ、この瞬間を
貴女をみつけたあの日から
ジョゼフィーヌ様・・・
私は貴女のためならすべてを投げ出してもかまわない
命さえ惜しくない
私のジョゼフィーヌ様・・・
ジョゼフィーヌの瞳からは涙がこぼれ続ける。
堕落の罠に身を沈めた、罪の重さを思いしらされて。
神の御使いに選ばれし聖女の面影は、もはや涙だけとなった。
からみあう三人の影は光に溶けて漂う。
甘く響く声は、快楽と奪われつづける尊厳への嘆き。
終わらない嘆きの中で、ジョゼフィーヌは魔王ルシフェルにこの身を捧げた最後の日を思った。
業火に包まれ崩れ落ちる教会で、私は天のあの方の心に初めて触れたのだ
『ジョゼフィーヌ、たとえ魔の手に堕ちようと、お前はやはり私の愛する者なのだ』
けれど・・ミカエル様・・・
ミカエル様・・・!
こうして果てしなく堕ちていく私を、貴方はまだ『愛する者』と呼んでくださいますか
ミカエル様・・・
教えてください・・・
ミカエル様・・・!
ルシフェルは窓辺にもたれ、瞳を閉じた。
あたたかな室内に響く、女の艶やかな鳴き声に聞き入っている。
快楽の旋律は美しく変化し、時に切なく、時に苦しげに奏でられた。
それにしても――
ルシフェルは小さくため息をついた。
心とはなんと厄介なものか・・・
肉体を支配するのは簡単だ
刻み込まれた快楽は消えることなく肉体を蝕み続けるのだから・・・
ルシフェルはすぐそばで行われている凌辱の儀式を再び満足げに確認し、昨夜の宴でのサタンの言葉を思い出していた。
「サタン様もうまいことを言う」
魔界の上級悪魔にすらめったに声をかけない悪神サタンが、昨夜の宴で白のドレスを身に付けたジョゼフィーヌの美しさをこう讃えた。
ほう・・・、これは美しい
なるほど・・聖女か
お前のような者ならば、何度でも汚したくなる
さぞや楽しいことだろう
体の細胞ひとつひとつを浸蝕していくように、サタンは抑揚のない、重い低い声を魔界中に響かせた。
お前がルシフェルやアスタロト、ベルフェゴールを夫としていなければ
すぐにでもその身を孕ませていたものを
惜しいことよ・・・
あのサタンにそのような言葉を吐かせるとは・・・
そう、
それだけお前の美しさは格別なのだ
だが、お前の美しさにはもうひとつ理由がある
それは
ジョゼフィーヌ、
お前の心が清いままだからだ
どれだけの者に辱めを受け犯されてもお前の心は清い
何がお前をそうさせるのか
未だ神への祈りか?
いや、違う
ミカエルだ
ミカエル、君のせいだ
君の存在が彼女の心を支配しているからだ
「ミカエル、君は酷い奴だよ。私から愛するアデレードを奪い、まだ足りないというのだから・・・」
ルシフェルは懐かしげにミカエルの名をつぶやいて微笑んだ。
「セルジュ、今日は一日休みをあげよう。彼女の『心地良さ』をゆっくり堪能したまえ」
「はい、ありがとうございます」
セルジュは一瞬天使のように無邪気に笑った。
「セルジュ・・・もとのあなたに戻って・・・・」
そんな言葉は虚しいだけと知っていても言わずにはいられない。
「楽しみたまえ、二人とも」
ルシフェルは穏やかに微笑んで部屋を出た。
部屋の外にはジョゼフィーヌ付きの若い執事が控えていた。
「ルシフェル様、魔界よりリリス様がお戻りになられました」
「ああ、わかったよ。・・セオドア」
「はい」
「セルジュを手伝ってあげるといい。その方が彼女が楽だろう・・・。そして君もあの白く美しい体を味わうといい。いや、君の躯をたっぷりと味わわせたまえ」
「・・ご命令のままに」
セオドアは扉を開け、明るい日差しの中で繰り広げられている儀式の二人を目にした。
ジョゼフィーヌの中で激しい律動を繰り返すセルジュ。
初めての快楽。
あふれる女の蜜の淫猥な響きがセオドアの耳を刺激し、彼の躯も興奮の極みへと誘われた。
「・・・セオ・・ド・・・ア・・」
「ルシフェル様のご命令がございました」
「・・・お願い・・・・やめ・・て・・・」
「私の躯も味わうように・・・と」
脱ぎ捨てていく服の下から引き締まった肌があらわれる。
太く、硬く、勃ちあがっている男の象徴は脈打ち、ジョゼフィーヌのふっくらとした唇へと運ばれた。
想像していた通りの柔らかな唇。
「さあ、私のかわいい人・・、」
言葉にうながされ、ジョゼフィーヌの唇が少しずつ開くと、セオドアは一瞬背筋が緊張し、すぐに感嘆のため息をもらした。
あたたかな舌先が触れ、包みこまれ―――
ああ、たまらなくいい・・
ずっと望んでいたのだ、この瞬間を
貴女をみつけたあの日から
ジョゼフィーヌ様・・・
私は貴女のためならすべてを投げ出してもかまわない
命さえ惜しくない
私のジョゼフィーヌ様・・・
ジョゼフィーヌの瞳からは涙がこぼれ続ける。
堕落の罠に身を沈めた、罪の重さを思いしらされて。
神の御使いに選ばれし聖女の面影は、もはや涙だけとなった。
からみあう三人の影は光に溶けて漂う。
甘く響く声は、快楽と奪われつづける尊厳への嘆き。
終わらない嘆きの中で、ジョゼフィーヌは魔王ルシフェルにこの身を捧げた最後の日を思った。
業火に包まれ崩れ落ちる教会で、私は天のあの方の心に初めて触れたのだ
『ジョゼフィーヌ、たとえ魔の手に堕ちようと、お前はやはり私の愛する者なのだ』
けれど・・ミカエル様・・・
ミカエル様・・・!
こうして果てしなく堕ちていく私を、貴方はまだ『愛する者』と呼んでくださいますか
ミカエル様・・・
教えてください・・・
ミカエル様・・・!
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