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悠久の約束と人の夢
12.再会
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王の命令で女性を追いかけた従者は、
遠目に人間が消える現場を見た。
丘に残っていた魔力の消失に気づき、
急ぎ来た道を戻っていった。
同刻。
「教会が、ない?」
緑豊かな丘で呆然と呟いた声は、光と共に消えた。
「地紅。
どうしてクレルの従者がここにいる?」
「…クリスのことが気になってはいたが」
「クリスというのか。
番に似ていたから大空に頼んだ。
人を探していたようだし」
人の気配と声で瞼を開けた女性は、
探している者との再会に涙を流した。
「主様!」
「クリス。無事でなにより。
教会からきたんだな?」
「はい。
勝手ですが主様の部屋で手がかりを探していると、
本が…これです。
何かの導きかと思い、それで…申し訳ありません」
地紅が望む女性は膝を地へつけクレルへ本を渡すと、
頭を下げたまま動かなくなる。
クレルは、今にも泣きそうな顔で女性の肩に触れている。
遠くで見ているが、念のため移動した方が良いと思った。
「お話は用意した家でお願いします」
シンと共に地へ足をつけると、面倒なので魔術で移動した。
「こちらで、どうぞ。私たちは、失礼します」
魔術で移動すると、監視に戻る。
シンが間をつなぐ通路を全て絶てたことを確認する。
聖域側も問題ないので、念のため二度と繋がらないように魔術を施す。
「これで、本当に…」
「終わりました。引き続き監視はしますが」
鏡に映る人間世界を眉間にしわをよせ見ているシン。
彼の故郷への道を絶ったことに変わりはなく、
その心中は分からない。
こうなると、私はシンの傍にいることしかできない。
シンに体を摺り寄せると、そっと抱きしめられた。
「大空。私にできることは言ってください」
耳元で聞こえる声は少し震えている。
シンは何に怯えているのだろうか?
「言っています」
「まだ、足りません」
「…警備の強化を、手伝ってくれますか?」
悩んだ結果、今自分がやれることは一つだった。
すると、少しだけ緩んだ抱擁。
目が合うと重なった唇も、緩んだだけの腕も、
しばらくは離れなかった。
遠目に人間が消える現場を見た。
丘に残っていた魔力の消失に気づき、
急ぎ来た道を戻っていった。
同刻。
「教会が、ない?」
緑豊かな丘で呆然と呟いた声は、光と共に消えた。
「地紅。
どうしてクレルの従者がここにいる?」
「…クリスのことが気になってはいたが」
「クリスというのか。
番に似ていたから大空に頼んだ。
人を探していたようだし」
人の気配と声で瞼を開けた女性は、
探している者との再会に涙を流した。
「主様!」
「クリス。無事でなにより。
教会からきたんだな?」
「はい。
勝手ですが主様の部屋で手がかりを探していると、
本が…これです。
何かの導きかと思い、それで…申し訳ありません」
地紅が望む女性は膝を地へつけクレルへ本を渡すと、
頭を下げたまま動かなくなる。
クレルは、今にも泣きそうな顔で女性の肩に触れている。
遠くで見ているが、念のため移動した方が良いと思った。
「お話は用意した家でお願いします」
シンと共に地へ足をつけると、面倒なので魔術で移動した。
「こちらで、どうぞ。私たちは、失礼します」
魔術で移動すると、監視に戻る。
シンが間をつなぐ通路を全て絶てたことを確認する。
聖域側も問題ないので、念のため二度と繋がらないように魔術を施す。
「これで、本当に…」
「終わりました。引き続き監視はしますが」
鏡に映る人間世界を眉間にしわをよせ見ているシン。
彼の故郷への道を絶ったことに変わりはなく、
その心中は分からない。
こうなると、私はシンの傍にいることしかできない。
シンに体を摺り寄せると、そっと抱きしめられた。
「大空。私にできることは言ってください」
耳元で聞こえる声は少し震えている。
シンは何に怯えているのだろうか?
「言っています」
「まだ、足りません」
「…警備の強化を、手伝ってくれますか?」
悩んだ結果、今自分がやれることは一つだった。
すると、少しだけ緩んだ抱擁。
目が合うと重なった唇も、緩んだだけの腕も、
しばらくは離れなかった。
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