瞬く間に住む魔

秋赤音

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愛は番の運命に溺れる

掬い壊される

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懐かしい香りがした。
目を開けると、服が脱ぎきれていない私はアルトの膝に跨っている。
愛しい腕に抱かれ、秘部を満たしている熱い欲望に胸が震えた。

「ルシア」

懐かしい愛しい声。
これは、夢だ。
夢だから、夢の間だけは、許されたい。

「アルト」

「ルシア。動いて、いい?」

「うん、動いて…アルトが想うように、して」

「ルシア。ルシア…好きだよ、愛してる」

誓うように重なった唇。
そのまま舌が絡み合い、ナカはゆっくりと弱点をかすめ擦りながら高められていく。
思わず動いた腰を、アルトは嬉しそうに撫でた。
互いに求めあい、激しさは無いが、穏やかな熱に包まれていて心地が良い。

「ルシア。気持ちいい?」

「気持ち、いい…とても、ずっと、このままでいたいくらい」

「「ルシア」」

ふと、声が重なった。
アルトと、アルトではない聞きなれてしまった声。
そして、思考を狂わせる甘い香り。
夢にまでこないでほしい声に、眠る前の痴態を思い出してしまう。
すると、愛しいアルトが消えた。
あったはずの温度は、初めから無かったようだ。

「アルト、いや…アルト、どこに」

「ルシアの夫は、誰だ?」

視界が揺れ、見慣れてしまった天井とウォル・ガディ様の顔が見える。

「ウォル・ガディ様、です」

「そうだ」

満足そうに笑ったウォル様は、秘部の奥まで一気に貫き隙間を埋めた。
痛いはずなのに、痛みは無い。

「ぃやぁああああっ!!ぁっ!ああんっ!や、ぁ…あっ!」

「番の香りと欲望は、媚薬のように意思を狂わせる。
遺伝子変異と交配のおかげ…で、番にこだわる動物が減った影響、か…?
抑える訓練経験が無いルシアには辛い、かも、しれないな」

急に体が重くなった。
耳に直接響く声と、どこかから聞こえてくる水の音。
目を閉じても変わらない状況。
再び目を開けると、事後の気配を纏ったままのウォル様がいた。
いつの間にか性行為を始めていて、秘部はすでにウォル様の想うがまま。
少し動いただけでも刺激が伝わり、体が疼き熱くなっていく。

「ルシア。おはよう?
眠っていながら腰を振り喘ぐ姿も良かったが」

「え?え…っぁんっ!どうい、ぅうっ、ことですぅ…ぁああっ!!あっ、そこ、ゃあっ、イ、く…イくぅうううう!!!」

ウォル様が欲望を深いところまで擦りつけるように注ぐのを感じながら、意識を手放した。

翌朝。
やはり、抱かれた。
しばらく妻として公に出る仕事の予定は無い、と。
実験のことも含めて子を育むことが仕事だ、と言われた。
事後のたびに回収される体液には、大切な遺伝子がある。
食事をするように一日に三度は抱かれる暮らしに慣れてしまった体。
ウォル様に「次は昼食で」と艶やかな声で囁かれるのも、もはや日常になっている。
次を考えるだけで触れていないのに体は疼いて、お腹の奥が熱く蕩ける。
仕事に向かうため離れるウォル様の甘い香りを辿ってすがりたくなる。
なんとか我慢して、扉が閉まった音を聞いた。
しかし、秘部はすでに前戯を終えたように濡れている。

「ぁあ…こんな、の…ぃや…私、は…私は、あぁあんっ!熱い…助けて…」

アルトとしていた前戯を思い出し、アルトがしたように自分の指で体を慰める。
しかし、熱は高まるばかり。
何度イったのか分からなくなった頃。
部屋に戻ってきたウォル様は、私を見つめて微笑んだ。
甘い香りが肺を満たし、赤い眼光と目が合った瞬間、奥が強く締まり意識が飛んだ。
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