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家族ごっこ
3.共感の先は
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晴れた空。
穏やかな風がそよぐ窓の向こうでは、鳥が鳴いている。
与えられている部屋のおかげで、学びの内容が変わったおかげで、
俺は『甘え上手な兄』ではなくていい。
家族という歯車から外れて、何者でない俺に戻れる。
何者でもない俺に共感し、全て受け入れてくれる瑠璃花さん。
だから、つい、求めすぎてしまう。
「瑠璃花さん…ごめん」
「あ、んっ、また…お、きく」
ベッドに押し倒して繋がったままの瑠璃花さんは、
とろりと瞳に熱を残したまま微笑んだ。
「これで、終わりにするから…」
「星夜さん、いい、から、ぁっ、あっ!…ん、はや、く…っ」
『黙っていても誰かが手助けしてくれる、甘え上手な妹』は、
家では催促をしないらしい。
学び舎でしか見られない友人と安らぐ様子が近くで見られるのは嬉しい。
俺だけに見せる、役と瑠璃花さんが雑じる『らしくない』姿は己の欲を掻き立てる。
次は移動しないといけない授業だった、と頭の片隅におきながら、
自ら腰を振って誘う瑠璃花さんを味わった。
時間がきたので、
身支度を整えそれぞれの場所へ移動をする。
教室にはすでに人が疎らだがいた。
「詩和」
「会輪」
愛嬌のある笑みで手を上げる友人のところへ向かい、
隣に座った。
「家でもこうなのか?」
「こう、とは?」
「待つ姿勢?
なんだろう…相手が声かけしたくなるような雰囲気。
でも、自分から進んでできることに制限があると大変そうだ」
言われて思えば、そのような気もする。
昔は気にしていたような気もするが、
いつからか気にしなくなったこと。
人によって普通が違うのは当たり前だ。
「まあ、それなりに…会輪は、家でどんなお兄さんですか?」
「俺?自分のことはできるだけ自分でする。
弟はいるけど、話したことないから世話もしない兄。
両親が俺から離すくらいべったり甘やかしてるからな」
教室の出入り口を見ている会輪は、苦笑いで答えた。
伝詩の姿が見えると、表情が嬉しそうな笑みに変わる。
「高世」
「憐離」
幸せそうに見つめ合う二人。
そして、自然な流れで会輪の隣に座る伝詩。
「憐離。何を話しているの?」
「家族の中での自分、だ」
「へー。そういえば、詩和は『甘え上手』だったか?
俺は親兄弟に甘える感覚が分からないけど」
「兄を持つ弟の目線からだと、どう思います?」
「うーん…長男主義で厳しく躾けられるのと、ある意味受け身を強制させるの。
どっちがいいんだろうな?
ねえ、憐離?」
伝詩は、忙しなく目を動かしている。
会輪を見る瞳は甘く、それを受け止める会輪も色めいている。
それなりに容姿が整っている二人のその光景は、
まるで兄弟の甘え合いにも見える。
二人の事情を知らない者には癒しを与えているらしい。
「そうだな。高世は、俺に甘えてどう思った?」
「憐離に?
頼れる誰かがいると、頼らなくても安心する?」
「俺もだ」
目の前で繰り広げられる言葉が答えだろう。
本人たちには他愛ないことだとしても、
俺にとっては気づきになる出来事だ。
当たり前をあえて意識して考えれば、
己の感情が見える気がする。
友人には感謝しかない。
授業の始まりを知らせる音で途切れた会話。
教師が入ってくると、早速始まった説明に耳を傾けた。
穏やかな風がそよぐ窓の向こうでは、鳥が鳴いている。
与えられている部屋のおかげで、学びの内容が変わったおかげで、
俺は『甘え上手な兄』ではなくていい。
家族という歯車から外れて、何者でない俺に戻れる。
何者でもない俺に共感し、全て受け入れてくれる瑠璃花さん。
だから、つい、求めすぎてしまう。
「瑠璃花さん…ごめん」
「あ、んっ、また…お、きく」
ベッドに押し倒して繋がったままの瑠璃花さんは、
とろりと瞳に熱を残したまま微笑んだ。
「これで、終わりにするから…」
「星夜さん、いい、から、ぁっ、あっ!…ん、はや、く…っ」
『黙っていても誰かが手助けしてくれる、甘え上手な妹』は、
家では催促をしないらしい。
学び舎でしか見られない友人と安らぐ様子が近くで見られるのは嬉しい。
俺だけに見せる、役と瑠璃花さんが雑じる『らしくない』姿は己の欲を掻き立てる。
次は移動しないといけない授業だった、と頭の片隅におきながら、
自ら腰を振って誘う瑠璃花さんを味わった。
時間がきたので、
身支度を整えそれぞれの場所へ移動をする。
教室にはすでに人が疎らだがいた。
「詩和」
「会輪」
愛嬌のある笑みで手を上げる友人のところへ向かい、
隣に座った。
「家でもこうなのか?」
「こう、とは?」
「待つ姿勢?
なんだろう…相手が声かけしたくなるような雰囲気。
でも、自分から進んでできることに制限があると大変そうだ」
言われて思えば、そのような気もする。
昔は気にしていたような気もするが、
いつからか気にしなくなったこと。
人によって普通が違うのは当たり前だ。
「まあ、それなりに…会輪は、家でどんなお兄さんですか?」
「俺?自分のことはできるだけ自分でする。
弟はいるけど、話したことないから世話もしない兄。
両親が俺から離すくらいべったり甘やかしてるからな」
教室の出入り口を見ている会輪は、苦笑いで答えた。
伝詩の姿が見えると、表情が嬉しそうな笑みに変わる。
「高世」
「憐離」
幸せそうに見つめ合う二人。
そして、自然な流れで会輪の隣に座る伝詩。
「憐離。何を話しているの?」
「家族の中での自分、だ」
「へー。そういえば、詩和は『甘え上手』だったか?
俺は親兄弟に甘える感覚が分からないけど」
「兄を持つ弟の目線からだと、どう思います?」
「うーん…長男主義で厳しく躾けられるのと、ある意味受け身を強制させるの。
どっちがいいんだろうな?
ねえ、憐離?」
伝詩は、忙しなく目を動かしている。
会輪を見る瞳は甘く、それを受け止める会輪も色めいている。
それなりに容姿が整っている二人のその光景は、
まるで兄弟の甘え合いにも見える。
二人の事情を知らない者には癒しを与えているらしい。
「そうだな。高世は、俺に甘えてどう思った?」
「憐離に?
頼れる誰かがいると、頼らなくても安心する?」
「俺もだ」
目の前で繰り広げられる言葉が答えだろう。
本人たちには他愛ないことだとしても、
俺にとっては気づきになる出来事だ。
当たり前をあえて意識して考えれば、
己の感情が見える気がする。
友人には感謝しかない。
授業の始まりを知らせる音で途切れた会話。
教師が入ってくると、早速始まった説明に耳を傾けた。
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